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きょうの社説 2009年11月18日
◎新潟が負担金拒否 説明の場を設けるのも一案
北陸新幹線の整備をめぐって国土交通省と全面対決を繰り広げている新潟県が、建設費
の地元負担金の支払いを拒否する意向を表明した。同県は、建築認可に関する「トラブル」が未決着であり、以前から求めてきた負担金増額分の内訳などの説明もいまだに不十分であるにもかかわらず、請求書が送られてきたことに不信を覚え、こうした手段に踏み切ったとしている。建築認可問題では、新潟県が既に国地方係争処理委員会に審査を申し出ており、その結 論を待つしかあるまい。ただ、もう一つの主張に対しては、国交省にも答える努力を求めたい。たとえば、実際に工事を担当している鉄道・運輸機構とともに、同県を含む北陸新幹線沿線4県に負担金の増額理由などについて説明する場をあらためて設定し、同県の疑問解消を試みるのも一案だろう。 新潟県の「反乱」を主導している泉田裕彦知事は、国交省を相手取っての「大立ち回り 」で、いささか意固地になっているようにも見える。国交省が説明の機会をつくり、泉田知事にも言いたいことをすべて吐き出させれば、振り上げたこぶしを下ろすきっかけになるかもしれない。それでも態度が変わらなければ、泉田知事の「本音」が透けて見えてくるのではないか。 もちろん、新潟県には負担金の支払い拒否を早急に撤回し、できれば係争処理委への審 査申し出も取り下げて、工事を進めながら国交省と冷静に話し合うことを重ねて求めておきたい。こんな状態が長引けば、工事日程にも影響が出るのは必至であり、2014年度の金沢開業がますます不確実になる。 新潟県は、今回の負担金請求について「信頼関係を破壊する極めて遺憾な事態」と国交 省を厳しく批判しているが、その言い回しにならえば、今年に入ってからの同県の一連の言動が、これまでは小異を捨てて北陸新幹線の早期開業という目標を共有してきた沿線4県の信頼関係を、破壊しつつあることにも気付いてほしい。他県だけでなく、足元にも「工事が遅れては困る」と困惑している市町村はあるだろう。
◎地域主権戦略会議 国・地方機関と「双発」で
政府は鳩山由紀夫首相を議長とする「地域主権戦略会議」の設置を正式決定した。地方
分権改革を推進する新たなエンジン役となる組織である。最大のテーマは、行政刷新会議の事業仕分け作業でも指摘された地方交付税制度の抜本的な見直しである。地方交付税は地方自治体の独自財源であり、行政刷新会議の作業グループより地方の意 見こそ尊重されるべきである。地域主権戦略会議と新たに設置される国と地方の協議機関との連携が大きな鍵を握っており、二つの組織を分権改革の双発の推進機関としてフルに機能させてもらいたい。 鳩山政権は「地域主権」推進の目玉として、使途が決められた自治体向けの「ひも付き 補助金」を廃止し、2011年度から自治体が自由に使える「一括交付金」に改める方針を打ち出している。 一方、政府の地方分権改革推進委員会は先に提出した第4次勧告で、地方交付税充実の ため、所得税など国税5税から交付税に算入する割合「法定率」(25〜34%)の引き上げを求めている。 国・地方財政の三位一体改革で2兆円以上減らされた地方交付税の「復元」は地方の最 重点要望の一つである。これに対して、民主党は一括交付金と現行の地方交付税の改革について、「統合も含めた検討を行い、財政調整と財源保障の機能を一層強化した新たな制度を創設する」と説明するにとどまっている。今後、地域主権戦略会議と地方が歩調を合わせて、交付税の新たな制度設計を速やかに行う必要がある。 ただ、地方の立場から交付税の増額を求める総務省と、地方財政計画は過大などとして 減額を主張する財務省との隔たりは大きい。税収の落ち込みが見込まれるだけに、まず来年度予算の交付額をまとめる作業が容易ではない。「地域主権」実現に向けた鳩山内閣の政治意思が試されよう。 今年度より1兆円の上積みを求める総務省の交付税概算要求は、行政刷新会議の見直し 判定で実現が困難視されているが、少なくとも削減という事態は回避してもらいたい。
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