昇竜賞に決まった吉見。練習中にガッツポーズを見せる=中日ドラゴンズ屋内練習場で(小嶋明彦撮影)
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今年のドラゴンズの最優秀選手を選ぶ、 「第48回昇竜賞」(中日スポーツ制定)は17日、セ・リーグ最多勝獲得の吉見一起投手(25)に決まった。プロ4年目の今季は昨年の10勝に続く連続2けたの16勝を挙げ、先発ローテーションの軸としてチームを支えた。開幕11連勝の球団新記録を樹立した左腕・川井雄太投手(29)が特別賞、中堅の定位置をつかみ、打率2割9分9厘、10本塁打の好成績を残した藤井淳志外野手(28)が新人賞にそれぞれ選ばれた。3選手の表彰は24日の球団納会で行われる。
すっと顔を上げ、遠くを見詰めた。「周囲の皆さんの助けがあっていただけた賞。いろんな意味で感謝したいと思います」。昇竜賞受賞の報に、吉見はしみじみと話した。
トヨタ自動車に所属していた時に、右ひじを手術したこともあって、ドラフトでは希望枠(逆指名)入団ながら、即戦力にはならなかった。1、2年目は合わせて28イニングの登板で、わずか1勝。だが3年目の昨年に10勝を挙げて一躍、竜のエース候補となり、今季は1年間、先発ローテーションの中心として投げ続けた。16勝での最多勝、両リーグ単独トップの無四球完投3試合、同最多タイの4完封、リーグ2位の防御率2・00という好成績は、同賞受賞に文句のない好成績だったといえる。
「まさか、2年続けて『10』(2ケタ)も勝てるなんて。でき過ぎだと思っています」と控えめな吉見。そこには「自分にあうかたちにはまっていない。まだまだ自分のものになっていない」という自らへの不満がある。昨年がホップならば今年はステップ。まだジャンプの余地がある。だから、この秋季練習では先頭を切って汗を流している。レギュラーシーズンでチーム最多の189イニング1/3に登板したというのに、ブルペンにもほぼ1日置きに入り、練習後のキャッチボールによる確認作業も怠りない。
来季になれば、チームの投手陣における存在感も、ファンの期待度も今季以上に高まる。だがそんなプレッシャーも「今はまだ(感じない)。先を見るのではなく、まずは今季を振り返って何が足りなかったか、じっくり考えなければいけないから」。浮かれることなく地に足をつけた日々を過ごしている。
ファン投票で決まる「クラウン賞」とのダブル受賞。半世紀近い歴史を持つ昇竜賞はまた違った感慨もあるようだ。「ほんと、うれしいです」。一瞬だけ、顔じゅうに笑顔が広がった。だが、すぐ表情を引き締めた吉見。真のエースへの道は、これからが険しい。 (中村浩樹)
<吉見一起(よしみ・かずき)> 1984(昭和59)年9月19日、京都府生まれの25歳。182センチ、83キロ、右投げ右打ち。金光大阪高3年春にエースとしてセンバツ出場。社会人トヨタ自動車を経て大学生・社会人ドラフト希望枠で中日に06年入団。昨季は10勝。今季は16勝で最多勝獲得。今季の年俸3800万円(推定)。
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