きょうのコラム「時鐘」 2009年11月19日

 メタボ基準を再検討、という記事に、胸や腹をなで下ろした人もいるだろう。腹囲が男性85センチ、女性90センチ以上という危険信号の値が見直される

大柄の人と小太りでは、腹回りの事情も違うだろう。同じ物差しを当てることに、素人考えでは合点がいかない。数字は便利だが、時に厄介である。服用は大人2錠、子ども1錠という薬がある。風邪にかかったら、育ち盛りの子は何錠飲めばいいのだろう

メタボ基準見直しで、少しは気楽に食事ができる。本紙連載エッセー「三三五五」で、子母澤類さんがコウバコガニの話を書いていた。銀座の店でフランス風味の逸品を食べ、ふるさとの塩ゆでの味を思った、とある。子どものころの味は、有名シェフの美味に堂々肩を並べる。食に限らず、人はそんな思い出を持つ

あの男は、違うのだろうか。整形をして逃亡し、捕まった後も食事を拒む30歳。食を断っても、思い出は断ち切れまい。夢も見るだろう。懐かしさに涙する光景が、よみがえってはこないのか。心も胃袋もぬくもりを拒むとは、悲しくも哀れである

寒さ募る折に、心の冷える話が伝わってくる。