『魔法少女チャバネ!』
第三話「ピザは伸びるチーズが命」
<シーン1森の中>
千羽 「はぁ、はぁ、はぁ…あの女医、どこに逃げたのよ?
マミコン、あんた、匂いを追跡できないわけ?」
マミコン「そんなこと言われても、わたし、犬じゃないし…」
千羽 「ハッ! クンクン! これは!」
マミコン「ど、どうしたの、千羽ちゃん!?」
千羽 「この枯れ木のような体臭とポマードの香…しぶいおじさまが近くにいるわ!」
マミコン「千羽ちゃんの鼻、おじさまに関しては警察犬以上ね…」
(千羽とマミコンは、木陰にコバェヴィッチと女医の姿を見つける)
千羽 「いた! あ、あれは昨日赴任してきたおじ様…」
マミコン「話をしているのは、さっきの女医ね。何を話しているのかしら」
千羽 「やけに親しそう…まさか、あの女、知り合いなの?」
マミコン「そういえば、昨日召漢されたとき、「ママとの約束」って言ってたわ…
千羽ちゃんのママと、あの女医、過去に一体どんな関係が…」
千羽 「どうして…なんであんな年増女と仲よくしているわけ?おっぱい?
結局おじさまもおっぱいが大事なの?」
マミコン「あの、千羽ちゃん、今の私のセリフ、伏線よ? ちゃんと聞いている?」
千羽 「ゆるさない…世界中のおじ様は私のものなんだから!」
マミコン「ち、千羽ちゃん、落ち着いて! 眼からどす黒い炎が吹き出ているわ!」
千羽 「うっさい! フフフフ…あの女の正体を突き止めて、一人になったとき、
チャバネに変身して闇討ちしてくれるわ! 魔法少女チャバネの恐ろしさ、とくと知るがいい!」
マミコン「千羽ちゃん! もう主人公のセリフじゃなくなっているわ!」
<シーン2 ガクとミヤマ>
(ガクにおぶわれている宮真が目を覚ます)
ミヤマ 「う…うう…ハッ」
ガク 「気がついたか」
ミヤマ 「ガ、ガク様。私はなんという失態を…下ろしてください。下ろして…」
ガク 「人の背中で暴れるな。応急処置はしたが、怪我人は大人しくおぶわれていろ」
ミヤマ 「はい。…申し訳ございません…」
(ミヤマはガクの背中にそっと頬を寄せる)
ガク 「まったく、人があれほど一人では闘うな、と言ったのに…」
ミヤマ 「返す言葉もございません。あのチャバネという女、恐ろしいほどの魔力の持ち主で、
私では全く歯が立ちませんでした…」
ガク 「当たり前だ。俺が敵わなかった相手を、お前などに倒せるものか。
まったく無能な奴だ。恥を知れ、このメスブタが!」
ミヤマ 「ああ、ゾクゾクする…もっと罵って下さい」
ガク 「ん? いま何か言ったか?」
ミヤマ 「いえ、何も」
(「ブーッ」とガクのケータイに着信音)
ガク 「チッ、こんなときに電話か。…はい。こ、これは、プレジデント!」
ミヤマ 「きゃあ! (ずしーん!)いったーい!」
(ミヤマはガクの背中から落ちて尻餅をつく)
ガク 「もうお聞き及びでしたか? え? …はっ、わかりました。失礼いたします」
ミヤマ 「どうしたのです? プレジデントから何か…」
ガク 「わからん。ただ、プレジデントは『彼女の娘であるチャバネには手を出すな』と…」
ミヤマ 「彼女? 娘? どういうことです?」
ガク 「俺に聞くな! 魔法少女チャバネ、奴は、何者なんだ…?」
<シーン3 女医と千羽>
(夜道を歩いている女医)
(「カッ、カッ、カッ、カッ…」とハイヒールの音…女医が立ち止まる)
媛山 「いつまで、ついてくる気だ? 物陰に隠れていないで、姿を現せ」
(千羽が電柱の陰から姿を現す)
千羽 「フッ…気づかれていたのね。尾行には自信があったんだけどな」
女医 「いや、なかなかのものだったぞ。私でなければ気がつかなかっただろう」
千羽 「まあね、私ってよく、知らないおじさんのあとをついて、ふらふらと
碁会所とか料理教室に行っちゃうから。尾行には慣れているの」
マミコン「千羽ちゃん、それはただのストーカーよ」
女医 「で、わざわざ尾行までして、なんの用だ?」
千羽 「それは…これよ! ドミノッピ! ザーラッピ! ザハット!
