『魔法少女チャバネ!』
第四話(最終話)
「え? もう作画崩壊? チャバネ最大のピンチ! アフレコに絵が無い! 心の目でよく見て、私のキャラはあれよ! 魔法少女チャバネ!」


<シーン1 千羽とビルク>

マミコン「待って、千羽ちゃん。誰か来るわ」
チャバネ「(くんくん)…この加齢臭は…おじさまね! しかもかなりスペックが高いわ!」

(闇の中からビルクが登場する)

ビルク  「どうしたのですか、お嬢さん?」
チャバネ「…ぐはぁっ!」
マミコン「千羽ちゃん、どうしたの? 顔が真っ赤よ。息も荒いわ!」
チャバネ「ヒュー、ヒュー、ヒュー…やっべ。やっば。だっば。だばい。だばいよ、マミコン!」
マミコン「だから何が?」
チャバネ「このおじさま、ちょー好み。だばいよ、だばすぎるよ! 枯れー! 超枯れー!」
マミコン「あなたは…?」
ビルク  「申し遅れました、わたしは製薬会社のプレジデント・ビルクと申します」
チャバネ「わ、私は、浦汐千羽と申します。色々あって魔法少女やってます、てへっ☆」
ビルク  「浦汐、千羽…いい名前だ」
チャバネ「やだ。わたし、こんな格好で恥ずかしいわ」
ビルク  「お困りのようですね」

(「キュルルル…」ビルクが手をかざすと、粘液が解除される)

チャバネ「あっ。粘液が解除された! ありがとうございます、おじさま。なんとお礼を言ったらいいか…」
ビルク  「いえ、たいしたことでは。ずいぶん疲れているようだ。もう夜も遅い。
     よかったら、私のオフィスにきませんか」
チャバネ「はい! 行きます! おじ様のいるところなら、地獄だろうが月面だろうが、どこへだって行きます!」
マミコン「ちょっと千羽ちゃん! さっきの女医の忠告、忘れたの? 千羽ちゃーん!」

(マミコンの叫びも聞かず、ホイホイとビルクについていく千羽)

<シーン2 シーク団体のビル(ビルクのオフィス)>

(シーク団体の本拠であるビルのオフィスに招かれた千羽)

千羽   「わー。すごく夜景が綺麗…」
ビルク  「お気に召したようで、よかった」
千羽   「ほんとに大きなオフィスですね。おじさまの会社なんですか?」
ビルク  「ええ、まあ。しかし、外見は大きくても、中身はからっぽです。私の心みたいにね」
千羽   「…ぐはっ。たそがれてんよ。窓に写った横顔、しびー! カレポイント、たっけー!」
ビルク  「心の声が、漏れていますよ」
千羽   「その、失礼でなければ、教えてほしいんですが、心がからっぽって、どういう意味ですか?」
ビルク  「…よかったら、おかけになりませんか」
千羽   「は、はい…」

(千羽は大きなソファーに座る。千羽を熱いまなざしで見つめるビルク)

千羽   「やだ。そんなに見つめられたら、恥ずかしい」
ビルク  「本当に、よく似ている…まるで生き写しだ…」
千羽   「似ているって、まさか…」
ビルク  「そう、あなたのお母さん、浦汐かこです」
千羽   「やっぱり…! あなたも私のママを知っているんですね?」
ビルク  「あなたのお母さんは伝説の魔法少女でした。私は彼女のことを誰よりもよく知っていた。公私ともに、ね」
千羽   「公私ともに…! じゃあ、もしかして、あなたは私のパ…」
マミコン「千羽ちゃん! 騙されちゃダメよ!」

(ビルクに飛びかかるマミコン)

千羽   「マミコン、いつからそこに!」
ビルク  「邪魔をするなーっ!」
マミコン「そいつの正体は…きゃあっ!」

(ビルクがマミコンを攻撃すると、マミコンの角が「ポキーン…!」と折れる)

千羽   「マミコン! マミコンの角が!」
マミコン「う…あ…」

(「…ポトン」と床に落下するマミコン)


