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Z.N.G!(3) − ヒトノウエニタツトイウコト
2005.11.25 Friday
みなさん、こんにちは。岡村憲明です。

「Zone of the Enders」3回目。
今回はちょっとディープな話です。

何度か、岡村が一時期小島組を離れていたことを書いたと思いますが、そのあたりの事情をそろそろ書いておこうかと思います。

Z.O.Eはその作品そのもの以上に、「モノを作るということ」について、そして何より「ヒトの上に立つということ」について、岡村の人生の岐路にあった作品でした。



入社以来、岡村はそれなりに優秀な社員でした。
最初に携わったポリスノーツでも途中から"メインプログラマ"になり、次作のドラマシリーズで"ディレクター"。次のZ.O.Eではメタルギアと並ぶ"小島組の第2の柱"候補Z.O.Eのディレクターとなり、制作途中30代前半で"副部長"職を拝命。当時ビーマニ系音楽ゲームのコンシューマー版制作グループの"プロデューサー"を兼務し、岡村の直接の部下は50名を超えるまでになりました。

当時、小島組のフロアは大きく二つの大部屋にわかれており、片方にはMGS制作スタッフ全員が、残りの片方はZ.O.Eおよび音楽ゲームのスタッフ全員がいたのですが、そちらの部屋の長として、入口すぐのところに大きな机をおき、アシスタントの女性の方と4人分のパーティションを占有していました。
いわゆる"出世コース"に乗っていたわけです。



そして。
順風満帆に思えたボクの人生に突如転機が訪れました。
Z.O.Eが終わった後、Z.O.E2の制作メンバーに自分の席がなかったことがわかったのです。

"一緒に働いているいろいろなヒトからの評判が極めて悪い。方々からそういう話を聞くというのは、やはり岡村に問題があると考えざるをえない。一度今のチームから切り離すしかない。"
それが会社の判断でした。



まさに青天の霹靂。
その時まで、ボクは自分が部下に否定されていることに全く気づいていませんでした。曰く、下と上で態度が違う(下に厳しく、上にへつらう)。曰く。不遜である。曰く。上のいいなりで、ムリばかりおしつける。
「岡村の下では働けない」。部下の人たちのボクに対する評価はつまりはそういうものだったのです。

確かにその頃のボクは「ボクにまかせとけば大丈夫!責任はボク一人が負う!」「こんなん小島監督に怒られるに決まってるやろ!」「もういいわかった。結論は出ている。ボクのいう通りにやって!」そんなことを口癖のように言ってた気がします。

精一杯の虚勢。自分が一人悪者になればいい。小島監督に認められることが、チーム全員の幸せに繋がる。多少キツいことを言っても、素早い判断で先手を打って、プロジェクトを予定通りに完遂できれば、結果的にはチーム員はボクに感謝するはずだ‥‥。まさに自分勝手なヒロイズム。いやナルシズムといった方が近いでしょうか。
一人でいい"親分"を演じていたつもりの自分。ボクは「ヒトの上に立つ者」として完全に失格でした。

小島監督は、岡村にメタルギアのオンライン研究を一人でさせてみてはどうか、と提案されていたようです。でも、丁度その頃、EAST(コナミJPN-EAST)に、中途で入ったプロデューサーが"ゲームを作れるヒト"を探しておられるようでした。



新しい環境で、もう一度社会人としてやり直してみる。
新卒でコナミに入って以来ずっと小島監督の下で働き、他の場所をまったく知らなかったボクは、悩みました。そして、やはり現場でゲームを作り続けていたい、と考え、小島組を離れることに決めました。

ボクが小島組を離れた日は、Z.O.Eのチームは全員アップ休暇の真っ最中。チームの誰にも挨拶をしない、チームの誰にも引き留められない、一人きりの寂しい門出でした。
最後に小島監督に挨拶に行った時、当然「キミには失望した」と非難されると思っていた小島監督の口からボクを非難する言葉が出なかったこと。あまつさえ、ボクが抜けた後のZ.O.Eチームをどうすればいいか相談された監督の言葉を、今でも覚えています。ボクに相談することなど、監督にはあるはずないのに。

