温室効果ガス削減の経済影響を検証する政府の専門家会合「タスクフォース」(座長・植田和弘京大教授)が19日開かれ、家計負担の試算を盛り込んだ「中間取りまとめ」案が報告された。20年までに90年比25%削減するには負担増は避けられないが、海外からの排出枠購入分を増やすほど負担は軽減できるとした。
鳩山政権は、12月7日から始まる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に間に合わせるため、1カ月足らずで中間報告をまとめるようタスクフォースに依頼。19日の会合で決める予定だったが、試算結果は研究機関によって大きな開きがあり「試算の前提が異なるものを一覧表で並べるべきではない」などと異論が出たため、政府に提出する24日まで調整を続けることになった。
温暖化対策が経済に与える影響の試算は、国立環境研究所、日本経済研究センター、慶応大の野村浩二准教授が担当した。国内対策だけで削減する「真水」が25%の場合に加え、国内で20%、15%、10%削減し、残りは海外から排出枠を購入する場合も分析。1世帯あたりの年間可処分所得(07年483万円)は経済成長で20年時点には100万円程度増える前提だ。
いずれの試算も、25%すべてが「真水」のケースが最も負担が重く、負担額は1世帯あたり年間13万〜76.5万円となった。試算結果に大きな開きが出た主な要因は、環境税の税収の扱い方の違いだ。野村准教授は税収を国債償還にあてる想定で、日経センターや国環研は、家計への一括返還や環境投資に充てる想定で分析している。
前政権の試算では、真水25%の場合、可処分所得の減少額は22万〜77万円。日経センターや野村准教授の試算額は微修正にとどまったが、環境税の税収を家計への一括返還に変更するなどした国環研は、前回の44万円から13万円に負担額が大きく減った。
真水10%、排出枠購入15%のケースでは、試算の中で負担額は最も少なくなり、3万〜28.3万円だった。排出枠は二酸化炭素1トンあたり50ドル(約4500円)と仮定しており、1トンあたり1万〜8万円程度とされた国内対策と比べはるかに安いためだ。
排出枠の購入により、20年時点の実質国内総生産(GDP)の落ち込み幅も軽減される。「25%削減」について、前政権は真水のケースしか試算を出さなかった。タスクフォースの今回の試算は、排出枠の購入を見込むことで国民負担が少なくなることを示した。ただ、排出枠の価格は、各国の削減目標が決まり需要が高まれば、想定よりも高騰する可能性がある。(星野眞三雄、竹中和正)