【シンガポール矢野純一】気候変動問題を巡り、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の新興国側から先進国に対し、省エネルギー技術の移転や省エネ製品の貿易促進などを求める声が相次いでいる。フィリピンやべトナムなどは、気候変動の影響で台風被害が相次いでいるなどと主張。他の新興国と足並みをそろえ、温室効果ガスの主要排出国である先進国に積極的な取り組みを要求している。
中国など新興国は省エネ技術を先進国が独占することに強い警戒感を示しており、技術移転の促進を強く要求している。また、省エネや化石燃料に頼らない新エネルギーの研究・開発分野での協力も求めている。
フィリピンとベトナムでは今年9月から10月にかけて、台風による記録的な豪雨で計800人以上の死者が出た。両国は「気候変動の影響だ」として他の新興国と歩調を合わせており、災害時の域内協力などを求めている。
こうした状況を受け、APEC参加各国はこれまでに、化石燃料の使用抑制に向け具体策をとることで一致。化石燃料の使用促進につながる各国独自の補助金制度の段階的廃止でも合意した。また、省エネ製品の貿易を促進し、APEC域内で二酸化炭素排出量の目安となる原油の生産や消費、備蓄量などをデータ化するという。さらに、30年までに地域全体の温室効果ガス排出量を05年比で25%以上減少し、20年までに森林面積を2000万ヘクタール増加させるとした、07年のシドニー宣言の実現に向け、各国が協調していくことも確認した。
議長国シンガポールを中心に、15日に採択される首脳宣言にこうした意向をどう盛り込むか、各国間で最終調整が続いている。
毎日新聞 2009年11月15日 東京朝刊