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Chikirinの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2009-11-17 相対的貧困率あれこれ

時事話題に遅くてすみません。ちょっと前に発表された相対的貧困率。15%程度というのは、どうリアクションしていいのか微妙な数字だな〜と思いました。

日本は「不動産をもってたり貯金を貯め込んでいる、でも、フローの収入は低い高齢者」がかなり多いと思うので、できれば60才未満でも計算してみるとか、もう少し工夫がほしいかなとは思いました。


あと、相対的貧困率がどういう場合に高くなったり低くなったりするのかが、いまひとつわかりにくかったので、具体的な数字を使って計算してみました。

わかりやすいように5人で考えてみますが、AさんからEさんまでがそれぞれ2000万人ずついて、合計で人口1億人の国、と考えても同じです。


まずは、“トップ2割が金持ち国”の場合

Aさん年収 1000万円

Bさん年収  120万円

Cさん年収  110万円

Dさん年収  100万円

Eさん年収  90万円


中央値は110万円で、その半分が55万円

年収が55万円に満たない人はゼロ人だから、

この国の貧困率は0%


相対的貧困率の観点からすると、すばらしい国ってことですね?

全員高収入や全員低収入の場合、つまり格差が全然ない国の場合に貧困率が低いのはすぐわかるのですが、こういう“ごく少数の人だけが高収入”っていう国も貧困率が低いとわかります。



次に“下位2割が貧乏人国”の場合はどうでしょう。さっきと反対です。

Aさん年収 1000万円

Bさん年収 1000万円

Cさん年収  980万円

Dさん年収  960万円

Eさん年収  300万円


中央値は980万円で、その半分が490万円

年収が490万円に満たない人はひとりだから、この国の貧困率は20%


最初の国の場合より貧困率が高くなります。上位2割だけが高収入なら貧困率はゼロになりえるけど、下位2割が低収入だと、その人たちが貧困層にカウントされてしまうからです。

でもこの例の場合だと、人口の8割が高収入だから納税額も多そうで、社会福祉で下位2割を助けるのは容易そうではあります。(=社会福祉還元後の相対的貧困率はゼロにできそうです。)


なお、この国の場合、貧困率が下がる可能性は二方向あって、ひとつはEさんの年収が500万円になることです。最低賃金の引き上げや製造業派遣禁止などで、これを試みるのが民主党の政策でしょうか?

もうひとつのシナリオは、中間層の崩壊です。経済全体がより一層悪化し、正社員や公務員までリストラで職を失って年収がぐっとさがれば、最初の国みたいに“トップ2割以外は全員低収入”になる方向で相対的貧困率が下がる可能性もあります。上の例では、Cさん、Dさんの年収が600万円になれば、相対的貧困率はゼロに下がります。

日本の場合、こっちの方向での“貧困率低下”もありそうで怖いです。



さらに次。“一般的な勝ち組先進国”の場合

Aさん年収 3000万円

Bさん年収 2000万円

Cさん年収 1500万円

Dさん年収  700万円

Eさん年収  600万円


中央値は1500万円で、その半分が750万円

年収が750万円に満たない人はふたりだから、この国の貧困率は40%


ひどっ。

数字をざっとみた感じ、全体にかなり裕福そうな国ですけど貧困率は高いですね。国民の4割が貧困なんて聞いたらちょっと驚いちゃいますよね。


こう見てくると、つまりは“中央値”が高いと(相対的)貧困率は上昇するのだということがよくわかります。相対的貧困率に影響を与えるのは、「真ん中の人がいくらもらっているか」という点です。真ん中の人より上の人がいくら貰っていようと(一億円もらっていようと10億円もらっていようと)相対的貧困率には影響を与えません。

ポイントは、「給与がその国で真ん中」に位置する人のもらっている額と、「それより収入が低い人の間の格差が大きいか小さいか」という点です。つまり「下半分の人達の中での格差」が問われるのです。


あと、今回計算していて思った。みんな自分の周りで相対的貧困率を計算してみたらおもしろいんじゃないかと。

兄弟とか親とか親戚とか、友達グループでもいいけど、一定の範囲の人の年収を(推定で?)並べてみて、“中央値の人の年収”の“半分以下の年収”の人が何人いるか、って計算してみてくださいな。


日本って、案外この「身近な範囲の相対的貧困率」が低いんじゃないかとちきりんは思うんです。


意味、わかりますよね?


で、そのことのほうが社会問題としては結構な問題なんじゃないの?って気もしたりした。


ふーん。


そんじゃーね