finalventの日記

2009-11-12

朝日社説 オバマ氏来日―問われる同盟管理の意思

 意外と微妙な社説だな。

 しかし、事態はますます困難さを増している。沖縄県知事や地元の名護市長は辺野古移設を容認するが、政権交代によって県民や地元住民たちには県外移設への新たな期待が生まれている。方針がなかなか定まらない首相へのいらだちも募る。

 一方で、普天間飛行場の危険な状態は一日も早く除かねばならない。日米合意を白紙にすることで、米軍再編という大きな構図のひとこまが埋まらなければ、普天間返還や海兵隊のグアム移転など沖縄の基地負担の軽減策がすべて足踏みしてしまう。

 鳩山首相は会談で問題の難しさ、複雑さを率直に説明してはどうか。避けて通るのではなく、同盟の根幹にかかわるからこそ、真剣に意見を交わす。そうした姿勢が大事だ。

 社会党じゃないや社民党は暢気に構えているが、普天間飛行場の危険性は変わらず、どうも米議会の重要なタイミングは一つ逸してしまい、このままだとずるずると固定化の道を辿りそうだ。もちろん、米側も危険性は知っているので、なんらかの対応はするだろうが日本への通告はないだろう。住民側からすれば情報はないに等しく、騒音も変わらない。

 こうした問題に、「同盟の根幹にかかわるからこそ、真剣に意見を交わす。そうした姿勢が大事だ」というのはなんとも困った書生さん。同盟というのは、両大国で東アジアからインド洋中近東シーレーンを守り世界の自由貿易の基盤を作りましょうということだが、日本にはその意識はない。米国は元来は孤立してもやっていける国だが、東洋への幻想もあってこの軍事プレザンスを維持している。だが、今後米国民がそれで納得しないかもしれない。その時は、日本は他のアジア諸国のように中国の事実上の属国となるしかなく、エネルギーは北京から配分され、食糧は制限される。幸い日本国民は減少しているし、中国としても食の楽しいちょっとしたリゾートの国ができたくらいになり、戦争惨事ということもないだろう。それはそれでしかたのないことだ。

 首相がいずれどういう決断を下すにせよ、それに基づいて現状を打開するには大変な政治的エネルギーがいる。この問題を早期に解決するという強い政治意思を両首脳が表明し、打開への弾みをつける必要がある。

 岡田さんはエネルギーだけは見せてくれたけど、やはりへたれた。佐藤栄作は傑物だったなと思うな。

 オバマ氏はNHKのインタビューで、鳩山政権が辺野古移設をめぐる日米合意を検証していることに理解を示しつつ、最終的にはそのまま受け入れるよう期待を表明した。

 政権交代があれば、前政権からの政策の変更はありうるし、それによって摩擦が生じることもある。政権交代の時代の同盟管理のあり方が問われているのだ。

 この二段落で朝日新聞の執筆者は何を言いたかったのだろうか。政策変更で摩擦あれということか、つまり、普天間飛行場閉鎖か。しかし、それはたぶん同盟の管理以前の、共産党のご主張みたいなファンシーなものになるだろう。ここは、「政権交代があっても、前政権からの政策の継続はありうるし、それによって摩擦が生じることもある」ではなかったか。

 

追記

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welldefined 公海の自由はタダじゃないというのは重要な指摘だが、自由貿易維持に関して米中の利害は反せず同盟相手が日本である必然性は無い。ベネズエラでも別に海上封鎖はされない。 2009/11/13

 理論的にはそう。でも、中国の現状からはそうは見えない。アフリカ中南米の資源外交を見ても、囲い込みが原則としか見えない。で、実はそれ以前に米中利害の一致というのは、実際には米国金融と北京政府が結託して事実上の中国の植民地化を進めているのだけど、これがうまく行くかという問題。軍側はナショナリズムに転じる危険性が高い。(ベネズエラの問題はこれとは違うよ。)

asahichunichi アメリカはアメリカの国益で動く。今やアメリカは中国重視方針であるので、日米共同で東アジアを守ろう(笑)なんて親米バカの片思いなんか知ったこっちゃない 2009/11/13

 まあ、そのレベルの世界観にコメントはないんだけど(なぜ中国重視なのか考えてごらんなさいな)、スター付けているのwelldefinedさんなわけね。

nijuusannmirinijuusannmiri 2009/11/12 17:56 ちょっと前に、民放の政治バラエティ(笑)番組をなんとなく眺めてたら、「アメリカは日本よりも中国重視に舵を切ってるから、日本も独自色を出していかないと」みたいな議論を相変わらずやっていて、暗い気持ちになりました。自民や民主の国会議員も居たんですけどね。手嶋龍一さんだけが「アメリカは日本を軽視してません」って言ってましたが。
日本がアメリカと中国のどちらの属国になりたいかは、ある意味で国民の選択でしょうけど、「アメリカは中国と組みたがってる」と取れるような議論をして何の得があるんでしょうかね。

finalventfinalvent 2009/11/12 18:42 nijuusannmiriさんへ。「反米」なのかなとは思いますね。ウイグルやチベットの弾圧なども、常にそういう政治図式で議論されるような。ある民族が弾圧されているとき、他人事のように感じられる精神はよくわからないなという感じです。

