鳩山政権が、またも県民の期待を裏切った。今度は懸案の高校歴史教科書の検定問題だ。
18日の衆院文部科学委員会で、川端達夫文部科学相は「日本軍の関与がなかったという意見ではない」と述べ、検定意見に問題はないとの見解を示した。
軍関与が削除されたまま検定問題を封印する。鳩山政権の歴史認識を問う重大な問題だ。
沖縄戦体験者らの証言も含め、必要ならば現地調査も実施し、軍関与を削除させた検定意見の不当性を徹底的に検証すべきだ。
そもそも自公政権下で鳩山由紀夫首相(当時民主党幹事長)は「日本軍による強制、誘導、関与なしに起こりえなかった」との見解を示していた。
それが政権の座に就くや検定問題自体が存在しないとの見解に転じる。政権交代に検定意見の撤回を期待した多くの県民は、大いにがっかりしたことであろう。
2007年の高校歴史教科書検定問題では、沖縄戦での「集団自決(強制集団死)」の記述をめぐり日本軍が「強制した」との文言を削除・修正させた。
軍関与を否定し沖縄戦の実相をゆがめる行為として県内外に大きな波紋を広げた。県内では検定意見の撤回を求め07年に「9・29県民大会」も開催された。
集団自決をめぐる教科書検定問題では、1980年前半に強制集団死を「集団自決」の形で記述を求めた検定意見に対し、元東京教育大学教授の家永三郎さんが「集団自決も日本軍による犠牲であり、記述することで住民の自発的な行為と誤解される」として「違憲・違法」と訴えた。
結果として家永さんの違憲・違法の主張は認められなかったが、集団自決について裁判所は日本軍の関与を認めた。以降、日本史教科書では「日本軍による集団自決」の記述が定着してきた。
だが、なぜ国は軍の強制を否定するような新たな研究成果や学説がないにもかかわらず、07年の検定では集団自決への「軍の関与」に関する表現の削除を求めたのか。
教科書検定という形で、政治的思惑から国に都合の悪い歴史の改ざんが繰り返されていないか。
この際、鳩山政権は歴史の真実を徹底検証し、特定の思惑による歴史改ざんを許さない教科書発行制度の確立を目指してほしい。
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