そしてボクは小島組を離れました。
2度と戻ることはない、と心に決めて。2度と同じ過ちは繰り返さない、と心に誓って。



ごめんなさい。
ちょっと話がディープになりすぎました。
今回でとりあえず、Z.O.Eの回は一端おしまいにして、最後におまけで、例のボツネタ第2話をのせておきます。
「これ、まんまあのロボットの設定やんけ!」と突っ込みでもしながら、笑って読み過ごしてください(笑)。




つづく



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1 / いけだい / 2005年11月25日 21:04

なんか岡村さんの文って感情が良く伝わってきますね。
もう過ちは繰り返さない
という決意が文章から溢れていました。
これからもその気持ちを忘れないで
良いもの作っていってください。
ありがとうございまいた。

2 / はる / 2005年11月25日 22:43

初めまして。失礼な言い方ですが、始めて、岡村さんのブログが面白いと感じました。応援してます。がんばって欲しいです。

3 / 土屋R / 2005年11月26日 00:23

・・他人の目に、自分がど映っているか?
自分だけではなかなか気付けないことですよね・・。
私も最近似たような経験をしてしまった事がありまして、何だか読んでいて他人事には感じられませんでした。

そこで膝を折らずに一からやり直してコジプロに帰ってこれたのはやはり相当苦労してきたからなんでしょうね・・。

来週の更新も楽しみにしています。

4 / コットンティッシュ / 2005年11月26日 00:29

なんかちょっと感動しました。
人の上に立つことはもちろんのこと
生きることって色々大変ですよね。
楽しい事があれば辛い事もある。

これからも、そんな事があると思いますが頑張って下さい

5 / ベアン / 2005年11月26日 01:07

ベクターキャノンだぁぁぁぁ!!!
チャージの時間が4倍長いみたいですね。
さて、本題ですが、上の人は本当大変だと思います。
みんなの意見を聞き、使えるモノと使えないモノを分ける。かつチーム員にも、おもしろいと思わせるものをチョイスする。そして、それらを決断できるか。なんか自分で書いといて良くわかんなくなってきましたけど、
ようは小島組復帰してよかったと思います。次回は復帰について書いていただけるんでしょうか?楽しみにしております。
がんばってくださ〜〜〜〜い☆

6 / のまのま / 2005年11月26日 11:56

みんな同じだと思うなあ。
他人に言われ初めて気付く。
自分ひとりで気付けるモノって限度があると思います、だからこその仲間であり友であると・・・。
(でしゃばったコメントですいません)

次のブログも楽しみにしてます

7 / 派手カイト / 2005年11月26日 16:22

僕が「Zone of the Enders」と
出会ったのは発売してから大分経ってからでしたが、とても面白いゲームだと思ってました。

例えば童話やおとぎ話のように。「この後一体どういう風になっていくのだろう」と考えられる作品と言うのはなかなか無いと思ったから。完結せずに、しかも物語のほんの一片だけをゲームにしたような構成に、クリアした後に、多少の物足りなさと、けれども彼らが辿る道筋を色々考えながら楽しんだ記憶があります。 

…その裏では、こんな事があったのですね。
確かに、他者から見て悪い部分も、自分で自覚した悪い部分もあったかもしれませんが、当時のそのガムシャラがあったからこそ生まれたものもあると思うんです。だから、悪い部分はきっぱり改善して、良い部分を限りなく向上していって欲しいと思ってます。

頑張ってください、応援してます^^

8 / MGS好きの工房 / 2005年11月26日 18:54

新卒で小島組ってかなり羨ましいですな・・・。まあでも、他の職場も知っていい経験になったんでしょうね。でも羨ましい・・・。

9 / s / 2005年11月27日 13:58

 Z . O . E 3 は ま だ か


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