ProcionoProciono 2009/11/13 07:11 > 日本は他のアジア諸国のように中国の事実上の属国となるしかなく

・この最悪シナリオは民主党政権が現下の方針を一期とり続けるだけで実現する短期的なシナリオということでしょうか?
・また、アメリカの世論はともかくとして、今の日本以上に喧しいヨーロッパを手放していないアメリカ政府が、日本を手放すようなことがそもそもあり得るのでしょうか?
・結局、民主党政権の日本にとっても、アメリカ政府にとっても、大きく日米同盟を変えるような決断は、する気がないというか、気が進まない話のように思えるのですが、いかがでしょうか。

finalventfinalvent 2009/11/13 08:46 Procionoさんへ。箇条書きで。
・このシナリオは短期ではありません。以前も書きましたが、韓国が先に構造変化をするので日本にはやや時間的余裕があります。が、体制的な余裕はもうないでしょう。
・「欧州を手放さないアメリカ」ですが、エネルギー問題とイスラエル問題、それと英国同盟の点を除けば、事実上手放していくのではないかと見ています。ただ、これはロシアの衰亡によります。
・米政府は日米同盟の重要さを理解していますが、米国民の支持が難しくなり、徐々に手薄になるのではないかと思います。
・中国は彼らの幻想では現在の米国のような超大国幻想を持っていますが、ナショナリズムと共産党独裁を基軸にしているので、中期的には破綻するでしょう。インドの台頭、またはパキスタンの暴走が引き金になるかと思います。

ProcionoProciono 2009/11/13 08:55 ・最悪シナリオが短期でないということは、政権が短期で自民党に戻っても、やがて到来するシナリオということですね。
・中国が中期的に破綻するということは、日本やアジア諸国はその際にフリーハンドを取り戻すということでしょうか?

finalventfinalvent 2009/11/13 09:16 Procionoさんへ。ええ、そうです。軍事力に裏付けられた中国の台頭、および実質的な支配となります。もっとも支配といっても修辞ですが。アジアのエネルギー配分および資源配分を基本的に北京がコントロールするようになります。そしてこれは、実質、シーレーンの制御を始めます。この問題は逆からみると、中国にとっては米国がシーレーン制御されているのが国策上問題なのです。もうちょっというと、米国がエネルギー配分および資源配分を制御しているのですが、その配分原理が、自由主義経済で、日本はその恩恵に立国しています。中国の配分原理はもっと理性的・合理的そしてある意味人道的になるでしょう。つまり、自国の貧しい人のために、自由原理であれば配分されたエネルギー・資源をそちらに回すというようにです。▼中国のおそらく最大の問題は、この台頭が20年続けることができないシーリングがやってくることです。急速な人口変化が訪れますし、おそらく富裕化はそれにマイナスの作用をします。変わりにインドが台頭し、インド洋沖のシーレーンを自国下に置こうとします。米国はそこまで見渡して、インドへの肩入れを始めています。というか、ブッシュ政権が行った最大の政策はそこにあるのですが。なので、関連国のフリーハンドというより、ブロック化の自衛にならざるをえないでしょう。意外と南米との連携が始まるかもしれません。

ProcionoProciono 2009/11/15 08:52 お話を伺っていて思い出したのは Finlandization フィンランド化という冷戦用語ですね。冷戦下の西ドイツがいわゆる東方外交をやっていたときに西ドイツの保守派が言い出したセンセーショナルな用語ですが、日本にまで伝播して中曽根氏が首相の時にうっかり使用してフィンランドから抗議されたというやつです。
しかし、西ドイツはもちろん(ソ連との関係で)フィンランド化はしなかったわけですが、それは冷戦下の西側陣営に堅く組み込まれていたからでありましょう(そもそもフィンランドがどれくらいソ連に従属的だったのかも問題ではありますが)。
で、東西陣営という概念の消えた冷戦終結後の日本が(中国との関係で)フィンランド化するのかどうかというと、
・そもそも現政権の東アジア関与政策が、西ドイツの東方外交ほど実質を伴うものになるのかどうか。
・アメリカが、たとえ共和党政権になっても、自由民主主義のチャンピオンという強迫観念的なイデオロギーを失って、民主主義諸国との同盟から大方手を引いてしまうのか。
・アメリカの言いなりだったとは到底言えないインドという国は大事にするが、日本はどうでもいいなんて話がまかり通るのか。
など、やや疑問な点がございます。溜池通信によれば中国は別に東アジア共同体なんて関心がないそうですし、産経の報道ではイギリスは日米関係を楽観しているようでもあります。
最近の保守論壇の中国関係の論説もセンセーショナルな色彩がありますが、いかがなもんでしょうかね。

finalventfinalvent 2009/11/15 09:55 Procionoさんへ。近未来的には、オバマ政権の路線の継続の確からしさ、それと中国の習近平の巻き返しでがらりと変わる可能性があります。あと、中国は東アジア共同体には、太平洋域・シーレーンの軍事的なプレザンス以外には関心ないでしょう。むしろ西側から見えづらいのこの国の中央アジア問題でしょう。イギリスは日米関係を楽観というのはFTにも顕著ですが、鳩山政権を内側から見ている私たちにはちょっとはらはらさせられるものがありますね。

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