ゴミは宝だ

国際学会で論文を発表するために、スペインのマドリッド南部にあるグラナダ市にきています。スペインへは約20年振りの訪問となりますが、不思議なことに、人や町がほとんど変ってない感じがしました。昼過ぎからは、「シエスタ」の時間となり、夕方5時まで店が閉まったり、レストランもまた8時からスタートだったり。変わっていないな、と思うのは、町並みのせいより、この時間の流れ方なのかもしれません。

今回の学会で発表した内容は、「インフラフリーキッチン」。一般家庭に必要とされている水の四分の一がキッチンで利用されており、そこは家庭ゴミが出るところでもある、ということを基点に、考え方の切り替えをし、現在使われている「システム・キッチン」から「インフラーフリーキッチンシステム」への変更を考えると、水やゴミのリサイクル及び再生により、排水は50%、ゴミを85%減らすことが可能となります。また、この循環プロセスや家庭内で出るCO2を利用し、電気、熱及び飲み水まで作り出すことも考えられます。もし、日本全国すべての家庭で応用されたとしたら、大気中に放出している二酸化炭を9%減らすこともありえない話ではないでしょう。家庭から始まる新たな環境対策とも言えます。

発表後、いろいろな分野の専門者の方々が「今までないアプローチで実現されたらすごい!」と興味を持ってくれました。加えて、次の研究ステップとして三つの意見もいただきました。イタリア人の専門者から「イタリアだったらだれもゴミの再生まで考えたくないだろう。とり合えず自分の家からゴミを出してしまいたいだけだ。日本人はど思うだろうと?」。アイランド人の専門者から「それぞれの国の人の文化や料理によって、ゴミの内容も変るだろう。」分散型住宅で排水やゴミの循環や再生を考える場合、現在のEUの法律は安全や健康に関するところで結構厳しいから、社会的な視点も含めて考えると実現しやすいだろう。

以上のようなものでした。彼らから頂いた貴重な意見は、僕も次の視野に入れていたので大変共感できました。インフラフリーキッチンシステムであれば、現在、それぞれの専門分野で開発されている先端技術を統合させることで、実現しようと思えばそれは可能です。けれど、僕から見ると問題が二つります。一つはコストが高いこと。いくら環境と言っても新しいものは最終的にコストで決まっていきます。そこで僕の研究者としての責任は統合構法による、様々ななシナリオと結果を考察し、うまく循環させ、コストを出来るだけ安くする方法を考えることだと思っています。

もう一つは、イタリア人の専門者にも言われた「人はどこまで意識を持つことができるか?」でしょう。ゴミは家からすぐに出してしまいたい人には、ゴミは汚いものにしか見えなけれど、もしかしてゴミから電気や熱を住宅で再利用できる生活があれば、ゴミは宝となる未来も見えてくるかもしれません。新しい研究を人々に理解してもらうとき、この意識改革は大きなポイントとなるでしょう。


そしてグラナダ市での最後の夜です。夕飯は、母とメキシカンレストランに行きました。母は科学者でもあり、学会にもきてくれたので、何かヒントをもらえるかと思いましたが、約2時間、今週生まれる予定の初孫の話で盛り上がっていました。笑 次予定ははドイツを経由して、ナポリ大学での授業のため、イタリアに移動します。
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