<シーン3 千羽とマミコン>

ビルク  「生命力の源である角を折った。彼女ももう、長くはない…」
千羽   「…嘘! ちょっと、マミコン! 寝たふりなんかしてないで起きてよ! 起きて!」

(泣きじゃくり、マミコンを揺さぶる千羽)

千羽   「マミコン、起きて? ねえ、マミコン! 今度から、ケーキ2個あるのに、
     『マミコンは小さいから半分ね』とか言って1個半、私が食べたりしないから!
     マミコンが『大きさがちょうどいいんです』ってベッドに使っていた空き箱を、
     ゴミ箱代わりにしないから! 嫌いなニンジンとかピーマンとか、
     無理やりマミコンに押し付けたりしないから!」
ビルク  「…君たちは、ほんとにコンビだったのか?」
マミコン「千羽、ちゃん…」
千羽   「マミコン! 気がついたのね、よかった!」
マミコン「あいつに、ビルクに騙されちゃダメ…あいつはあなたのパパなんかじゃない」
千羽   「でも、ママのことを公私ともに、誰よりもよく知っていたって…」
マミコン「それは、あいつが…あなたのママ、魔法少女ワモンのストーカーだったからよ」
千羽   「はぁ!?」
ビルク  「ストーカーとか言うな! 私の彼女への愛は…純粋で、本物だったんだ!」
マミコン「ストーカーは、みんなそう言うのよ…さあ、千羽ちゃん、闘うのよ、チャバネに変身して、奴を倒して!」
千羽   「できない…できないよ、マミコン!」
マミコン「どうして?」
千羽   「だって、あの人…すっげー好みなんだもん!」
マミコン「…千羽ちゃん、あなたって人は…ママの言うことが聞けないの?」
千羽   「へ? どういうこと? 私のママは、私が小さいころ行方不明になって…」
マミコン「どうして私の名前がマミコンだと思う?『ママ』…『マミー』…『マミコン』よ」
千羽   「………うっそでー!」
マミコン「本当なのよ。かつての戦いで魔法の力を全て失った私は、魔力が戻るまで、自分を
     妖精の姿に変えたわ。でも、ビルクに見つかり、昨日までシーク団体に捉えられていたの。
     私の魔力を吸収して、不老不死の薬を作るためよ」
千羽   「そんな…そんなことって…信じないもーん!」
マミコン「信じて! ビルクはついに、私の魔力の源である角を手に入れた。倒せるのは、今しかないの!
     千羽ちゃん、闘って!」
千羽   「できない…できないよ、ママ!」
マミコン「どうして?」
千羽   「だって、あの人…すっげー好みなんだもん! 渋いおじ様とは戦えないよ!」
マミコン「千羽、あなたって子は…」


<シーン4 ラストバトル>

マミコン「じゃあ、いいわ! 私のかつての仲間、あなたの大好きな、
     おじ様たちを召喚して! あなたの代わりに闘ってもらいなさい!」
千羽   「え!? じゃあ、渋いおじ様たちが私を奪い合って闘うわけ?
     やだ、何、その枯れるシチュエーション、ちょーカレー!」
マミコン「どうでもいいから、早く!」
千羽   「わかった。渋いの召喚するよ、魔法少女チャバネ!」

(「ドン! ドン! ドン!」と魔方陣から、植木谷さんやコバチェ、ニコルちゃんが登場)

ビルク  「おやおや、誰かと思えば、懐かしい顔ぶれだね。いったい何の用かな?」
ニコル  「ビルク、悪いがそこまでだ」
コバチェ「千羽とかこから離れてもらいまスカヤ」
植木谷 「しつこい男は、嫌われるぜ。昔のように、な」
ビルク  「懐かしい顔だが、ずいぶん老けたものだ…」
ニコル  「それはお互い様だろう」
コバチェ「年をとるのも悪くはないでスカヤ」
植木谷  「そう、昔、惚れていた女の娘を守れるなんて、幸せじゃないか」
ビルク  「いや、私は違う! なぜなら、魔法少女ワモンの魔力、この角を手に入れたからだ!」

(「ギュルルルルルル…」角のエネルギーを吸収して若返るビルク)

