通勤車内で飲食する大人たち すたれる公共マナー 寛大な風潮が助長か
11月17日13時14分配信 産経新聞
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シンプルかつユニークさが好評の「家でやろう。」ポスター。マナーへの関心を高めるのに一役買っている=東京・大手町の東京メトロ大手町駅構内(写真:産経新聞) |
[フォト]希薄化する礼節…ステッカーで効果
◆おでんにコーヒー…
10月初旬、東京郊外を走る私鉄車内。大学名の入ったジャージー姿の女子大生3人が、熱々のおでんを食べながら談笑している。見かねた高齢の男性が「行儀が悪いな」と一喝。それでも女子大生たちは悪びれる様子もなく、食べ続けていた。
別の日の昼下がり。地下鉄車内では、携帯電話片手にコンビニ弁当をかき込むサラリーマンの姿があった。車内で立ったままおにぎりを食べるOL、揺れるバスの中でホットコーヒーを飲む男性会社員…。いずれもここ半年間で、電車やバスの車内で見かけた光景だ。20〜30代の大人の飲食マナーが低下していることをうかがわせる。
都内を走る鉄道、バス各社は車内での飲食は禁止していない。あくまでも利用者の良識に委ねられているのが現状だ。
JR東日本では、駅構内の売店や普通車のグリーン車内でも弁当や酒類などを販売している。このため、「おにぎりやサンドイッチ、弁当などを車内で食べることを禁止すれば、駅弁までも否定することになる」と消極的だ。東京都交通局も「飲食の善しあしは線引きが難しい。お客さまそれぞれのモラルに任せている」(広報担当)と話す。
こうした中、マナー啓発を呼びかけるポスターで注目を集めているのが、東京メトロの「家でやろう。」シリーズ。利用者から寄せられる苦情をシンプルなイラストにし、月替わりで紹介。迷惑行為をした人にさりげなく自分のことと気付かせ、公共の場にふさわしい振る舞いを考えてもらう狙いだ。
ポスターは昨年4月から駅構内に張り出され、利用者から「分かりやすい」などと好評なため今年度も継続。最近は学校教材への掲載についての問い合わせが多いという。
◆「飲食禁止」までは…
10月は、若者が車内でつゆを飛ばしながらカップ麺(めん)をすすっているイラストだった。同社によると、利用者から「車内で食事をしている人のにおいがきつい」といった苦情が寄せられ、採用した。
しかし、イラストの下には「車内での飲食は周りのお客さまにご配慮ください。」と書かれ、はっきり「飲食禁止」とうたってはいない。同社は「マナーは強制するものではない。押しつけがましい表現にならないよう気をつけている」と、あくまでも利用者のモラルに頼らざるをえない現状を吐露する。
迷惑行為を引き起こす背景に詳しい名古屋大大学院の吉田俊和教授(教育心理学)は「社会全体が迷惑行為に寛容であるため、当事者は『沈黙=黙認』と勘違いし、まねする人が増殖しているのではないか」と分析する。そのうえで、「幼少のころから公共の場での振る舞いを家庭でしっかりトレーニングする必要がある」と指摘している。
■迷惑行為1位は座席の座り方
迷惑行為のトップは「座席の座り方」−。社団法人「日本民営鉄道協会」(東京都千代田区)が昨年度、男女約800人に駅と電車内のマナーに関するアンケートを実施。「最も迷惑に感じる行為」の総合1位は、5年連続で「座席の座り方」(15・6%)だった。
時間帯別では、平日朝のラッシュ時は「ヘッドホンからの音漏れ」(19・1%)、平日深夜は「泥酔状態での乗車」(35・8%)。土日と祝日では「電車内で騒ぐ」(21%)で、時間帯や曜日でそれぞれの特徴が見られた。
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最終更新:11月17日17時34分
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