私立中高一貫校研究 私学Bracketing 学校選択を考える 入試について 学力を考える 学びを考える
教育と経済 フランク・ロイド・ライトとの対話 これからの教材 企業と経済研究 入試に役立つ読書 未来を創る学校





タイでヤマハがホンダを追撃≪週刊東洋経済7/16号より要約≫

2005年7月21日
by 葛原 怜

■ アジア各国の二輪は庶民の足として年率15〜30%と爆発的な拡大を続ける。市場規模は年間2000万台以上で、年間80万台弱の日本をけた違いに凌駕する一大市場である。その世界市場で、世界最大の二輪メーカーホンダはまさに王様のような存在である。ホンダの04年のシェアはタイ70%、インドネシア50%、ベトナム35%、インド46%と圧倒的で、現地でオートバイのことを「ホンダ」と呼ぶ人が多いこともうなずける。

■ 過去最高益を続けたホンダの04年度決算は6309億円を上げた営業利益のうち、実に10%強をアジア中心の二輪事業が稼ぎ出している。それに対してヤマハの位置はかなり後方である。シェアはタイ13%、インドネシア21%、ベトナム15%、と大差がつく。利益面では04年度決算では営業利益は218億円だが、インドは赤字、タイでも29億円の黒字に過ぎず、アジアが収益源とは言えない。

■ 不運もあった。タイでは通貨危機で現地の合弁会社のクビが回らなくなり、経営スピードが落ちた所に、ホンダの低燃費・環境対応の新製品が攻勢をかけ、一気にシェアも30%から10%まで下落したのだった。

[同号より参考]

■ 02年の5月にホンダは4万バーツが主流のオートバイ市場に3万バーツ以下という破格の低価格製品を投入した。この低価格製品の威力は凄まじく、早くも翌年には市場の過半を占めるに至ったのである。これによりヤマハの危機感はピークに達した。四輪事業にも手を出しているホンダはいずれ国民所得の上昇とともにやってくるモータリゼーションの四輪への移行にもついていけるが、二輪事業しかないヤマハはそうはいかない。

■ 必要なのは"超"長期でのブランド戦略であると判断したヤマハは3万バーツ以下の商品には手を出さず、業界初となる自動変速オートバイ『ヌーボ』を発売し、その後も高価格帯の自動変速オートバイを投入した。タイでカネを出し惜しみしない17〜24歳の若者層にターゲットを絞り、それに合わせたデザインのオートバイに、最新の若者向けCMを作った。

■ 作戦は当たり、ここにきてタイでは低価格品の勢いが鈍化してきた。むしろヤマハを中心とする、高価格品志向が急増したのである。タイの目標は今年で前年比45%増の40万台を販売し、シェアは205台に乗せる事であるという。創立50周年式典でもヤマハは「世界各国で『ヤマハ=オンリーワンブランド』を目指す」と宣言した。高成長のアジア各国もいずれは市場成熟化の時期をむかえる。タイでの戦略は近未来のアジア戦略となりうるのか。「王様」ホンダへの道のりはまだまだ遠いが、ヤマハに大きな自信を与えたようである。



企業と経済研究 目次へ