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きょうの社説 2009年11月16日
◎「食」の商談会 地産地消にビジネス感覚を
北國、富山第一、福井の3銀行が福井市内で共同開催した「食」の商談会は、来場者が
2千人を超える盛況ぶりで、成約も相次ぐなど食品ビジネスの大きな可能性を感じさせた。今月25日には石川県が地産地消を促進する目的で県産食材の受注懇談会を金沢市内で 初めて開催するが、北陸の自治体が率先して旗を振る地産地消にしても、そこにビジネスチャンスが広がってこそ根付いていくはずである。官民が足並みをそろえて取り組み始めた食の商談会をうまく連動させ、北陸からヒット商品を生み出す場にしていきたい。 地産地消の取り組みは、石川、富山県をはじめ全国的に広がるなかで、消費者と小売業 者への働きかけにとどまり、両者を結びつける視点は必ずしも十分ではなかった。地元の食材を地元で消費するためには、地元の市場に商品として流通させる必要がある。受注懇談会のような場は、生産者と売る側が顔の見える関係を築く点で意義があり、需給のミスマッチ解消にも役立つだろう。 石川県の受注懇談会には、県内のホテルや料理屋、スーパー、食品加工会社など約70 社、生産者側は有機農法など栽培手法にこだわる約40戸が参加する。生産量が少なく、通常は市場に出回りにくい作物なども並べられる。規格外や出荷量の乏しい作物でもアイデア次第では生かせる可能性がある。それぞれが知恵を出し合い、消費者のニーズを探る場にしてほしい。 北陸三県の3銀行が開催した「食」の商談会では、大手の外食チェーン、スーパーなど 40社をバイヤーとして招き、3行の取引先362社が商談を交わし、224件が成約となった。金融機関が個々のネットワークを生かした商談会は、県境を意識しがちな行政の支援策よりビジネスチャンスは広域的なものになろう。 食材の宝庫である北陸で、自治体の地産地消の取り組みや金融機関の商談会が有機的に つながれば、隠れた素材の掘り起こしも進み、販路の多様化が期待できる。自治体や金融機関は仲介役のみならず、提案力も磨き、地域の食の挑戦を後押ししてもらいたい。
◎核廃棄へ米朝協議 問われる米国の本気度
米政府がボズワース特別代表を平壌に派遣する方針を正式に決め、オバマ政権下で初の
米朝協議が年内に行われることになった。北朝鮮が求める直接交渉に米側が応えたかたちだが、米政府には北朝鮮の核の完全廃棄という主張を曲げることがないよう、あらためて求めておきたい。オバマ大統領は東京での演説で「北朝鮮の脅しに屈せず、完全かつ検証可能な朝鮮半島 の非核化を求める」と強調した。核軍縮の国際的機運をリードするオバマ大統領の本気度が今後の対北朝鮮交渉で試されると心得てほしい。 国連では先に過去最多の支持を得て核廃絶決議が採択された。米国が初めて決議の共同 提案国に加わった点で画期的であり、北朝鮮への国際圧力が増した。しかし、北朝鮮は決議を冷笑するかのように、使用済み核燃料棒8千本の再処理を終了したと発表した。事実なら核弾頭1、2個分のプルトニウムを抽出したことになる。 国連の核廃絶決議採択で気掛かりなのは、核保有国の中国がフランスなどとともに棄権 したことである。6カ国協議の議長国である中国のこの姿勢は、北朝鮮に対する核廃棄要求の説得力を弱め、既存の核兵器を暗黙のうちに認める誤ったメッセージにもなりはしないかと心配になる。 ブッシュ前政権も北朝鮮の核拡散防止を第一とし、既存核はうやむやにするような気配 が感じられた。政権末期は焦りもあってか北朝鮮に融和的で、結果としてテロ支援国家指定解除という果実を与えただけで、北朝鮮の核施設の無能力化を実現できず、2度目の核実験まで許してしまった。 6カ国協議米首席代表を務めた当時のヒル国務次官補は譲歩の姿勢が目立ち、北朝鮮に 取り込まれたような印象すらあった。オバマ政権は対話外交を基本としているが、訪朝するボズワース特別代表には、前轍を踏まないよう、あえて注文しておきたい。 米政府は、今回の北朝鮮との2国間協議は、6カ国協議への復帰を促す狙いであり、あ くまで6カ国協議の枠内としている。その姿勢を堅持してもらいたい。
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