道具ものを作るっていうのが、なんかいいんだよね
藤も魅せられたという陶芸の魅力について尋ねると、少年のような笑顔がほころんだ。
「道具ものを作るっていうのが、なんかいいんだよね、不思議と嬉しくて。オレは絵も書もやるけど、炎で模様をつける陶芸は、狙ったようにはいかなくて……。結果が出るまで時間がかかって、面倒みてやるのが大変なんだ。湿度に気を配ったり、やたらと手間暇がかかる。でも、そうやって作った器で酒なんか飲むのがまたよくて。ま、自己満足だけどね」
本作でも、10日間焼き続けて完成させるが、わざわざ手間と時間をかけて作るのが陶芸の醍醐味。そこに藤の自分らしい時間があるのだろうか。
「オレの場合、陶芸はあくまで趣味だから。一番自分らしい時間というとやっぱり映画の現場だな。いつもこれが自分の代表作になるようにと思ってやってるんだ」
根っからの映画人としての生き方。一本筋の通った姿勢に藤の本質をかいま見た気がした。