ここから本文エリア 「位置ゲー」が土産店潤す2009年11月16日
携帯電話を片手にお土産物を買う若者が、東北各地で増えている。全地球測位システム(GPS)を使い、移動距離に応じて得る仮想通貨で遊ぶゲーム「位置ゲー」の利用者だ。現実の店を訪れる目的は、ゲームと提携する店舗で買い物することで得られる、通常では手に入らない「レアアイテム」。東北でも増えつつある提携店は、遠方からの来客の豪快な買いっぷりに驚いている。(中野和郎) 「あのぉ、コロプラのカードがもらえる店だと聞いたのですが……」 松島蒲鉾(かま・ぼこ)本舗総本店(宮城県松島町)で、仙台市から営業がてら立ち寄った40代の男性会社員が尋ねた。「かまぼこすべてが対象です」「じゃあ、3千円分で」。男性は、笹(ささ)かまぼことともにカードを受け取り、「どっちかというと、目当てはカードですね」ともらした。 ■ ■ 「コロプラ」とは、同名のベンチャー企業(東京都)が運営する携帯ゲーム。利用者は、仮想通貨「プラ」でアイテムを買い、自分のコロニー(居住地)の人口が増えるのを楽しむ。さらに移動先でしか買えない仮想「お土産」を集めたり別の参加者と交換したり、近隣に滞在する参加者と交信もできる。これらが受け、08年10月の会社設立後、利用者は伸び続け、今では約60万人に達する。 ゲームに6月から新たに加わったのが、カードを使った実店舗との連携システムだ。利用者は、提携店で購入金額に応じたカードを受け取り、記載された番号を登録すると通常は入手できないレアアイテムの「お土産」が買える。これがゲーム内で仮想通貨を使って高値で売買されることから、利用者はわざわざ買い物に出かける。 一方、提携店は、買い物をした利用者に渡したカードの金額の20%を、集客力への謝礼としてベンチャー企業に支払う。初期費用や固定費用はかからない。 ■ ■ 松島蒲鉾は11月に参加し、すでに250人超が訪れた。東海林一彦リーダーは「埼玉や郡山からも来られた。正直びっくり」。今夏にコロプラから誘われた際は「位置ゲーって何?」と思ったが、「松島への観光客は減少傾向。新しいお客様がつくのなら」と参加を決めた。 八郎潟の干拓地にある「野の花シフォン」(秋田県大潟村)も11月に参加、約150人が名物のケーキを買った。成川一則オーナーは「一番乗りは茨城県の方で、ほかにも日光、石川など9割以上が県外。こんな田舎に全国から人が来るなんて」。 特徴は客単価の高さだ。通常は800円程度なのに、ほとんどのコロプラ利用者は5千円以上買う。「最高は2万円。ケーキですから、すごい量でした」。松島蒲鉾も単価は5千円程度で、一般客の5倍近いという。 東北で最も早く8月に参加した笹の川酒造(福島県郡山市)は、専用ラベルを張った焼酎が約1千本売れた。「初期費用がかからないから『試しに』始めた」という山口恭司専務だが、「うちはメーカーだから消費者との接点は少ないのに、コロプラを通じて直接、話を聞けるようになった」と、売り上げ以外にも満足している。 ●コロプラ 携帯端末向けゲームサイト「コロニーな生活☆PLUS」の略称で、株式会社コロプラが運営する。利用者は会社員が過半数で、20〜30代が全体の8割を占める。カードの提携店は11月現在で24店舗。栃木県・日光の菓子店で行列ができるなど、各地で話題となりつつある。11月からはJR九州が切符とカードを連動させた企画を始め、大企業にも提携が広がっている。
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