死ねーっ! チャバネ・インパクト!(どかーん!)」
(変身して、ステッキで殴りかかる千羽。危機一髪、かわす女医)
女医 「いきなり、何をする!?」
チャバネ「何って決まっているでしょう、闇討ちよ!」
女医 「いきなり闇討ちを仕掛けてくる魔法少女など聞いたことがない!」
チャバネ「うっせボケ! これが魔法少女チャバネよ! 世界中のおじ様はみんな私の物なんだから!
あんたなんかに、おっぱいの小さい女の気持ちの何がわかるって言うの?」
女医 「何を言ってるんだ、この子は?」
マミコン「ごめんなさい。この子、ちょっと残念なヒロインなんです」
チャバネ「私が悪いんじゃない、ぜんぶ世間が悪いのよ!」
女医 「やれやれ。話して通じる相手ではなさそうだな。ならば!」
マミコン「! あの薬は! 千羽ちゃん! 逃げて!」
(女医が薬を地面にまくと、地面がどろどろに溶けていく)
(溶けた地面に足をとられて動けなくなる千羽)
チャバネ「うわっ! 地面がチーズみたいにどろどろに…あ、足が! う、動けない!」
女医 「ふっ、まるでGホイホイにつかまったゴキブリだな。大人しくしたほうがいい。
動けば動くほど、溶けたチーズのような粘液が、お前を絡めとるぞ」
チャバネ「なんなのよ、これーっ!」
<シーン4 バトル>
女医 「ふっ、まるでGホイホイにつかまったゴキブリだな。大人しくしたほうがいい。
動けば動くほど、溶けたチーズのような粘液が、お前を絡めとるぞ」
チャバネ「なんなのよ、これーっ!」
女医 「私の得意なのは魔法薬だ。ふだんは回復に使うのだが、こういう裏技もできる。
さーて、聞き分けのない娘には、お仕置きが必要だな…」
(チャバネに近づいてくる女医)
マミコン「千羽ちゃん、おじさまを召漢して!」
チャバネ「できるなら、やってるわよ! でも…」
(チャバネがもがけばもがくほど、地面にからめとられていく)
女医 「そう。地面がどろどろになっているから、魔方陣も描けないな。フフ…
おや? ステッキも絡めとられたようだな。重力魔法も使えずもはや、打つ手なし。
チェックメイトだな。魔法少女チャバネ」
チャバネ「ふっ…フフフ、フハハハハハハハ!」
マミコン「千羽ちゃん、ここ、笑うところじゃないわよ?」
女医 「恐怖のあまり、錯乱したのか?」
チャバネ「重力魔法も使えず、召漢術も封じられた。だが、魔法少女チャバネには、最後の武器がある!」
マミコン「それは、何?」
チャバネ「それは…マミコン、あんたよ!」
マミコン「え?(ガシッ)」
(チャバネはマミコンを思い切り女医に投げつける)
チャバネ「くらえ! マミコン・ダーツ!」
マミコン「あーれー!」
(「ドカーン!」マミコンがぶつかった衝撃で女医は吹き飛ばされる)
チャバネ「やった! 命中! よくやったわ、マミコン!」
マミコン「ひどい…人を武器に使わないで~」
女医 「ふっ…ふははははは!」
(女医は笑いながら立ち上がる)
チャバネ「た、立った! そんな…全然効いてないの?」
女医 「いや、正直、立っているのがやっとだ。おまえの魔力を試すつもりが、こんな羽目になるとは…フフ。
さすがはかこの娘。彼女とそっくりだ…でたらめな闘い方は、な」
チャバネ「やっぱりあんた、ママの知り合いなのね?」
女医 「だが、今のままでは『彼』には勝てん。勝てない理由があるんだ…」
チャバネ「何言ってんだか全然わかんない。それより…」
女医 「一つ忠告しておく。製薬会社のプレジデント、ビルク・リントンには気をつけろ。
絶対に『彼』の誘いには乗るなよ!」
(女医は白衣をひるがえして逃げ去る)
マミコン「あ、また逃げた」
チャバネ「ちょっとー! 逃げるのはいいけど、このネバネバ、どうにかしなさいよー!」