朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

  • バックナンバー

ひとインタビュー時間かけ役に近づく作業が好き 仕事しなければ、ただのオヤジ 第八十五回 藤竜也さん

  • 縦書きスタイルで読む
  • ページ1
  • ページ2

作品の選択が役者人生の要

――出演される作品の決め手は何ですか

本(台本)です。本がいろいろしゃべってくれるんです。「あなたがこの作品をやると失敗するからやめなさい」とかね(笑い)。逆に「これは出なさい」と指令がくる本に出合えるとめちゃくちゃうれしくなって、「どんな町に住んでいるのか」「舞台は九州?だったら、いつ行こうか」なんて早速調べ始めます。役者にとって、本の選択は実はすごく大事。この判断で僕らの人生、商売は決まっていくこともありますから。

――そもそも役者になったのはスカウトがきっかけですね

たまたまデートの待ち合わせ場所で当時の彼女を待っていたときにスカウトされ、日活へ入りました。だから、決して役者になりたくてなったわけではないんです。とはいえ、やると決めた以上はやり遂げないと気がすまない性分。大部屋俳優から何とか脱しようと、先も見えないのにとにかくあがいていた時代がありました。

先日、日活時代にお世話になった舛田利雄監督と久しぶりにお会いしました。食事をして別れたのですが、その直後、わけもなく涙が溢(あふ)れてきてしまった。あの感情の高ぶりは何だろう、感謝というのかな。いずれにしても、役者という出発点に何とかたどりつけ、多少なりとも仕事を続け、今の自分があるのは、もがき続けていたあの時代に舛田監督と出会ったおかげ。あの監督がいなかったら違った人生になっていたと思います。

――俳優を続けてこられたのはなぜだと思いますか

きっと、過ぎたことをすぐに忘れるからでしょう。どんな映画に出たかはいろんな人の記憶に残り、記録にはなるけれど、僕にとってもはや過去のことで、興味あるのは常に次の仕事のことだけなんです。だから続けていられるんだと思う。もちろん、次の作品がなかなか決まらなくて、失業状態が続き、自分が俳優であることも忘れてしまいそうになることもありますが。

――仕事をしていないときは何を

陶芸、語学、料理、運動など何かしら夢中になっています。ただ、陶芸はしばらくもういいかな。個展のため1年間仕事をせずに700点以上の作品を作ったら、さすがに飽きてしまった(笑い)。

――仕事も遊びもすごい勢いでのめりこむのに、引き際は潔いですね

昔の僕の、女性とのつき合い方もそんな感じ。引きずらなかったな(笑い)。

――そうなんですね。では、過去に執着しないのは昔からの性分ということ

それもあると思うけれど、僕は基本的に役者は贅肉(ぜいにく)がついてないほうがいいと思う。だから過去を引きずらない。どんな作品に出た、どんな賞をもらったというのは無駄な贅肉でしかなく、必要ないわけです。新しい仕事には真っさらな自分で臨みたい。毎回、次の1本が最初で最後ぐらいの気分でね。何よりあまりいろんなものを背負わないほうが気楽でいいんです。

妥協せず、生きる

――昔から男っぽさと独特の渋さ、色気を兼ね備えていますが、そのひけつは

まず訂正したいのは、その印象はありがたいけれど、それは世間の勝手な幻想でしかなくて、僕とは関係ない。実際、僕はただのオヤジだからね、ひけつと言われても本人に自覚はないからわからない。

――とはいえ、公私ともに自分を貫いている。そんな生き方のヒントが何か得られるとうれしいのですが

自分自身を肥大化しないことかな。自分のできることって限られている。でも、才能とまではいかなくてもここまでやって生きてきたんだから、いくらかの「何か」はある。それ以上でも以下でもない「何か」。そこを踏まえたうえで、とにかく僕は自分ができることを一生懸命、楽しみながらやろうと思っている。その意識はありますね。

――楽しみながらやるにしても、ときには我慢も必要

好きなことをしていても、やせ我慢が必要なときもある。頑固を貫くのも意外に大変で、頑固であることの重みを背負わなければならない。ただ、自分が引き受けたことだったら、その結果がたとえ不本意だったとしても納得できるし、自分で責任が取れるでしょう。でも、妥協っていうのは化けものみたいなものでそうはいかない。何より妥協してうまくいかなかったりすると、ものすごく腹が立ちますしね。だから僕は妥協せず、何でも自分の意思で選択し、それを引き受ける人生を貫くようにしている。そのために2年間、長いときで3年間、1本も仕事がないときもありました。でも、それは自分で選択した結果だからしかたない。次がくると信じるほかないわけで。

――妥協しなくても、必ず次の仕事は訪れると信じている

信じるしかないですよね。でも、俳優は待つだけの価値がある仕事。とくに映画はカタチじゃない何かが人の心に触れていく、そんな魔力的な魅力に満ち溢れている。だから、どんなことがあってもやめられないんだと思います。

(写真)藤竜也さん3つの質問
質問1
これまでの人生で最大の買い物(投資)は何ですか?

「俳優」。スカウトされて日活に入り、俳優になったわけですが、最初の3年間は大部屋俳優から抜きん出ようと必死でした。あの時代こそが、僕の俳優への最大の投資期間だったと思います。

質問2
こだわりがある、という生き方をしていると思う人を挙げてください

映画監督の大島渚さん。「愛のコリーダ」「愛の亡霊」の2作品に出演させていただきました。いろいろなタイプの監督がいるのですが、極めて作家的な方で、映像作家とはどういうものかを僕は監督から感じ、学ばせてもらいました。大島監督は映画人としてのすさまじさもすごかった。とくに僕の人生において「愛のコリーダ」の存在は大きい。強烈な影響を受けました。

質問3
人生に影響を与えた本は?

聖書です。信者でもないし、プロテスタントの中高一貫校で毎日礼拝を強制されるのが嫌で騒ぎを起こしたこともあるのですが、でも、やはりあの年齢のころに触れた聖書というのは、自分の中にいろんな意味で影響を与えてくれた気がします。

アンケート 今回のインタビューについて皆様の「声」をお聞かせください。

前のページへ
バックナンバー

関連ページ

画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Firefox1.5以上、Macintosh Safari 1.3以上、Firefox1.5以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。