ダイヤモンド社の雑誌

1000円台で楽しむ おとなの居酒屋

このページを印刷

バックナンバー一覧

ずっと変わらない大切な空間で、いつも変わらぬ酒と肴を楽しむ
武蔵屋(野毛)

 連載50回の節目となる今回は、東京を飛び出して、横浜・野毛の「武蔵屋」にやって来ました。

 大正8(1919)年に酒屋として創業した「武蔵屋」が酒場に転向したのは、終戦直後の昭和21年頃のこと。創業からは90年、酒場としても63年の歴史を持つ老舗です。

 店を守っているのは、創業者の娘さん姉妹。お二人とも80代と、ご高齢なこともあって、現在は体調と相談しながら、気候のいい時季に、週に3日程度、休み休みの営業中です。

 店にはメニューはなく、基本的には日本酒3杯に、いつも変わらぬ5品の肴が出されます。お酒が3杯までしか飲めないことはつとに有名で、「三杯屋」とも呼ばれています。

 日本酒も、昔から変わることなく「桜正宗」、1銘柄のみ。この「桜正宗」の燗酒を、土瓶からツツゥ~ッと注いでくれるのも、この店ならでは。受け皿のないグラスに、ぷっくりと表面張力になったところで、ピタリと注ぎ終える技はさすがです。

 1杯めのお酒とともに出される肴は玉ネギの酢漬けに、おから、そしてタラ豆腐の3品。2杯めには4品めとして納豆が出され、3杯めに5品めのお新香が出されて終了となります。

 この5品では肴が足りない人のために、追加でコハダ酢や、ニシン煮、きぬかつぎなど、何品かの日替りのつまみ(各400円)も用意されています。また、3杯のお酒を飲み終える前であれば、ビール(大瓶か小瓶)も飲むことができます。

 この店の最大の魅力は「変わらない」という点にあります。私がこの店に通い始めてからの10年間も変わっていないし、となりの席の40年来の常連さんも「昔からちっとも変わってないんだよ」と話してくれます。

 この不変な空間にどっぷりと身を浸して、ゆっくりと燗酒をいただいていると、日々の小さな出来事なんて、どうでもよく思えてきます。

 この「変わらない」空間を守るために、実はものすごい努力が必要であることを知ったのは、つい最近のこと。

 たとえば、席に座ると出される輪島塗りの塗箸は、傷ひとつないように、こまめに新品の箸に取り替えられいるし、店内の椅子も、前の椅子と外観や座り心地が変わらないように新替えされています。

 この努力があってはじめて、何年ぶりかにやってきたお客であっても、「変わらないなあ」と喜んでくれるお店になるんですね。

 3杯5品のセットは2200円ながら、2杯までで飲み終えると1700円、1杯までだと1100円ですので、1000円台で楽しめる居酒屋として、ここにご紹介させていただいたような次第です。

お店 肴 「桜正宗」
創業当時から看板も暖簾もない、隠れ家のようなお店 いつ行っても、酒の肴はこの5品! 桜正宗の燗酒は、この土瓶からツツゥ~ッと注がれる

【お店情報】
店名: 酒亭「武蔵屋」
電話: 045-231-0646
住所: 横浜市中区野毛町3-133
営業: 17:00-21:00(20:30 LO)、休み休みしながら、火水金に営業中

おすすめ関連記事

ソーシャルブックマークへ投稿: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をYahoo!ブックマークに投稿 この記事をBuzzurlに投稿 この記事をトピックイットに投稿 この記事をlivedoorクリップに投稿 この記事をnewsingに投稿 この記事をdel.icio.usに投稿

Special Topics

バックナンバー

Pick Up

山崎元のマルチスコープ

「事業仕分け」をカイゼンしよう

行政刷新会議が主宰する事業仕分けには問題点が多々あり、いわゆ‥

ビッグスリー敗者復活戦の真実

米GM再建は結局、中国頼み? 危うさはらむ業績改善の真相

破産手続き後初めての四半期決算で、GMの業績は改善した。だが‥

『週刊ダイヤモンド』特別レポート

日本の“橋”が危うい!

橋の新設需要激減で再編が始まった橋梁業界。老朽化した橋のメン‥

これが気になる!

