アジアの東と西を結ぶ架け橋
12月5日、東京にあるトルコ大使館においてメディア向けの懇親会が開催されました。トルコ共和国大使館・文化広報参事官室代表のフェルダネ・オズカン・トムソン氏が主催したこの会は、2010年のトルコにおける日本年に向かって、トルコのことを日本の人たちにもっと知ってもらう目的で行われました。トムソン氏の発表では、2007年は日本人のトルコへの訪問者数が前年比34%増の16万8000人と上向きでしたが、それはまだ全体の1%にすぎず、できればヨーロッパからくる観光者と同じように2.5%になってほしいとお話されていました。


その日、私も発表の場をいただき、私の視点から見るオスマン帝国時代のトルコの建築についてご説明し、みなさんと一緒に東京原宿からヒッタイトやリュディアなどの古代文明、セルチュク、東ローマ帝国などの様々な文明建築を知る旅に出ました。加えて、去年のJAL機内誌の雑誌にも寄稿しました天才建築家ミマル・シナンについても詳しく説明することができて、とてもうれしく思っています。


今回は在日トルコ大使が参加できなかったため、僕が乾杯のスピーチを頼まれ僭越ながらお引き受けしました。人間は過去から学び、今を生き、未来を作る。トルコにも日本にもそれぞれに過去の歴史があり、この日トルコ大使館で出会えた今を共有した僕たちが、これからの未来を担っていきます。この場から始まる、お互いの平和、繁栄を願う気持ちこそが、アジアの東と西を結ぶ架け橋となると思います。

最近は、ブログでのご報告が遅れてしまっていますが、新潟大学で講師をしたり、先週末は浜松市と清水市にいて講演会、今週は研究のまとめ作業、と相変わらず忙しくしています。そして、来週の火曜日からはアメリカ出張で、NASAでの打ち合わせや発表会、ニューヨーク州のイタカ市にあるコーネル大学での研究調査等を行う予定です。できるだけブログで報告しますので、またご覧になってください。
アーキニアリング・デザイン展
10月17日〜28日まで建築会館(三田)でアーキニアリング・デザイン展(AND展)が開催中!!

アーキニアリング・デザインと聞いても、何のことかわからないと思われる方もおいでかと思いますが、現代の建築世界はコンピューターの進化も含めた技術により支えられています。それは言い換えれば技術の質により建築も左右される、という事を意味しています。

日本建築学会会長である斎藤公男先生(日本大学名誉教授)がその点に注目し、建築(アーキテクチャー)を支えるエンジニアリング・デザインをアーキニアリング・デザイン(AND)と設定し、未来の建築へ向けた新たな提案が生まれることを意図し企画・開催されたのが本展示会です。

その中で、「身近なAND住まいのAND」と言うテーマでインフラフリーアイディアも展示されています。インフラフリーは個々の技術が超高度化する過程で、それらを建築分野でオーケストレーション化(調律的集合化)することを提案しています。しかし、インフラフリーはあくまで住宅支援技術であり、新物件やストックでも応用可能なシステムとして考えているため、それを目に見える形で模型に落とし込むことは大変難しく、最終的にはインフラフリーの基本である「循環」というコンセプトのみを取り上げ、それを「丸」の形で表現し、この形から生まれる構造物や空間を想像して見るというアプローチを選択しました。


また、インフラフリーと同時に宇宙エレベーターも見せてほしい、と依頼がありましたが、一人当たりのスペースが狭かったため今回はインフラフリーだけの模型にし、宇宙エレベーターの画像や情報などはネットにアップし、今回の模型に設置してあるQRコードからアクセスしていただき詳細を見れるように設定しました。まさに、この展示会のコンセプトである、建築とエンジニアリングの統合により生まれる新たなITや情報工学の可能性を表現してみています。

最後に、今回協力してくれたメンバーと学生のみなさんに、この場を借りてお礼を申し上げます。僕がインフラフリーで目指している最初のステップ、人間の思考方法を垂直思考から水平思考へシフトさせるというチャレンジが、この様々な分野からのオーケストレーションにより実現できたことに喜びを感じています。機会があれば是非、見に行って下さい。
講演会のお知らせ
講演のお知らせです。

Archi-TV2008
日時:10月4日(土)14時〜16時
場所:建築会館
http://www.aij.or.jp/jpn/guide/map.htm
無料・先着順

Archi-TVは日本建築学会に属している建築学生を中心に運営されている「学生の学生による学生のための」24時間耐久ワークショップです。建築学を志している全国の学生さんたちが、新世代の建築と、建築から拡がる世界をどう切り取り、どう捉えていくか、という視点でワークショップ、ディスカッションが行われるイベントです。
僕の担当は「宇宙と建築」。僕自身がお話しする内容は、いつもと変わらないコンセプトですので、普段お越し下さっている方には新しいものはないかもしれません。僕自身も、今回は全国の若い建築学生が「建築」から何を見ているのかを知る素晴らしい学びの機会だと思っています。是非、こうした新世代の学生たちが描く世界に興味を持ってくださる多くの方々に、僕の講演にかかわらず、お越しいただければと思っています。イベントは10月4日13時〜5日15時まで、ぶっ通しで行われています。

イベントの詳細は下記の通りです。
http://architv.net/



夏休みに突入します

7月31日にSoulSwitch in Morunouchiというイベントが行われ、私も参加しました。基調講演は安藤忠雄先生です。関西弁のノリの良さが、先生の鋭い視点を柔らかくし、ユーモアあふれる素敵な講演で幕を開けました。野中ともよさんがモデレータを務められ、第一部は「2050年の日本・東京・丸の内、そして社会」をテーマとし、養老孟司さん、出井伸之さん、野城智也先生と一緒にステージへあがり、それぞれの未来観を語り合う刺激的な場となりました。第二部のテーマは「2050年のライフスタイルの提案」です。ここでのメンバーは、ほとんどが顔見知りの仲間だったこともあり、話は時間軸を超えるところにまで及び、有る意味みんなで次元を超える旅をした楽しい一日となりました。

