未来の住宅??
ベルギー最後の調査となったのは、ブラッセルズ郊外にある「リビングトゥモロー」施設の見学でした。ここは、僕の知り合いでもあるピーター・ボンガーズ氏が考え出した、未来の住宅を予想する実験的な施設です。

アニメの世界から出てきたようなデザイン

「リビングトゥモロー」の目的は、未来の暮らしを創造し、役に立つ技術を開発するために、いろいろな実験を行うことです。約450m2の面積で3階建ての建築物になっています。日本を含めて約100社以上の各国の企業が、共同で未来の暮らしに必要となる、または便利だと思われる技術を考えて、この住宅で応用しお客様に紹介しながら会社の宣伝も行う、というシステムで成り立っています。DHL、松下電器、ベルギー航空、ボルボ等、各分野で世界的リーダーとなっている企業が「リビングトゥモロー」を切っ掛けにし、新たな技術の開発に関わっていることはすばらしいことです。IT関係の開発技術を使い、若い人だけではなく、老人のための居住スペースが実験されている点は、日本で言うと松下電器の「エコEUハウス」に近いものであると思いました。

未来のキッチン

中でも、僕が一番印象的だと思ったのは、キッチン。まるで、僕が監修したアニメ「宇宙エレベータ」に描かれていたような、IT技術をメインにしたキッチンシステムです。例えば、冷蔵庫にチキンがなくなったら、このキッチンシステムが近くのスーパーにネットで情報を送り注文をしてくれる。更には、家にだれもいなくても、郵便冷凍ボックスにチキンが入っていて、帰宅時に受け取りが可能なのです。もっと画期的なのはアイロンで、写真では見づらいかもしれませんが、シャツを洗ったあと、この機械に着せてスタートボタンを押せば、あっという間にキレイにアイロンがけをしてくれるスグレモノです。しかもスチームも自動。是非欲しいと思いましたが、価格は800ユーロもします。あきらめました。笑

「リビングトゥモロー」を一日かけて見学し、僕はこんなことを思いました。技術を開発し、便利な生活に向かうことをIT社会と言っていますが、住宅で使う技術が増えれば増えるほど、住宅自体のエネルギー利用量も同時に増えて行きます。そして、今、居住空間に利用しようとしているそれらの多くの技術は、住宅から出る廃棄物という点をまったく考えていないものばかりです。ビーターにこの疑問を投げかけると、彼は「それはセルカンの研究でしょう?だからここまで君はやってきたんだ。」と笑いながら、こう続けました。

「君が研究している、一般住宅の廃棄物を利用したエネルギー循環システムが成功すれば、それは未来の「リビングトゥモロー」になり得るだろう。それこそが、この「リビングトゥモロー」の成功とも言えることなんだよ。」と。研究には、やはりゴールはありません。今の「リビングトゥモロー」も決して完成されたものではなく、次の世代の研究者があらたな提案をしていくことで、時を超えて、形を変えて、そのバトンは手渡されていくものなのです。

さて、実は、僕は一日だけ東京に戻ってきていました。ですが、翌日にはもうイタリアです。ローマ市からの招待で、ローマ市及びローマ電力が仕切っている学会やローマ大学で講義をします。本当に慌ただしい毎日です。笑

では、今度はイタリアから報告します。
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