オバマ大統領演説全文(日本語訳)〈3〉◆経済 まず最初に、我々は経済の回復を確かなものにし、バランスがとれて持続可能な成長を追求しなければならない。 アジア太平洋諸国やその他各国が講じた、迅速で前例のない、調和のとれた行動によって、経済の破滅が回避され、過去数世代で最悪の経済危機からの脱却が可能となった。そして我々は、国際的な経済構造改革への歴史的一歩を踏み出しており、世界20か国・地域(G20)は、経済協力の最も重要な議論の場となっている。 G20への移行と、国際的な金融機関でのアジア各国の発言力の高まりこそ、米国が21世紀に目指す、より幅広く包括的な参加の枠組みを実地に示すものだ。日本は、主要8か国(G8)の主要メンバーとして、国際的な金融の枠組みを形成していく中で、これまでと同様これからも重要な役割を担うことになるだろう(拍手)。 今、我々は、経済回復の入り口に差しかかっており、その回復を持続可能なものにしなければならない。今回の世界的景気後退を招いた、急激な上昇と下降を繰り返す経済サイクルにただ戻るというわけにはいかないのだ。こうした不均衡な成長をもたらした政策を繰り返すことはできない。今回の景気後退の重要な教訓のひとつは、もっぱら米国の消費者とアジアの輸出に成長を依存することの限界だ。米国人が自分たちが大きすぎる負債と失業を抱えていると気付いた時、アジアからの産品への需要は急速に下がった。需要が激しく下降すれば、この地域からの輸出も一気に下がる。この地域の経済はあまりに輸出依存のため、成長が止まってしまった。そして世界的な景気後退は深まるばかりだった。 我々は今、異なる道を取ることが出来るという、歴史的にも数少ない転換点にさしかかっているのだ。それは、我々が米ピッツバーグでのG20首脳会議で誓った、均衡のとれた経済成長のための新戦略を追求することから始めなければならない。 シンガポール(APEC会議)でもっと詳しく話すが、米国では、この新戦略の意味は、貯蓄を増やし、支出を減らし、金融システムを改革し、長期的財政赤字や負債を削減することになる。そしてそれは、我々が建造、製造した物を世界中で売る、輸出がより重視されることも意味する。これは米国にとっては雇用戦略ともなる。輸出は、給与のいい数多くの雇用を米国民にもたらす。輸出を少し増やすだけでも、数百万の雇用をもたらす効果がある。こうした雇用で、風力タービンや太陽光パネルから、日常生活で使う技術製品までが製造されている。 アジアにとっては、より良い均衡を達成することで、特筆すべき生産性向上により可能となっていた質の高い生活水準を労働者や消費者が満喫する機会が生まれる。住宅や社会基盤、サービス分野への投資も増加出来るようになる。均衡のとれた世界経済によって、繁栄はより遠くまで届き、より深みを増していく。 過去数十年、米国は、世界で最も開かれた市場の一つを提供してきた。前世紀を通じて、開かれた市場は、この地域の多くの国々や他の国々の成功に寄与してきた。新しい時代に入り、世界中の他の市場を開放することが、米国だけでなく世界の繁栄にとっても重要となる。 新戦略の重要な一部が、世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)で、野心的で均衡の取れた合意を達成することだ。これは単なる合意ではなく、世界中の市場を開放して輸出を増やすものだ。その目標をタイミング良く達成するため、我々はアジアの関係国と協力していく準備があり、地域の貿易相手国を交渉のテーブルに招く所存だ。 我々はまた、アジア地域での継続した経済統合が、すべての国の労働者、消費者、事業者の利益となることを確信している。我々は韓国の友人と共に、同国との貿易協定に必要な作業を続ける。米国はまた、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する国々と共に、幅広い参加国の顔ぶれと21世紀の貿易協定にふさわしい高い水準を持つ地域協定を目指した取り組みを続ける。 連携して取り組むことこそ、我々が経済回復を維持し、共通の繁栄を進める方法だ。だが、均衡のとれた成長を追求するだけでは十分ではない。我々には、我々の惑星と、そこで暮らす未来の世代にとっても持続可能な成長が必要だ。 ◆気候変動対策 米国は(私の就任以来)、気候変動に関して、これまでにない多くの対策を講じてきた(拍手)。最新の科学を取り入れ、新エネルギーに投資し、効率を上げ、新しい連携を作りだし、気候変動を巡る国際交渉にも関与してきた。米国は、この分野でもっとなすべきことがあるのを理解している。だが、責任を果たしており、今後もそうして行く。 責任には、コペンハーゲン(12月の気候変動枠組み条約第15回締約国会議=COP15)での成功に向けた努力も含まれる。それが容易であるといった幻想は抱いていないが、進むべき道は明らかだ。すべての国々はその責任を受け入れなければならない。我が国も含め、主要排出国は、明確な削減目標を持たなければならない。発展途上国も、資金や技術面での支援を受けながら、排出削減に効果的な対策を講じることが必要になる。そして国内対策では、透明性や説明責任が必要とされる。 我々一人一人が、我々の惑星の環境を破壊せずに経済を成長させるために出来ることをしなければならず、それを一緒に行わなければならない。良い知らせは、適正なルールを設け、動機付けを行うことができれば、最高の科学者や、技術者、起業家の創造力を発揮させられるということだ。それは、新たな雇用や事業、全く新しい産業へとつながっていく。そして日本はこの分野では先端にいる。この重要な地球規模の目標達成に向け、あなたたちの重要なパートナーとなることを楽しみにしている(拍手)。 演説全文(日本語訳)〈4〉はこちら。 (2009年11月14日23時02分 読売新聞)
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