Alexis Madrigal


米国の夜明けに伴う炭素フラックスを示した超高解像度モデル。緑は炭素の流入、赤は流出を示す。
Image credit: ORNL

米Cray社製の『Cray XT5』(名称『Jaguar』)が、世界最速スーパーコンピューターの『TOP500』最新ランキングで首位に立った。同システムは今回、アップグレードによって、1.759ペタフロップスという驚異的な数字をたたき出した(1ペタフロップスは、1秒間に1000兆回の浮動小数点演算[FLOPS]が行なえるコンピューターの能力)。

テネシー州の米エネルギー省オークリッジ国立研究所(ORNL)にあるJaguarは今年、景気刺激策の一環としておよそ2000万ドルの支援を受け、プロセッサーを4コアから6コアにアップグレードした。新たなプロセッサーを得たCray XT5は、最新のTOP500ランキング[半年に1度発表]で、ついにトップに躍り出た。

それまで1位だったエネルギー省ロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ州)の米IBM社製『Roadrunner』の速度を69%以上も上回り、3位のスパコン[同じくCray社製の『Kraken XT5』]には2倍以上の差をつけた。

Jaguarが今回、世界最速の座を獲得したことは、エネルギー省の民生用コンピューターにとって初の栄誉となる。Roadrunnerが主に核爆発のモデリングなどを行なっているのに対し、Jaguarは地球の気候など、多量の演算を要する科学分野の研究に用いられている。

「スパコンを用いたモデリングやシミュレーションは科学の様相を変え、米国の競争力を高めつつある。オークリッジをはじめとするエネルギー省の各国立研究所は、エネルギーや気候に関する主要問題を解決し、米国をクリーンエネルギーの未来へ導く手助けを行なっている」と、エネルギー省長官のSteven Chu氏は述べている。

[Chu長官はノーベル賞を受賞した物理学者。ローレンス・バークレー国立研究所とカリフォルニア大学バークレー校は、世界の代替燃料の研究の中心となっているがその中心者として活躍、オバマ政権のもとでエネルギー省長官となった(日本語版記事)。

今回のランキングでは、上位10位のうち8つが米国の国立研究所等に存在する。4位はドイツ『JUGENE』、5位は中国の『天河』。日本勢はNECの地球シミュレータが最高で31位]

Jaguarを運用するORNLの計算科学センターは、気候モデルの専門家であるJames Hack氏が責任者を務める。

「計算能力は、1980年代初めと比べると100万倍近く向上していると思われる」とHack氏は語る。

1980年代初めの気候モデルでは、地球の表面を、約1万平方キロメートルずつの大きな範囲にしか分割できなかった。それが現在では、わずか25〜50平方キロメートルほどの細かい範囲に分けてシミュレーションを行なうことができる。

解像度の進化も、シミュレーションの精度向上に拍車をかけている。今年7月には、スパコンを用いたモデルが、過去の急激な気候変動を正確に捉えることに初めて成功したモデルとなった。

以下の動画は、Jaguarを使用した気候モデル。

{この翻訳は抄訳です}

[日本語版:ガリレオ-高橋朋子]

WIRED NEWS 原文(English)

フィードを登録する

前の記事

次の記事