植木谷  「何! 若返っただと?」
ビルク  「往年の魔法少女ワモンの魔力、くらうがいい!」
おじ様達「うわーっ!」

(「どかーん!」ビルクの魔法で吹き飛ばされるおじ様たち)

チャバネ「いやーっ! 私のおじ様たちが! なんて…なんて…もったいない!」
ビルク  「さあ、おいで。千羽、若返った私と、恋の続きを…」
チャバネ「かーっ…ぺっ!」

(床につばを吐くチャバネ)

ビルク  「な、なんだ、下品だろう、仮にも魔法少女なのに…」
チャバネ「うっせバカ死ね! 好きで魔法少女やってんじゃないわよ。私はカレセンなの。
     私はヤンツンなの。若くなったあんたになんか、興味ないの! マミコンの角を折ったことはともかく、
     渋いおじ様を傷つけた罪…万死に値するわ!」

(「グオオオオオ」…と、空から不気味な音)

ビルク  「な、なんだ、この音は…」

(シュガー・ステッキに魔力が集まると、夜空から隕石が降り注ぐ)
(「ドカーン!」「ズガーン!」…隕石によって崩落していく、シーク団体のビル)

ビルク  「わ、私のビルが! 崩れていく! なんなんだ、これはー!?」
チャバネ「重力を強くすることで…隕石をひきつける。これが、
     魔法少女チャバネ最大の魔法、…チャバネ・メテオ・ストライクだ!」
ビルク  「ぐわああーっ!」

(瓦礫に飲み込まれるビルク)

チャバネ「30年前から、出直してこい! あはははははははは!」
マミコン「千羽ちゃん、笑ってる場合じゃないわ。ビルが崩れて、私たちも危険よ」
チャバネ「でも、魔力を使いすぎたせいで、もう、体が動かないの…えへへ」
植木谷  「任しときな、お嬢ちゃん…いくぜ、みんな!」
おじ様達「おやじ、カタパルト!」

(おやじカタパルトによって、ビルの外に放出される、チャバネとマミコン)

チャバネ「うわーっ!」
マミコン「きゃーっ!」


<シーン5 エピローグ>

(「ガラガラガラ…」ビルが崩れ落ちて、静かになる)
(瓦礫の下から這い出てくる、チャバネとマミコン)

チャバネ「…ゲホッ、ゲホッゲホッ! 助かったの? 私達、助かったの?」
マミコン「ええ、あなたの大好きなおじ様たちが、脱出させてくれたのよ」
チャバネ「でも、おじ様たちは!? おじ様たちがいない? まさか…」
マミコン「大丈夫。あの人たちは、そんなにやわじゃないわ。またいつか、きっと逢える」
チャバネ「そうか。そうね、おじ様たちは不滅よね!」
マミコン「そうね…ゴホッ、ゴホッ!」
チャバネ「ママ! ママ、しっかりして!」
マミコン「年をとることは、人生を積み重ねることは、けして悪いことじゃない…だって、
     こんなにも、強く成長した、娘の姿を、こうして見られるのだから…ゴホッ!」
チャバネ「…ママ? 死んじゃダメ! ママーッ!」
マミコン「え、死なないわよ?」
チャバネ「は? だって今、咳きこんでたし、角が折られて魔力を失ったんでしょ?」
マミコン「咳き込んだのは埃のせいよ。角はしばらく経てばまた、生えてくるわ。
     そうだ。代わりにカプリコをつけておきましょう、えいっ」
チャバネ「なんつーかさあ、やっぱり私のママだね…」
マミコン「さあ、いきましょう、千羽。あなたには、魔法少女として、たくさん学ばなければ
     ならないことがあるわ。『私たちの戦いは…これからよ』!」
チャバネ「いいえ、違うわ、ママ。魔法少女なんかやりたくないって言ったでしょ。
     『私たちの戦いは…これまでよ』!」
マミコン「千羽ちゃん、あなたって子は…」

(朝日が昇り、去っていくチャバネとマミコン)
(「ガラガラ…」と彼女たちの背後で瓦礫の落ちる音)
(瓦礫の下から光るビルクの瞳…)

ビルク  「I shall return…」

To be continued

 

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