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Memo02

最高裁をよく知る基礎知識 その2


★★議論の進め方は?★★

日本の最高裁の15人の裁判官は、5人ずつ、三つの「小法廷」に分かれている。ふつうの訴訟は、この小法廷で審理される。週に1~2回、重要な案件をおおむね3~5件程度、審議する。主任裁判官(裁判長)は案件ごとに違う。まず主任が意見を述べ、あとは先任順(最高裁入りした順)に意見を述べる。何回か審議を重ね、結論は、最終的には多数決で決める。5人の合議が原則だが、誰かが病気で欠席したりすれば、3人や4人しかいなくても結論を出せる。
米国の最高裁では、裁判官の間での議論は、回覧される意見の草案へのコメントという形で行われる。合議は議論をする場というよりも、多数意見が何かを決める場だと、レンキスト前長官(故人)は著書に記している。米国でも、最終的にはやはり多数決で決める。


★★影の裁判官?★★

日米の最高裁には、裁判官が案件を審理し、判決を書く上での補佐役がいる。
日本は「調査官」といい、三十数人いる。家裁調査官とはまったく異なり、地裁などで10年以上の経験を持つエリート裁判官から選ばれる。最高裁に上がってくる案件ごとに担当を決める。担当調査官は報告書をまとめ、主任の最高裁裁判官に提出する。
民事、行政、刑事の三つの調査官室に分かれ、それぞれにベテランの上席調査官、さらに全体を統括する大ベテランの首席調査官がいる。まさに官僚組織だ。
米国の「ロークラーク」はそれぞれの最高裁裁判官個人に4人ずつ付き、必要な調査をし、意見書を作る。全米のロースクールをとびきり優秀な成績で修了した若い法律家から選ばれる。9人の裁判官とロークラークたちは、「九つの独立した法律事務所」にもたとえられる。


★★仕事の量は?★★

日本の最高裁には、年間7000件を超える訴訟が「最後の救い」を求めて持ち込まれる。訴訟以外も含めると、新たな案件は年間1万件を上回る。案件は機械的に各小法廷に割り振られ、主任の裁判官も機械的に決まる。判事1人当たり年700件以上となる計算だ。
大部分は、調査官が「高裁の結論でよく、最高裁が取り上げる必要はない」と判断。書類の持ち回りだけで審議を終える、通称「持ち回り事件」として処理される。とはいえ、各判事はこの書類に目を通し、必要があると判断すれば、きちんと集まって審議することになる。
米国最高裁にも年間7000~8000件が持ち込まれるが、何を取り上げるかは基本的に最高裁の裁量に任されており、最近では年80件程度を審理し、判決している。

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