【萬物相】バックドラフト

 釜山消防本部は先月16日、地下のカラオケ店火災を研究するため模擬実験場を作った。カラオケ店の布製ソファにライターで火を付けると、炎が四方八方に広がる。20度だった室内温度は3分後に50度へと上昇、その時点からは温度が急激に上がり、6分で500度、11分で920度にまで達した。炎は天井や廊下にまで広がり、内部全体が炎に包まれるのに5分もかからなかった。

 個室や廊下に充満した煙が建物の外に漏れ始めたのは、3分過ぎてからだった。煙でいっぱいになり、30センチ先もほとんど見えない。火が出ると空気中の酸素濃度が大幅に下がり、二酸化炭素や一酸化炭素が増える。普通、3-4分もすると酸素濃度が6%以下に下がるが、こうした酸素不足の煙を吸い込むと、呼吸困難ですぐに死に至る。釜山消防本部は「魔の4分間」と呼び、火が出てから4分以内に避難すれば助かるという結論を出した。

 火事の現場を調査すると、出入り口が近いのにもかかわらず、避難できないケースがほとんどだ。有毒ガスを吸い込むとパニック状態に陥ってしまうためだ。特に、よく知らない場所で火災に遭った場合、暗闇の中で出入り口を見つけられる確率は10分の1にもならない。14日、店舗が密集する釜山国際市場で、ビル2階にある実弾射撃場から火事が発生、健康な30代の男性たちが脱出を試みようとしたが果たせず、大きな被害に遭ったが、それもこうした理由のためだ。

 釜山の射撃場火災を捜査している警察は当初、「爆発による火事という可能性はない」と話していた。被害に遭った日本人観光客のうち、生存者が「爆発した」と証言すると、18日には「爆発性の火災」と推定した。専門家は、バックドラフト(逆気流現象)が原因という可能性を口にしている。密閉された空間での火事は、その空間を高温・高圧状態にする。この状況で、酸素が外部から流入すると、爆発を伴う炎が一瞬のうちに現場を焼き尽くす。射撃場内部の鉄製取っ手が溶けるほどの高熱が発生したのも、このためだという。この言葉は、消防署員をヒーローとして描いたハリウッド映画『バックドラフト』(1991年)でも知られている。

 警察は当初、「出火場所は射撃場出入り口側のソファ付近」と述べ、後に「発射台の方」と覆した。日本の記者たちは「日本では鑑識結果に基づき、出火場所が変更されることなどほとんどない」と理解に苦しんでいるという。警察と消防当局は一日も早く、正確な事故原因を突き止め、これ以上、右往左往する姿を見せてはならない。

キム・ドンソプ論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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