2010年度予算編成で、政府が民主党のマニフェスト(政権公約)に掲げられた主要施策について、予算額圧縮の検討に入った。
財源不足が深刻となったためだ。鳩山由紀夫首相は「政権を取る前に、ざっくりと計算した額が本当に必要なのかという発想はあってしかるべきだ」と述べ、公約の先送りではなく、額の見直しになるとの見解を示した。
民主は、施策の財源をどう手当てするのか聞かれる度に「無駄をなくして対応する」と答えてきた。それだけに、自民党から「国民をだましたのと同じ」と批判されるのは当然だ。
とはいえ、戦後初めて選挙によって政権交代してから、まだ間もない。政権発足後に分かった事情もあるだろう。マニフェストを大事にしながらも、現実を直視し、柔軟に対処する方が好結果につながるのではないか。
公約の予算額圧縮を検討することは、先月提出された各省庁の概算要求が史上最大規模の95兆円に膨れ上がった時点で予想はされていた。
新規国債発行額は、本年度の44兆円以下を目標とする。来年度の税収は世界同時不況の影響で40兆円を割り込む見通しで、10兆円以上の財源が不足することになる。
予算の無駄を洗い出す行政刷新会議に期待するも、前政権の組んだ本年度補正予算の削減分は3兆円弱にとどまり、そのほとんどは、これから手掛ける2次補正予算に使われる。
今月11日から始まった「事業仕分け」は概算要求の3兆円減額を目指すが、17日までの前半戦に削れたのは4500億円、独立行政法人の基金や特別会計の準備金など「埋蔵金」の返納要求は9千億円である。
赤字国債の発行に世論の反発が強いとなれば、主要施策の予算減額に踏み込まざるを得ない。
子ども手当など主要施策の要求額は、金額を示さない事項要求を除いて合計6兆9千億円。このうち「高速道路の無料化」が、減額の対象として取りざたされている。要求額は6千億円。鉄道やフェリーの経営悪化を招くなどとして導入に反対する意見も多いのだから、先送りも考えてはどうか。
揮発油税などの暫定税率廃止は、2兆5千億円の税収減をもたらす。地方自治体の財政にも影響を及ぼすとあっては、廃止するにしても段階的な移行を検討すべきだ。
このような事態に至っては、民主が財源の確保よりも、有権者にアピールする施策を優先して公約をつくったといわれても仕方ない。公約違反とのそしりも受けよう。しかし、適切な予算を組めない場合、迷惑するのは国民である。ここは「国民の生活が第一」とのキャッチフレーズを思い出し、予算額の見直しに着手してほしい。
[京都新聞 2009年11月19日掲載] |