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きょうの社説 2009年11月19日
◎マニフェスト圧縮 景気に軸足を移す見直しを
政府がマニフェスト(政権公約)で掲げた主要政策について、予算規模の圧縮や優先度
を見直す検討を始めたのは当然である。来年度予算の事業仕分けであれだけ大胆に切り込みながら、主要政策で来年度に見込む7・1兆円分は聖域扱いにし、まったく手をつけないのは矛盾する。7〜9月期の国内総生産(GDP)は前政権の景気対策もあって2期連続のプラス成長 となったが、それらの効果もピークを過ぎ、10〜12月期は減速するとの見方が大勢である。仙谷由人行政刷新担当相は今年度の税収見通しが約46兆円から38兆円以下になることを明らかにした。10年度も40兆円を下回るとみられ、財政運営も一層厳しさを増している。 経済情勢の変化や税収見通しに応じてマニフェストを修正するのは現実に即した対応と いえ、公約破りとの批判は当たらない。主要政策の見直し作業を、景気により軸足を移した予算編成や追加経済対策への転換点にしてほしい。 マニフェストに盛り込まれた主要政策の見直しは国家戦略室が担い、高速道路無料化や 農家の戸別所得補償に関してヒアリングを始めた。子ども手当やガソリン税などの暫定税率全廃も対象となる。 高速道路無料化はもともと段階的に進めるとしており、社会実験費用の6千億円につい ては削減する余地は十分にある。子ども手当や農家の戸別所得補償にしても予算編成全体のなかで位置づけを見直し、論点を整理してもらいたい。 2次補正予算では、省エネ家電の購入を促すエコポイント制度やエコカー補助を今年度 限りでなく継続すべきとの声が強まってきた。これらはGDP統計でも個人消費拡大に貢献したと評価されており、消費が冷え込むなかでも効果が証明された事業をむやみに打ち切る必要はないだろう。公共事業についても、来年度予算分を前倒しする余地はないのだろうか。 2次補正を来年度予算と一体化して「15カ月予算」とする政府の考え方は、政策の空 白を埋め、景気の足取りを支える点でも妥当である。来年度予算につなげるためにも、2次補正の景気浮揚効果はとりわけ重要になる。
◎バス割引が「復活」 痛み分け合う姿勢も大事
公共交通機関の利用促進を目的として金沢市が21日からの3連休に計画している「ノ
ーマイカー3days」で、路線バスの割引が2年ぶりに「復活」し、北陸鉄道と西日本ジェイアールバスの市内路線の小児運賃が50円均一になる。2年前の「大人半額、小児50円均一」に比べればいささか見劣りするものの、まちなかに繰り出す家族連れらをバスに誘導する呼び水になるだろう。期間中には、休日初のバスレーンも実施される予定であり、相乗効果が期待できる。市の「ノーマイカー」の取り組みは2007年度にスタートし、初年度はバス運賃の割 引が行われた。その際の減収幅が大きかったことなどもあって、昨年度は事業者の協力が得られなかった経緯があるが、今回は、市と事業者が協議し、形を変えて再び割引が行われることになった。 今回の割引による減収リスクは2年前よりは小さいとみられるものの、減収分は「事業 者持ち」となる点は変わらない。バスレーンの経費は市が負担し、バスのよさを利用者に伝えやすい環境を整えて事業者を後押しする。マイカー増加に伴う公共交通機関離れという共通の課題に、市と事業者がスクラムを組んで向かい合い、時には痛みも分かち合って積極的な取り組みを重ねていく姿勢を、これからも大事にしてほしい。 金沢の都市内交通の柱となる公共交通機関は、当面はバス以外に考えられない。14年 度の北陸新幹線開業後に2次交通機関の要を担うのもバスだろう。にもかかわらず、近年は、金沢駅とまちなかを結ぶ「100円バス」など、公共交通機関の利用促進施策をめぐって市と事業者、特に市内最大手の北鉄がぎくしゃくする場面がたびたび見られる。 こんな関係がいつまでも続くのは、当事者だけでなく、利用者にとっても不幸なことで ある。事業者には、「企業市民」の視点に立って、施策に前向きに協力することをあらためて求めたい。もちろん、市も、事業者を「その気」にさせるための工夫と努力をさらに重ねてもらいたい。
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