【記者手帳】在外韓国人への投票権付与をめぐる光と影

2012年から投票権を付与

 今月12日から13日にかけ、東京で日本の有力政治家らと面会した野党・民主党の丁世均(チョン・セギュン)代表は、14日早朝の新幹線で京都へ移動した。丁代表が訪れたのは「故郷の家」。今年4月、日本政府の支援と在日韓国人の募金を基に、任天堂の工場跡地にオープンし、在日韓国人の高齢者約190人が、キムチを腹いっぱい食べたり、韓国語を勉強したりしながら余生を送っている施設だ。丁代表の訪問は、ここに入所しているお年寄りたちのお見舞いという目的もあったが、2012年の国会議員総選挙と大統領選から、海外に住む韓国人にも投票権が与えられることと無関係ではなかった。「故郷の家」の関係者は、「オープン以来、韓国の政党の代表クラスが訪れたのは初めてだ」と話した。

 丁代表の一行は玄関へ入るなり、ひざまずいて韓国式のおじぎをした。韓国では選挙のたびによく見られる光景だが、民謡『アリラン』を口ずさみながら丁代表らを迎えたお年寄りたちは、やや驚いた様子だった。そして、丁代表は「2012年から皆さんに投票権が付与される。投票は権利であり義務だ。12年の大統領選で誰に投票するか、今からよく考えてほしい」と述べた。丁代表は今回の訪日で、在日韓国人の代表者らとも会い、選挙について話し合ったという。一方、与党ハンナラ党も最近、230万人と推定される海外在住の韓国人たちへのアピールのため、「在外国民特別委員会」を立ち上げ、各地域の責任者も任命した。在外韓国人たちを意識した与野党の競争が早くも始まったというわけだ。

 日本では、海外に住む韓国人たちが、投票によって韓国の政治に参加できることへの期待も高い一方で、韓国の激しい政治対立が在日韓国人の社会にも持ち込まれるのではないか、と懸念する声も少なくない。すでに、在外韓国人の中で、比例代表で出馬する準備をしている人物がいる、という話も出ている。与野党は、在外韓国人の票を得ることを目的に、現地のオピニオン・リーダーに対し、無条件で比例代表名簿に載せるといった約束を交わしたり、在外韓国人コミュニティーの分裂を助長するようなことはあってはならない。在外韓国人に投票権を付与することをめぐり、すでにこうした光と影の部分が表れ始めている。政界は単なる票集めよりも、在外韓国人コミュニティーに対する、思慮深いアプローチを研究していくべきだ。

鄭佑相(チョン・ウサン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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