2009年11月18日0時5分
保護主義と聞くと輸入制限や関税障壁など貿易をめぐる摩擦を思い起こすが、いまウォール街の友人たちが頭の痛い問題として研究に余念がないのは国際金融の保護主義だ。
サブプライム破綻(はたん)を震源地とする金融危機で急務となった国際金融システム改革の歩みは鈍い。打撃を受けた世界経済の回復に向けた景気刺激策の継続、破綻した金融機関に対する公的救済などに追われているせいもあるが、健全化に取り組む理念や方策について賛否両論が入り乱れているからだ。
金融危機が露呈した国際金融システムの脆弱(ぜいじゃく)性を改善するためにG20財務相会議や国際通貨基金(IMF)などが取り上げてきた改善案は三つに集約できる。無秩序に膨れあがる投機資金と投機的運用の規制、国境を越えて連鎖的に波及する金融市場パニックの防止策、迅速な公的救済体制の確立だ。
7日の英セントアンドルーズのG20でも金融取引課税などが提唱されたが、金融システム改革に立ちはだかるのは、性善説、性悪説の葛藤(かっとう)だ。危機再発を防ぐセーフティーネットを広げることは国際金融システムの健全化を促すと分かってはいても、それが悪質な投機まで救済することになり、得たりと投機筋がさらに次の危機を醸成する懸念は消えない。あくどい投機を防止する大義名分が「薪(たきぎ)を抱きて火を救う」危険な逆効果になるので、国際協調が進まない。
そこで各国は独自の規制に走る。EUでは域外の格付け機関による投資格付けランクの適用を認めず、域外投資ファンドのマネジャーにはEU内駐在を義務づける案を検討中だが、金融保護主義に傾斜した動き、と友人たちは警戒心を抱き始めているのだ。(昴)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。