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わがまち西成  ~ハンセン病回復者とともに地域で暮らす~

[2009年11月15日]

大阪府総合福祉協会・ハンセン病回復者支援センター  原田惠子さん

「西成のすずらんへもういっぺん行って、コーヒーが飲みたいねんー」と、岡山県にあるハンセン病療養所邑久光明園で60年以上暮らす崔南龍さん(78歳)は、私たちが訪問するといつも言います。崔さんのように、全国のハンセン病療養所での生活を余儀なくされている人びとは、2584人(2009年5月現在)いますが、現在ではすでにハンセン病は治っています。

 崔さんが初めて西成を訪れたのは今から9年ほど前になります。西成区出城にある特別養護老人ホーム「すずらん」にある喫茶サロンでくつろぐのをとても気に入り、その後何度か来ていました。西成へ来るときは、ヒューマンライツ福祉協会のスタッフが、送迎など支援してくれていたので、気軽にふるさとへ帰るような気持ちになっていました。その後、光明園で仲良しだった今は亡き療友も一緒に西成へ来ましたが、その方は、私たちに「おれ、実は西成に住んでいたんや」と打ち明けてくれました。仲良しだった崔さんも初めて知ったことでした。

崔さんは、岡山の療養所と西成で半々の生活をしたいと思うようになり、私たちはその願いを成就すべく、西成のまちに来るたびに歩いたり、食事にでかけたりしてなじんでもらいました。療養所の静かな日々に慣れていた何十年もの暮らしから、一日中自動車が走り、自転車や高齢者が当たり前に行き交う様子を「ええなあー。こんなににぎやかやと、生活しているという実感があるなあ」と、興味深そうに見ていました。

 2001年のハンセン病国賠訴訟の判決により、ハンセン病に対する国の隔離政策の過ちが認められましたが、ハンセン病回復者は隔離政策の結果、社会から切り離され、いわれなき偏見や差別で家族とも縁を切ったままの人がほとんどです。

 2004年、大阪府総合福祉協会にできたハンセン病回復者支援センターでは、そのような方たちとふるさとを結ぶお手伝いをはじめ、社会復帰支援や社会復帰者の地域生活にかかる相談などさまざまな支援を行っています。

 崔さんは今は、療養所の不自由者棟で介護を受けながら日々を過ごしていますが、「もういっぺん西成に行ってみたい、すずらんのコーヒーが飲みたい」と言います。西成で住みたいという願いはかないませんでしたが、まち中にある公園でひと休みしながら見た、多くの人たちの行き交う光景が忘れられないと言います。こよなく西成の町に思いを馳せているんだなあと感じました。ハンセン病回復者支援センターでは、療養所入所者が気軽にふるさとへ帰ったり、社会復帰者が、安心して地域で暮らせる環境づくりに努めています。区民のみなさんとともに、ハンセン病回復者の方々にいつでも「おかえりなさい」と言える西成のまちにしたいと思います。

お問い合わせ

西成区人権啓発推進会【事務局:西成区 区役所 区民企画担当 (市民活動推進)】
電話: 06-6659-9743 ファックス: 06-6659-2245
住所: 〒557-8501 大阪市西成区岸里1丁目5番20号(西成区役所7階)

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