社説
地域医療連携/行政の枠超えた視点も必要
医師不足に起因する地域医療の崩壊が進行している。これまで指摘されていた産婦人科や小児科にとどまらず、内科系の診療科でも休止・閉鎖を余儀なくされる医療機関が東北で相次いでいる。一定水準の医療サービスを提供していくには、もはや個別の病院、地域の対応では限界がある。
診療科別や患者の症状に応じた役割分担をはじめ広域的な取り組みが求められる中、新潟を含めた東北7県の医療機関の有志による「東北7県医療連携実務者会議」が設立された。
近年、現状に危機感を抱いた現場が結束し、2次医療圏単位では同様の組織が各地で発足している。東北でも「仙塩ベイエリアネットワーク実務者協議会」(宮城県)「山形さくらんぼネットワーク」(山形県)などが活動しているが、県境を越えた組織は全国的にも珍しい。
7県実務者会議は当面、情報交換と担当者のネットワーク構築に活動の主眼を置いている。将来的には国や自治体に対する政策提言も視野に入れており、行政の枠にとらわれない連携の土台づくりにつなげたい。
東北各県は問題解決の出発点となる医師確保に努めているが、なかなか実効は上がっていない。大都市圏を除くと全国的に医師の絶対数が不足しているためだ。地域格差に加え、診療科間の差も拡大している。
県単位の医師配置システムも崩れかけている。拠点病院については長年、各県にある大学医学部・医大が医師派遣の主体を担ってきた。2004年度に新たな臨床研修制度が導入されて以降、研修先に大学病院を選ぶ研修医は減少。大学側は各病院から殺到する派遣依頼に応じきれなくなり、逆に医師を引き揚げるケースさえ目立っている。
限られた医療資源を有効活用するため、各県は医師を拠点病院に集中させる集約化を進めているが、「医療過疎」を招いている側面も否定できない。地元の病院から診療科が消え、隣接する医療圏に通わざるを得なくなった患者は少なくない。
結果として高度な医療以外でも、県境をまたいで受診する患者が出ている。例えば宮城県と岩手県。気仙沼地域と大船渡地域では、それぞれ拠点病院が診療科によって県外の患者を受け入れている。栗原地域の住民が一関地域の病院に通院することは以前から珍しくなかった。
地域医療の問題が、県レベルの発想だけで解決できないのは明らかだ。各県の地域医療計画にはそろって独自の医師確保対策や医療圏連携が盛り込まれているが、隣県との関係強化などにはあまり踏み込んでいない。7県実務者会議のような現場からの声を吸い上げ、より広域的な視点での連携を行政も模索すべき時期に来ている。
2009年11月16日月曜日
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