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オバマ大統領演説全文(日本語訳)〈2〉

 私自身の人生も、その物語の一部だ。私はハワイで生まれ、少年時代をインドネシアで過ごした米国大統領だ。妹のマヤはジャカルタ生まれで、後に中国系カナダ人と結婚した。私の母は、東南アジアの村で10年近く働き、女性たちがミシンを買ったり、教育を受けて世界経済への足掛かりを得られる手助けをしていた。だから、環太平洋地域が私の世界観を形成したのだ。

 その時以来、これほど速く劇的に変化した地域は恐らくないだろう。統制経済は開放された市場に取って代わられた。独裁は民主主義に変わった。生活水準は向上し、貧困は急減した。こうした変化を通じて、米国とアジア太平洋地域の運命は、かつてないほど密接につながれている。

 すべての人、すべての米国人に知ってもらいたいのは、この地域で起こることが我々の国内での生活に直結し、この地域の将来が我々の利害にもかかわるということだ。我々はこの地域で盛んに商売し多くの商品を買っている。この地域で我々は、自国商品の輸出を増やし、それによって自国の雇用も創出することが出来る。この地域での核軍拡競争の危険が世界の安全を脅かしている。そして、過激派が偉大な宗教を汚し、アジアと米大陸双方への攻撃を計画している。アジア太平洋の新興国と途上国抜きでは、エネルギー安全保障や気候変動の課題も解決できない。

 これら共通の課題に対処するため、米国は従来の同盟関係を強化し、地域各国と新たな協力関係作りを検討している。実現に向け、日本や韓国、オーストラリア、タイ、フィリピンとの条約を通じた同盟に期待している。同盟とは過去の歴史文献ではなく、我々が共有する安全保障の土台となる永続的な約束だ。

 こうした同盟は安全と安定の基盤であり続け、この地域の国家や国民が、私の少年時代の初訪日当時には思いもつかなかった好機と繁栄を追求するのを可能にしている。米軍が世界で二つの戦争に携わっている間も、米国の日本やアジアの安全保障への責任は揺るがない(拍手)。それは何より、私が誇りとする若い男女米兵を我々がこの地域に展開させていることで明らかだろう。

 今我々は、アジア太平洋地域や、さらに広い世界で、一層大きな役割を果たそうとしている新興国に期待している。民主主義を導入し、経済を発展させることで自国民の偉大な可能性を引き出した、インドネシアやマレーシアのような国々だ。

 ◆中国

 米国は、21世紀には、ある国の安全保障と経済成長が他国の犠牲の上に成り立つ必要はない、という観点から、台頭する諸国に目を向けている。私は、米国が中国の台頭をどう見るか、という問いかけを多くの人が行っていることを承知している。すでに述べた通り、相互に結びついている世界では、一方の力が増せば他方の力が減るというゼロサム・ゲームに陥る必然性はない。国々は、他国の成功を恐れる必要もない。勢力範囲を競い合うのではなく、協力出来る範囲を開拓することが、アジア太平洋の発展につながる(拍手)。

 あらゆる国に対してと同様、米国は中国に対し、自国の利益に焦点をあてながら接していく。まさにこのため、相互の関心事で中国との実務協力を求めることは重要だ。21世紀の課題に単独で対処できる国はなく、米国と中国も、課題に共同で対処することで、より良い結果を得られるからだ。だから、我々は中国が世界の舞台でより大きな、成長する経済と応分の責任を果たせる役割を担おうとしていることを歓迎する。中国の協力が、我々の経済回復の取り組みに重要なことは明らかになっている。中国はアフガニスタンとパキスタンにおける安全と安定を増進させた。そして、地球規模の不拡散体制に関与し、朝鮮半島の非核化の追求を支持している。

 だから、米国は中国の封じ込めは目指さない。また、中国との関係強化が、米国と他の国との同盟の弱体化につながることはない。逆に、強力で豊かな中国の興隆は、国際社会の強さの源となりうる。

 従って、北京でもどこでも、我々は米中間の戦略・経済対話を深め、軍同士の意思疎通を改善していく。もちろん、米中両国はすべての問題で合意することはないだろう。米国は、すべての人々の宗教と文化の尊重を含んだ、我々がいとおしむ基本的価値観を訴えることをためらいはしない。人権や人間の尊厳への支持が、米国に根付いているからだ。だが、我々は憎悪でなく、協力の精神で議論を進めていくことができるだろう。

 我々の2国間関係に加えて、多国間組織の発展で、この地域の安全保障と繁栄を前進させられると信じる。私は、米国が近年、こうした組織の多くと距離を置いてきたことを承知している。だから私ははっきり申し上げたい。そうした時代は過ぎた。アジア太平洋国家として、米国は、この地域の将来を形作る議論に加わり、適切な組織が発足・発展した際には全面的に参加できることを期待している(拍手)。

 それが、今回の旅で私が着手する作業だ。アジア太平洋経済協力会議(APEC)は、地域の通商や繁栄を推進していくもので、私は今夜からの会議参加を待望している。東南アジア諸国連合(ASEAN)は東南アジアでの対話や協力、安全保障を促進する触媒であり続けるし、私は10人のASEAN指導者すべてと会談する最初の米大統領となるのを楽しみにしている(拍手)。米国は、東アジアサミットが時代の課題に取り組む役割を担う中で、より正式に関与して行きたいと望んでいる。

 我々がこうした関与の深化や拡大化を追求するのは、我々すべての将来がここにかかっているためだ。ここで少し、我々の将来がどのようなものになり、我々が繁栄や安全保障、普遍的な価値観や希望を促進するために何を行うべきかを話したい。

 演説全文(日本語訳)〈3〉はこちら。

2009年11月14日23時01分  読売新聞)
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