【社会】廃止続出に反発や驚き 事業仕分け前半終了2009年11月15日 朝刊
政府・行政刷新会議による事業仕分けは、「廃止」を連発して、来年度予算概算要求に大なたを振るっている。公開の場で無駄な事業が削られ、留飲を下げる光景は多い。だが、前半3日間を見る限り、初めに結論ありきで、議論が尽くされていないことも多く、「あまりに強引」との反発が出ている。(社会部・有賀信彦、木村靖、中部報道部・原一文) 「私の話も聞いてください。一方的に質問されるばかりで心外です」。文部科学省所管の独立行政法人「国立女性教育会館」の神田道子理事長は説明者席から、思わず声を出した。 役員報酬の額を答えたと思えば、すぐ次の質問。事情を説明させてもらえない。研修事業の効果を疑問視する意見に反論しようと思っても「事情は分かっている」と制されてしまう。結論は予算の大幅縮減だった。 同省で対象となった「スポーツ予算」。中身は地域のスポーツ施設整備など4点と並び「国体開催事業」もあった。他の4点は議論されたが、国体については一言も触れず。ところが、結果は十把ひとからげに「予算の大幅削減」に。 国土交通省の国土・景観形成事業推進調整費をめぐっては、仕分け人が「調査に緊急性はなく、予算の趣旨に合っていないのでは」と追及。実はこの質問は、仕分け人に事前に配った資料で、財務省が指摘している内容とそっくり同じ。反論も顧みず、200億円の事業を葬り去った。 別事業の仕分け人を務めた岐阜県多治見市の西寺雅也前市長は「判断材料は同会議から渡された数ページの資料だけ。それが届いたのは1日前で、調べて熟慮する時間はなかった」と話す。 仕分け人の民主党議員でさえ「こんなに『廃止』が出るとは思わなかった。民間の仕分け人は突っ走るので、怖くなってくる。財務省に誘導されている感じだ」と漏らす。 「民間の仕分け人は何の権限で参加しているのか」と官僚たちはぼやく。傍聴した愛知県の財政課職員は「ゲームのような乱暴な判定」と表現した。 「政治主導」を掲げる民主党は国会での官僚答弁をやめようとしていたはず。だが、仕分け人の質問に答えるのは官僚ばかり。副大臣や政務官ら政治家はひとごとのように別席に座っている。 仕分け人の民主党議員は「(政治家が答えると)仕分け人の民主議員が同僚に遠慮して、追及できなくなる」と内幕を明かした。 会場で行政刷新会議が傍聴者に配った冊子には「当日の評価結果が、最終判断となるものではありません」との説明がある。だが、藤井裕久財務相は「すべて予算編成に反映させていく」と力強く語っている。 ◆「結論ありき」「勝手に言ってる」 東海の自治体も不満事業仕分けには東海地方の自治体からも不満の声が出ている。愛知県の西村真副知事は「財務省主導で、結論ありきの仕組まれた議論に映る」と指摘。「見直し」と判定された地方交付税についても「専門家でない普通の県民がわずか1時間で理解し、判断するなんてできるはずがない」と話す。 名古屋市の河村たかし市長も「知らん人が会社にずかずか入ってきて、お宅の事業はいるとか、いらんとか勝手に言ってるようなもんだ」と批判的だ。 岐阜県の武藤鉄弘総務部長は「現場でどうお金が使われているのか、もう少し実態を調べた上でやってもらいたい」と話す。「特に農政関連の事業や地方交付税がどう見直されるのかが見えない」と、県財政への影響を懸念した。
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