我が家を簡単に高断熱住宅に変える、「内窓」の省エネ効果

もうすぐ寒い冬がやってくるが、毎年のことながら、家の暖房代がかさむのは悩みの種・・・

新着トピックス

本当に強い会社が実践するレジェンドマーケティング
日本最大級のオーディオブック販売サイト『FeBe』誕生の秘話
ビジネスモデルの破壊者たち
iPhoneで成功した携帯広告のアドモブを アップルではなくグーグルが買収する理由
トップコンサルタントが教える 勝てる営業・マーケティング戦略
なぜ、“できる営業マン”は高い成果を上げられるのか?
inside Enterprise
中国でのカード戦略を加速する国際ブランド・JCBの死角
株式市場透視眼鏡
浮上した新政権の政策リスク 富裕層の負担増を読む市場
吉田恒のデータが語る為替の法則
上昇続く金相場の「はしご」が外された時、 2009年最後の円高・米ドル安が始まる!
3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言
目標管理を導入せずして組織の円滑なコミュニケーションはない
起業人
「タッチパネル」一点突破で急成長 「情報」を武器に業界の間隙を突く タッチパネル研究所社長 三谷雄二
NEWS MAKER
ミクシィ 笠原健治社長インタビュー mixiアプリ絶好調で月間55億ページビュー ユーザー数3000万人に向けた“次の一手”
山崎元のマルチスコープ
「事業仕分け」をカイゼンしよう
不動産投資は長期安定指向で
二極化進む不動産の「勝ち組」立地の見分け方
今こそ、人事総点検!
「社員が元気に働ける会社」が、企業再生のキーワードだ。

最新の連載一覧

すべての連載

特集を見る

Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます

『週刊ダイヤモンド』特別レポート
日本の“橋”が危うい!
元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学
JAL問題は、「お金」と「時間」に縛られた20世紀の落とし物? 環境問題と同じく、「対処療法」では解決しない。
トップコンサルタントが教える 強い企業の作り方
上司に求められるコミュニケーションとは?
山崎元のマネー経済の歩き方
確定拠出年金をどう方向づけるべきか
短答直入
“コモディティ化”の渦中でいかに社会の役に立てるか ICTで社会基盤をつくる NTT(日本電信電話)和田紀夫会長
エコカー大戦争!
日の丸自動車産業は空中分解の危機!経産省・次世代自動車戦略研究会が直視すべき「本当の課題」
IT&Business
クラウド革命で急浮上!シマンテックの「大変身」に日本企業が学べること
ネット時代のルール&マナー講座
「使うのが当たり前」だから怖い、会社でのインターネット利用に潜む危険を再検証。

著者プロフィール

浜田信郎

1959年、愛媛県生まれ。造船会社で働く設計士。サラリーマンの傍ら、名店酒場を飲み歩く。その成果を綴ったブログ「居酒屋礼賛」は、呑んべいに大人気。著書に『酒場百選』(ちくま文庫)がある。

この連載について

うまい肴でぐいっと呑んでも、2000円出せばお釣りがくる。そんな毎日通いたくなる居酒屋を紹介。これを読んだら、すぐ呑みに行こう!

Recommend 話題の記事

News&Analysis
安全保障研究家・森本敏 緊急提言! 「民主党の普天間基地移設見直しは 日本の信頼を揺るがしかねない」
今週のキーワード 真壁昭夫
バブル崩壊を新たなバブルで埋める 米国流「バブル・リレー」復活の危うさ
日本人が知らないリアル中国ビジネス 江口征男
予選で負けると二度と本戦を狙えない! 日系アパレルが過酷な上海で勝ち残る秘訣
SPORTS セカンド・オピニオン
なぜU-22にして真剣勝負しないのか? プロ野球U-26vs大学選抜への疑問
元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学
JAL問題は、「お金」と「時間」に縛られた20世紀の落とし物? 環境問題と同じく、「対処療法」では解決しない。
格差社会の中心で友愛を叫ぶ
「明日は新宿公園か、天国か――」 “救急車も呼んでもらえない建設現場”の悲惨
野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
物価下落の実態は相対価格の変動 真に危惧すべきはデフレよりインフレである!
今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ
JALだけでない危機的状況! 「退職金・企業年金」は守れるのか
News&Analysis
上海ディズニーランドで挽回なるか? 課題山積の中国「テーマパーク事情」
IT&Business
クラウド革命で急浮上!シマンテックの「大変身」に日本企業が学べること

雑誌定期購読のご案内


詳しくはこちら

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。


詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。


詳しくはこちら

「ザイ」は年間12冊を予約購読すると、市販価格 7,800円→7,150円(税・送料込み)。今、6,600円!キャンペーン実施中!
※別冊・臨時増刊号は含みません。


詳しくはこちら

偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。

お知らせ・ご案内

会員専用ページ開始のお知らせ
7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。