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道具ものを作るっていうのが、なんかいいんだよね

藤も魅せられたという陶芸の魅力について尋ねると、少年のような笑顔がほころんだ。

「道具ものを作るっていうのが、なんかいいんだよね、不思議と嬉しくて。オレは絵も書もやるけど、炎で模様をつける陶芸は、狙ったようにはいかなくて……。結果が出るまで時間がかかって、面倒みてやるのが大変なんだ。湿度に気を配ったり、やたらと手間暇がかかる。でも、そうやって作った器で酒なんか飲むのがまたよくて。ま、自己満足だけどね」

本作でも、10日間焼き続けて完成させるが、わざわざ手間と時間をかけて作るのが陶芸の醍醐味。そこに藤の自分らしい時間があるのだろうか。

「オレの場合、陶芸はあくまで趣味だから。一番自分らしい時間というとやっぱり映画の現場だな。いつもこれが自分の代表作になるようにと思ってやってるんだ」

根っからの映画人としての生き方。一本筋の通った姿勢に藤の本質をかいま見た気がした。

ストーリー 父親の死により心を閉ざした日系カナダ人のケン(マット・スマイリー)は国際的に著名な陶芸家である叔父・琢磨(藤竜也)の住む信楽にやってくる。ナイーブなケンは奔放な琢磨に反発するが、彼のもとで陶芸を学んでいくうちに女性と芸術を愛する自然体の琢磨にしだいに心開くようになる。やがて10日間不眠不休の窯焚が始まり、そこでケンは新たな自分を発見してゆくのだった。

入江 奈々(いりえ・なな)

兵庫県神戸市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。某録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験後、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者として様々な雑誌や書籍、劇場パンフレットを手がける。映画をメインにマーケティングからお笑いまで幅広い分野で活躍中。

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