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発信箱:どこの国の新聞?=与良正男(論説室)

 先日、沖縄県で取材する地元紙の記者と話す機会があった。米軍普天間飛行場の移設について彼はこう言った。

 「どうして東京の全国紙は早く現行計画通りに合意しろとばかり書くんですか」

 毎日新聞は決してそうではないけれど、確かにそんな傾向にある。多くの沖縄県民が切なる希望をつなぐ県外・国外移設は、はなから無理と決めつけて、「早急にまとめないと日米関係が深刻な状況になる」と危機感ばかりを募らせる報道が目立つ。

 ところが、県民からすれば要するにこれは「米国の言う通りにしろ」という話に聞こえる。せっかく政権交代したのに、なぜ中央メディアは県外や国外への移設をもっと後押ししてくれないのか。これではどこの国の新聞か分からない。そう彼は言いたかったに違いない。

 先の日米首脳会談。事前調整の成果なのか、普天間問題に深入りはしなかったが、オバマ大統領は現行計画の実現を念頭に「早期決着を」と念押しするのを忘れなかった。一方、鳩山由紀夫首相は今の計画が前提ではないとの持論を再び展開して、また多くのメディアから「首相発言は危うい」「日米の信頼関係を壊す」と批判を招いた。

 私の不満は別のところにある。首相が沖縄の現実に心を痛めているというなら、むしろ首脳会談で、この問題を先送りせずに深入りすべきだったと思う。対米従属から対等な関係を目指すと本当に考えているのなら、首相の思うところをもっと主張すべきだったと思う。

 首相が悩んでいるだけでなく「こうしたい」と案を示し、覚悟を決めて取り組むというなら日本の記者の一人である私は後押しするだろう。

毎日新聞 2009年11月19日 0時10分

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