エマ (1) (Beam comix)


 ちょっと前のニュースだけれど米国図書館協会「エマ」「放課後保健室」「いばらの王」推薦作品にというニュースがありました。

 米国図書館協会の12歳から18歳までのティーン世代の読書活動を支援するヤングアダルト図書館サービス協会は、ティーン世代に向けた2008年のお薦めグラフィック・ノベルのブックリストを発表した。
(中略)
 この推薦図書は43作品からなる全体リストと、そこからさらに絞ったトップ10に分けられる。このトップ10には、日本のマンガからはビクトリア朝のイギリスを舞台に階級制度を超えた愛を描く『エマ』(森薫)や『放課後保健室』(水城せとな)、『いばらの王』(岩原裕二)の3作品が選ばれている。


 エマすげー!
 初めに聞いたときはそう思ったけれど、よくよく考えてみたらその米国図書館協会ってのがどんなものかわからないからすごいんだかなんなんだかよくわかりません。
 もしかしたら全然アメリカでは有名でもなんでもない、発言力もないような協会かもしれませんからね。

 と、思って調べてみたのですが、詳しい情報が文部科学省のページにありました
ALA(American Library Association:米国図書館協会)は、1876年に設立された、世界で最も古くかつ最大規模の全国的な図書館の協会である。NPOとしての501C3(税金のカテゴリー)を獲得している。

 ということで歴史もあり、規模もかなり大きい発言力がある団体(NPO)のようです。

 どちらかというと学問よりなのに、推薦漫画を挙げるなんて、結構すごい。
 上のもの以外に日本の漫画はどんなものが挙げられているのかというと、
トップ10 The Great Graphic Novelsの日本作品
『エマ』 (森薫)
『放課後保健室』 (水城せとな)
『いばらの王』 (岩原裕二)
 
The Great Graphic Novelsの日本作品
『よつばと!』 あずまきよひこ
『パンプキン・シザーズ』 岩永亮太郎
『アライブ-最終進化的少年-』 原作:河島正、作画:あだちとか
『夕凪の街 桜の国』 こうの史代
『TRAIN+TRAIN』 倉田 英之
『ラブ★コン』 中原アヤ
『トランスルーセント〜彼女は半透明〜』 岡本一広
『地球へ』 竹宮惠子
『結界師』 田辺イエロウ
『蟲師』 漆原友紀
『フラワー・オブ・ライフ』よしながふみ

 とのこと。
 結構色々な種類の漫画が入っていてびっくりしました。よつばとが大好きな私が言うのもなんですが、よつばとって日本に住んでないとわからないような笑いのつぼみたいなのが結構あるような気がするのですが、アメリカでも意外と通じるもんなんですね。
 逆に蟲師なんかは読んだ後に日本ってこんなもんなのか、なんて思われそうで怖い。

 あと意外だったのはアメリカで人気のはずのナルトなんかが入っていなかったところ。デスノートなんかはさすがに推薦できないだろうけれど、結界師が入ってるなら別にナルトも入っていても悪くないような気が……。
 もしかしたらもうすでに誰もが知っているようなものは推薦しない(する必要がない)のかな。

 ちなみに実際に推薦された43作品のリストは米国図書館協会(ALA)のこのページで見ることができます。
 日本のものを除いたら知ってるものはありませんでした……。マルコムXとかは知ってるけれど、映画で知ってるだけで漫画は見たことがないですし。

 そしてトップ10はこちらから見れます。
 おお、確かにエマが入ってる。

 エマは確かに歴史の勉強にはなるような気がしますね。歴史と言うか文化を知ることができるというか。エマの漫画の絵は細かいところまできっちりと描かれているので、どういったところに住んでた、とかどういうものがあった、なんてのは確かにわかる感じがします。

 それにしても実はそれ以上に驚いたのが放課後保健室の方。
 いやね、私、この作品を知らなかったのでAmazonで検索してみたんですよ。そしたらこんな感じでした。
放課後保健室 (プリンセスコミックス)


 こんな感じです。少女漫画だったんですね。でもなんか3巻とかこんな表紙
放課後保健室 3 (3) (プリンセスコミックス)


だし、4巻もこんな
放課後保健室 4 (4) (プリンセスコミックス)


だし、ほんとに『ティーン世代に向けた2008年のお薦めグラフィック・ノベル』なのかよ、と思わず突っ込みを入れそうになりましたよ。
 でも1巻のレビューなんかを見てみると
放課後の 誰も知らない秘密の 保健室で。
トラウマを抱える少女、いい子を演じすぎ自分を失った子
色んな悩みを抱きながら生きる子供達は授業の中で
自分の抱える秘密と向き合い、闘わなくては「卒業」出来ない
見せたくもない もう一人 の自分を他人にさらけ出しながら。

 なんてことが書いてあるので、若い頃(とは限らないけど)にある悩みや葛藤なんかを描いている作品っぽいですね。雰囲気的にはトラウマを乗り越えていくような感じで描かれているのでしょうか。ちょっと読みたくなってきました。

 でもこの作品、英語のタイトルが「After School Nightmare」なんですよね。それをまた日本語に直訳すると「放課後の悪夢」になってちょっと怖い作品になってしまう。
 このタイトルでアメリカの少年少女たちに漫画の中身がきちんと伝わってるのかちょっと心配だったり。

 アメリカの図書館の司書、教育者なんかがこういったエマや放課後保健室を推薦している、というのが興味深いです。
 面白くて、それでいて何らかのものを若者が得ることができる、と考えて推薦しているわけなので、なんというか頭が随分柔軟で子供のことをきちんと考えているような、そんな感じがしますね。

 日本には同じような協会ってあるのかわからないけれど、もしあったとしたらどんな漫画を薦めるだろうか、と考えるのも面白いですね。
 どこの図書館にもある漫画、というと私にはこの作品くらいしか思いつかないけれど、今でもこの作品は図書館においてあるのでしょうか。