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格差社会の中心で友愛を叫ぶ

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「明日は新宿公園か、天国か――」
“救急車も呼んでもらえない建設現場”の悲惨

 公共工事の入札では、価格以外に環境や騒音など他項目も配慮する「総合評価方式」が取られている。そこで重視される「工事成績評定」では、従業員の労働安全衛生も大事なポイント。万が一、労災事故などが起これば評点が下がり、その後の入札に支障をきたしてしまう。

 問題は「7日で12日分働かざるをえなかった」という“モリちゃん”の日当だ。

 東京土建一般労働組合書記の溜口芳明さんによれば、平均的な建設作業員の手間請け賃金(日当)はこの1年でめっきり減っている。

 「今は平均1万3000~1万5000円というところ。悪くない額と思うかもしれないが、作業着代、高速料金、駐車料金はすべて自己負担。社会保険もあわせると、しめて6000円は吹っ飛びます。たとえ週5日働いたとしても、月額20万円弱という収入ではとても家族を養えない。せめて1日2万6000円は必要ですよ」

 ところが、実際には「1日1万円でいい、使ってくれ」と自ら値引き交渉をもちかける人が少なくない。

 「会社も経営が苦しくて余分な人手は抱えられないんだけど、そう言われるとうちの社長だって断りきれないわけです。あいつのところ、母ちゃんが入院していて、子どもの教育費もかかるんだよなあ――なんて思い出すとね」と、神奈川県で職長をしているBさん。

 彼らは仲間同士のネットワークをたよりに、かろうじて生きのびている状態という。

「スーパーゼネコンに殺される」

 建設業界は、スーパーゼネコン、1次請け、2次請け、3次請け……と続く重層下請構造で成り立っている。ちょうどロシアの民芸人形、マトリョーシュカのような構造だ。大きなマトリョーシュカ(ゼネコン)同士が価格競争を始めれば、小さく脆いマトリョーシュカ(下請け)から壊れていく。

 建設経済研究所によれば、2010年度の名目建設投資の見通しは約41.6兆円。ピーク(1992年度・約84兆円)の半分だ。これは、鳩山新政権による09年度補正予算見直し、10年度予算の概算要求での公共事業費削減を反映させた数字である。

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著者プロフィール

西川敦子
(フリーライター)

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。

この連載について

現代社会でなおも広がり続ける「格差」。この連載では、人々の生の声を拾い、悲惨で理不尽な状況に苦しむ姿などから格差の現状を伝えていく。果たして現政権が唱える「友愛」の光はここにも届くのか――

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