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JOHNNY TOO BAD―内田裕也 [著]モブ・ノリオ

[掲載]2009年11月15日

  • [評者]奥泉光(作家、近畿大学教授)

■熱気と臭気放つ、これぞ小説

 本を手に取った瞬間に、「これはキタかもしれない」と思った。なにしろ本の作りが独特だ。モブ・ノリオの小説と内田裕也の対談集が、無理やりくっつけられて一冊になっている。こうしたケレン味こそ、小説というジャンルの本領である。

 で、頁(ページ)を繰って、直感が正しかったことを確認した。自宅の海賊ラジオ局から放送を続けるDJの「かたり」で構成された一編は、まさしく小説としか呼びようのない熱気と臭気を放つ。DJがかけていくレコードのタイトルが、小説を推進していくのだけれど、スリリングな言葉の動きは、小説に物語はいらない、という真理を証明してあまりある。ましてや「泣ける物語」だとか「癒やし」なんてものは糞喰(くそく)らえ! と元来上品な評者をして下品な言葉を吐かせてしまうくらい、本書はパワーがある。内田裕也の対談も、中上健次、カール・ルイス、岡本太郎と、相手の名前を並べただけでも分かるけれど、面白すぎる。本書はコラボというやつなんだろうが、そんなしゃらくさい言葉は吹き飛んで、久しぶりに小説らしい小説を読んだなと、深く感じ入った。

表紙画像

JOHNNY TOO BAD内田裕也

著者:モブ・ノリオ

出版社:文藝春秋   価格:¥ 3,045

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