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アリゾナ・レポート��〜BiosphereII〜
BiosphereIIは1990年にBiosphereIで得た知識をベースに、更に発展させるために作られました。BiosphereIにおける研究は、ご存知の方も多いと思いますが、巨大な密閉空間の中で、地球の生態系を完璧に人工で作ることができるか、ということがテーマになっていた、当時世界の注目の的ともいえる研究でした。その空間の大きさは7000sqmで一番高いところが46メートル、全500トンの鉄筋構造になります。BiosphereIIでは、この巨大な密閉空間を利用し、砂漠やサバンナ、海、湿地、熱帯雨林といった５つの人工環境が作られていて、温暖化問題、自給自足への可能性などが研究されているのです。何と、この建物の中だけで3000種類の生き物が、世界中から集められています。 このBiosphereIIという限られた空間の中で、僕の研究テーマである「インフラフリー」を実行しようとすると、どんな生活になるか、それを今回はトライしようとしています。その実験を行う施設は、BiosphereIIの中にある、ヒューマンハビタットという所になります。1994年、6人のチームが、実験のためここに2年間の予定で住もうと試みましたが、解決困難な酸素不足という致命的な理由により、一年で計画は断念され、その後は短期間の実験の際、たまに使用されるようになっています。 今回は、ここに数日、泊まっています。「インフラフリー」を成功させるためには、限られた空間でどんな精神状態になるのか、どんなスペースを設計してどんなものが必要なのか。まずは、自分自身で経験することが大切です。ここでの水は全てリサイクル、ご飯もハビタットの中で、自分で育てた植物を料理していただきます。そして、このブログも、ハビタットの部屋から書き送っています。 ここでの生活は、短期間であれば、ある意味サバイバル体験として問題はありません。しかし、差し迫った事情や長期間住む事を想定すると、人間が望む生活環境をこの限られた空間で再現することは、まだまだ困難なことといわざるを得ません。しかし、僕はこう思います。科学ってそんなものでしょう？と。笑 どんなに意気込んでも、研究とは、こうして少しずつ進んでいくものなのです。たとえ、今、方法が分からなかったとしても、この経験で得たものを糧に、まずは少しだけ進んでみる。その進んだ所から、また次に進んでいく。それが綿々と連なり、結果5年、10年後に大きな研究成果として実を結んでいくものなのです。 大切なのは、一歩ずつでもいい、未来へ向かうチャレンジの気持ちを忘れないで行動することです。もし、研究者のみならず、人類みんなが、自分の未来を信じチャレンジをしていくのなら、その経験が活かされた人類の未来、地球の未来は、どんなにか素晴らしいものになることでしょう。 最後に、BiosphereIIでの実験最終日に駆けつけてくれた、ジョン・エレン氏に心からの感謝を込めて。 明日、日本へ帰国します。 |