『戦場の宮古島と「慰安所」』日韓共同「日本軍慰安所」宮古島調査団著、洪■伸編 なんよう文庫2100円
アジア・太平洋戦争で日本軍が展開したところには、慰安所が設置された。だまされて「慰安婦」にされ、肉体的精神的苦痛にさいなまれた被害者たちは日本政府を告発した。政府は自らの関与を否定し、すべて業者の営業行為によるものと強弁した。しかし動かぬ証拠を突きつけられた結果、公的関与を認めざるをえなくなった。にもかかわらず、日本政府はいまだに責任を取ろうとはしていない。日韓両国に真の平和がないのは「慰安婦」問題が未解決だからであると言ってよい。将兵の戦意高揚、強姦防止、性病対策、機密保持策として日本軍の管理監督下に置かれた慰安所は、沖縄全体で136ヶ所。うち宮古島には16ヶ所。
本書は日・沖・韓の有志による「宮古島に日本軍『慰安婦』の祈念碑を建てる会」が2006年から08年にかけて行った調査と碑建設の報告書である。そこには日本国家によっては決して書かれない歴史が描かれている。
慰安所の存在は宮古島では多くの住民に知られており、出入りする「慰安婦」は奇異というよりは同情の目をもって見られていた。13名の宮古島の証言者は、加害者側としての痛みと同時に、「アリランの歌」を教えてくれた彼女らへの親しみをも表明した。碑建立に自分の土地を提供した証言者の思いは一段と深い。除幕式に出席した「元慰安婦」は、“鬼のような動物たち”の子孫がいると信じていた宮古島でかつての日本兵とは決定的に違う人たちに出会い、混乱さえしたと証言。彼我の証言を聞いた人たちの謙虚で優しくも厳しい決意は胸を打つ。建立された2つの碑「アリランの碑」と「女たちへ」に刻まれた言葉にそれは凝縮されている。「女たちへ」の碑文は、アジア・太平洋戦争中、日本軍に性的暴力を受けた被害者たちの11の言葉だけではなく、ベトナム語まで加えた12語で刻まれている。15年後のベトナム戦争に参加した韓国軍の性暴力の事実をも加えたのである。
時と場所を問わず、強者の暴力によって小さく弱くされた人たちの側に立ち抜こうとする人間の記録。それが本書である。(平良修・日本基督教団牧師)
※注:■は王ヘンに「允」
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