ハプニングも結構あったんです
円熟味ある大人の男という言葉が、これほどぴったりとくる人もいないだろう。照れ隠しなのか「そんなことはないよ」と言うが、カナダ・日本合作の新作『窯焚─KAMATAKI─』でも、円熟味を十分に見せつけている。日系カナダ人である青年の心の成長を描いたこの作品で、藤は、青年を預かる著名な陶芸家の叔父・琢磨を演じた。
「今で言うチョイワルオヤジってやつだね(笑)。誰でも心の奥底に、こういうヤツになってみたいなんて願望はあるんじゃないかな。好きなことやって女遊びしても、誰に文句言われることもなく怒られることもないなんて」
確かに、いわゆる“厳格な陶芸家の先生”らしくはない男だ。しかし、ひょうひょうとしたところがまた芸術家としての人間性と合致していて、違和感などまったくない。
「そう見えるように監督が撮ってくれてるだけですよ。この映画のクロード・ガニオン監督は、テストをやらずにいきなり本番を撮る人だから、ハプニングも結構あったんです。一度、本番中に“アンモラル”って英語が出てこなくてね。演じながらも、う〜ん、なんだっけあれ……なんてことにもなったよ」