撮影担当に聞く!!
大事にしたのは三者三様の芝居をじっくりと見せること
撮影担当:永野 勇さん
今回の撮影でチーフカメラマンを務める永野勇さんも、大河ドラマ『新選組!』から引き続いての登板です。土方の最期まで見届けることになり、その生き様に改めて感動したと言う永野さん。正月時代劇『新選組!!土方歳三 最期の一日』へのこだわり、土方に対する思いなどを聞きました。
—————— 続編が決定して、引き続き担当されることが決まった時は、どんな気持だったのですか?
永野 やっぱり嬉しかったですね。大河ドラマ『新選組!』は近藤勇の処刑で終わり、土方歳三のことはエピローグとして少し描かれましたが、きちんとした形で最後に花を咲かせて上げたいという気持がありました。そんなスタッフの1年越しの思いが実り、また土方役の山本耕史さんに会えるというのが、すごく嬉しかったですよ。
—————— 土方への思いであり、山本耕史さんへの思いでもあったんですね。
永野 大河ドラマの撮影現場で接した山本さんの人間性にひかれていましたからね。当時はよく撮影終了後、スタッフや共演者と飲む機会があったのですが、そういう場を設けてみんなをまとめてくれたのは山本さんです。率先して座長のような役割を引き受けたり、またスタッフに対する気遣いもすごかったですね。だから自然にみんなが「耕史くん、耕史くん」と集まっていく。僕らもすごく仕事がしやすかったんです。今回、また山本さんに会えるというのはすごく嬉しかったのですが、最初は少し緊張しました。でも「久しぶりだね」と山本さんが笑顔を見せてくれたのでホッとしたんですよ。
—————— どんな思いで撮影に臨まれたのですか?
永野 『土方歳三 最期の一日』なので、土方に凝縮はしていますが、それだけではありません。今回は榎本武揚と大鳥圭介を加えた三者三様の生き様が描かれていますから。独立国という構想を胸に抱いている榎本。近藤勇の思いを引き継ぎ、また共に戦ってきた新選組の仲間たちの死をムダにしたくないと、立ち向かっていった土方。大鳥もまた最後まであきらめたくなかった。土方にしても、榎本、大鳥にしても、彼らは体制の中で戦ったのではなく、反体制の立場だったけれど、純粋に世の中に一石を投じようとしたんですよね。最後まで夢に挑んでいく男のロマンとでも言うのかな。僕もそんな彼らの生き様から学んだところがすごくあります。それが少しでも伝わればと思いながら撮影していましたね。
—————— 具体的に工夫されたり、意識されたことは?
永野 山本さんはもちろん、歌舞伎でやってこられた片岡愛之助さん、舞台の多い吹越満さんと本当に素晴らしい役者さんが揃ったでしょう。そういう人たちがのびのびと芝居をやってくれればいいな、三者三様の芝居を出来るだけ長く撮りたいなという気持がありました。演出の吉川邦夫さんも同じ思いで、カットを切っていくのではなく、芝居を止めずに三者三様の気持や雰囲気を見せていくという手法をとったのです。だから、僕もそれなりに、いろいろなカメラワークをやりましたが、基本は芝居を素直に見て貰うのが一番ということでした。
—————— 3人の芝居は五稜郭が舞台。独特のセットでしたね。
永野 そうなんですよ。セットというより、105スタジオに実際の家を建てたような状態なので、ふつうの民家でロケをしているような感じでしたね。時間帯は夜のシーンなんですが、二階建てや中二階に望楼があり屋根も付いているセットですから、セットっていうと中二階ですよね。ああいう大きなセットで屋根も付いてきたりというところで、明かりも非常に苦しくて大変だったと思います。動きに制約を与えないために、器具もそんなに使えないので、最小の器具でなおかつ奥行きのあるセットの最奥部にも明かりを当てていかなくてはいけない。照明がすごく苦労しながらも工夫して器具を上手に隠しながらやってくれたんです。だから、けっこう狭いスペースの中でもカメラが動き回って撮れたんだと思いますね。
—————— あのセットの中で3人の役者さんが自由に動き回り、それを追いかけて撮るというのは、いろいろな意味でご苦労が多かったんですね。
永野 スペースが狭いのでスタジオでは戦争状態(笑)。しかし、音声も大変だったんですよ。3人が遠い位置に立って芝居をすることがあります。そういった距離が離れていてもしっかりとした音を録るというのは難しいんです。だけど、その雰囲気をすごく大事にして「これでは音は録れないよ」ではなく、それなら音をどうしようと考えてくれる。マイクを体に仕込むなど、本当にみんながいろいろなことを考えて撮影が進んだんです。そういった意味では、みんながよくまとまった現場だし、総合的に非常にうまくやれたんじゃないかなと思っています。
—————— それほど多くはないけれど、今回は土方の殺陣のシーンも印象に残りましたが・・・。
永野 動的な彼の勢いをとらえるために、カメラを三脚に据えて客観的に撮るのではなく手持ちカメラを使うとか、遠くからの長回しで切り込んでいく姿を撮るということはしました。カメラの工夫というより、土方というか、山本くんの気持や勢いを映像にのせていきたいという思いで撮っていました。
—————— すべて撮りきった今の気持は?
永野 終わったという感覚はないです。土方や近藤勇といった人たちの気持は、ずっと心の中に残っていますからね。だから終わったのではなくて、僕はこの番組を通して学ぶことがすごく多かったという感じです。多摩の百姓だったからこそ、彼らは武士になりたいという夢を見たし、多摩という土地で生きたからこそ、彼らは純粋に徳川幕府を守り、戦いを挑み、大きくいえば改革を目指した。土地柄や風土が人間を育てるということを、今回はすごく実感しました。今までも理屈ではわかっていたのだけれど、やはりこのドラマをやったこと本当に自分で感じることが出来た。それがすごく良かったですね。
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