地球経済開発プロデューサー宮本さんと今記事ワークス木戸さん

翌8月1日、はPVJapan2008の特別ステージで講演を行いました。お台場のビッグサイトで行われたこのイベントは、日本の太陽光業者の技術をゆっくり見ることができる展示となっていて、現状を学ぶいい切っ掛けとなりました。現在、この分野ではドイツと日本が世界で1番の開発国ではありますが、今回日本の取り組みの真剣さ、頑張りをとても感じると同時に、数年前と比べると太陽光から得る電気量が増えていることをふまえ、ここから新たなアイディアが生まれ人類が次に進ことも可能なのではないかと感じました。

PVJapan2008の講演会

明日から夏休みでトルコに帰ります。
今度はイスタンブールから報告します。。
インフラフリーで考えるナポリ市の未来?
今週は、ナポリ大学の客員教授としてイタリア・ナポリにきてます。イタリアのローマは今年の3月に訪れましたが、ナポリは15年振りになります。

まずはイタリアらしいエピソードをお話ししましょう。僕は空港に到着し、荷物を待っていました。が、いっこうに僕の荷物は出てきそうもありません。心配になり聞いてみると「明後日までには絶対届けます。」とのこと。僕は、明日から授業なんですがどうすれば???「明後日までには絶対届けます。」。。。ナポリ出張はそんなショッキングな幕開けとなりました。気を取り直して、僕は空港からほど近い、ホテルまでタクシーを拾いました。タクシーを降りる時、メーターは12ユーロになっているのに、運転手は25ユーロと言っています。理由を聞くと、「空港税だよ。」と。(笑) 交渉の結果、17ユーロで決着。ところが、今度はホテルの前に誰もいません。ホテルのドアの前には、携帯の番号が書いてあるだけ。その番号に電話をしてみると、休憩中なんだと怒られ、あげく30分もドアの前で待たされ、ようやくチェックインできました。日本では、本当に考えられないことでしょうが、こうした感覚はトルコにもよく似ているところがあり、僕は怒り気にもなれずかえっておかしくなってしまいました。旅の醍醐味と言えるかもしれません。

ナポリの道

日本の方がイメージするイタリアは、大抵はミラノなどがある北イタリアではないかと思います。ここはファッションや技術など、イタリアの経済の要となっている地域です。一方、ここナポリは、南イタリアに位置し、よく言えばゆったりとしていて、悪く言えば適当な感覚で街が動いています。失業者も多いし、最近は「ゴミ問題」が取りざたされて、美しい港町のイメージも薄れてきています。夕方、市内を散歩したただけでも、いろいろなところにゴミの山が放置されていて、事態の深刻さが垣間見えました。

そんなわけで、今回の授業テーマは、インフラフリーアイデアを活用し、ゴミだけでなく、既存インフラから人々の生活をどこまで独立させることができるか、また南イタリアのコミュニティーでどれだけの応用が可能か、それを考えるという内容です。最初の2日間が授業で、残り3日間がワークショップとなっているので、かなりの充実度といえるでしょう。参加者は、博士課程の学生(約20人)で、このプロジェクトの評価次第では、5クレジットをもらえることになっています。(3年間で60クレジットを集めて卒業できるシステム。)学生は、インフラフリー建築を理解し、それを自分の論文にどうやって役に立てるか、一生懸命取り組んでいました。

大学での授業

2日間のワークショップでは、技術、歴史、計画専門の学生を、インフラフリーの設計を市内と郊外で考える二つのグループに分けて行ってもらいました。両方のプロジェクト共、3日間で出来上がって、建築学部長や他の先生にも大変よい評価を受けることができ、学生も今までと違った視点でアプローチする経験ができたことを喜んでくれていました。最後の夜は、みんなでEURO2008(サッカー)イタリアVトルコ戦を観戦しにいきました。もちろん、僕もかなりのサッカー好きです。みんなで白熱して応援しました。結果は、イタリアが負けてトルコが勝ちました。僕も含めた全員で、イタリアの負けを悲しみ、トルコの勝ちを喜びました。(笑)

みんなと記念写真

その翌日、僕は、フランクフルトに帰って、そのまま実家のケルンへ向かいました。なぜかと言うと、昨日、弟の娘が生まれたからです。名前は「アズラちゃん」月の光という意味です。月は女性のシンボルであり、夜を明るく照らすやさしい光です。アズラの誕生を知らせた日本からは、おめでとうというメッセージと共にこんな文章が届きました。日本の女性作家、清少納言の「枕草子」からだそうです。

病院で会った誕生二日目の「アズラちゃん」

夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。螢の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。(夏は、夜がよい。満月の時期はなおさらだ。闇夜もなおよい。蛍が多く飛びかっているのがよい。一方、ただひとつふたつなどと、かすかに光ながら蛍が飛んでいくのも面白い。雨など降るのも趣がある。 )

日本は、ホタルの季節ですね。今、私たちは、混沌とした世界を生きています。明るい電飾の中では消されてしまうホタルの光も、自然の中では、私たちはその光に魅了され、救われます。ここに生まれたあたらしい生命であるアズラも、そんな風にやさしく輝く女性になってくれたら、とセルカンおじちゃんは願っています。笑
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