榮久庵先生

先日、日本における工業デザインの第一人者である榮久庵憲司先生とお目にかかりました。彼は80歳になっているそうですが、東京芸術大学美術学部図案科の出身で、1952年に立ち上げたGKデザイングループ会長/株式会社GKデザイン機構 代表取締役会長として、現在も現役でご活躍なさっています。

世界的なキャリアの持ち主である彼のデザインの中で、日本のみなさんが一番ご存知なのは、1961年に発表された「キッコーマンしょうゆ卓上びん」のデザインでしょう。これ以降「しょうゆ=キッコーマン」と言う大ブランドが構築され、しかも発売以来一度もデザインを変えることのないロングセラーとなり今に至っています。また、最近、街でもよく目にする東京オリンピック2016年のロゴや新幹線E3系電車(こまち)、JR東日本253系や259系電車(成田エクスプレス)、ヤマハオートバイVMAXなども、栄久庵先生がデザインしたものです。

今回はお忙しい榮久庵先生のお時間をいただき、これからのデザインに関していろいろなお話を聞かせていただいたのですが、その中で私が非常に印象的だなと感じたものは、彼が言った「必要」と言う言葉、視点でした。よいデザイン、そして生き残っていくデザインとは、人にとって本当に必要だからこそ出来上がるものだ、と教えていただいたのです。

確かに、現在のデザイン社会を見渡してみると、デザイン性ばかり先走り人間が本当に必要としていないものもたくさんあるように思います。例えば、「お箸」のデザインもここ数年でしょうか、非常に多彩になってきていますが、「お箸」自体、日本人の生活にとって絶対的な必要性があってデザインされたからこそ、いままでもそしてこれからも決してなくなることのないデザイン作品として受け継がれているのだ、という視点を持って見ると、大変偉大なものであることが理解できます。目前の流行にとらわれず、「必要」という視点から何百年も先の未来を見つめてみる、大きなヒントをいただきました。

明日からトルコ出張となります。以前ブログでも書きましたが、「トルコ2023年」の学会です。また詳細ごは報告します。では、行ってきます。
インフラフリー・アンケートのお願い
未来の建築に求められているものはなんだろう?それは建築物だけの完成度の問題ではないことは当然であり、技術で便利になるという時代も、自然と調和する有機的見方も、すでに限界に来ている感がある。しかし、私たちがもっと人を、自然を、宇宙を理解することにより、この時点では想像もはかり知ることもできない、未来の建築物が生まれることは大いに期待できるであろう。はるか未来を見据え、人類の飛躍に役立つ建築物をインフラフリーという視点を通じてより深く探求するため、このブログを見ている皆さんにも是非ご協力をいただきたく、この度アンケート・リンクを下記に記載しました。英語のアンケートですが、回答はマークシート方式になっています。

ご協力、どうぞよろしくお願いします。

Click for questionnaire
5月の近況
久しぶりの更新になってしまいました。先週は、僕と学生合計8人のチームで、和歌山県串本町大島区へ調査のため出向きました。

串本町の大島区

町と区の協力を得て、4日間をかけて個々の住宅の設備、環境などを調査しました。高齢化と過疎化が加速度的に増しているこの街では、インタビューに答えてくれる方々もご高齢のおじいちゃん、おばあちゃんたちです。調査チームには、僕だけでなく台湾人、イタリア人の学生などもいて、観光客も来ず昼のお弁当を買うお店すらない大島では異例の光景だったのではないかと思います。笑 今回の調査結果をさらに今後の串本のプランに反映させ、具体的な実現案の提案へと落とし込んでいく予定です。

また、昨日はメディアアートセンターICC主催のシンポジウム「ミッションG」へゲスト出演しました。

ICC主催のシンポジウム

「ミッションG」は、科学とアートが融合を遂げた先に拓ける新たな世界、未来を考えるというコンセプトで、僕は科学者という立場で参加をさせていただきました。確かに、人類がこのままの状態では未来に夢はない、僕もそう感じています。けれど未来を決めるのは環境ではなく、経験、体験です。アートや科学、人とのコミュニケーションなどを通じ、僕たちがあたらしい経験をしていくことが何より大切であり、そういう場を作りだそうとする人たちが集まったこのようなイベントに参加できたことを光栄に思っています。

そして、僕自身もそんなビジョンを自分なりに形にし提供したいと思い、下記のような活動もスタートさせる予定になっています。興味のある方は、是非ご参加ください。
http://serkancollege.jp/
ただいま
先週末、カナダから帰国しました。予定していたモントリオール大学でのスタジオワーク以外で、みなさんに報告したい面白いことがひとつあります。それは当市にあるカナダ宇宙庁へ呼んでもらったことです。

カナダ宇宙庁長と開発部長と見学

カナダ宇宙庁と言うと、この世界では国際宇宙ステーションに搭載されているロボットシステム「カナダアーム2」の開発で有名なところです。その前身である「カナダアーム1」は、スペースシャトルに搭載されている優秀なロボットアームで、その成功の結果、「カナダアーム2」は2001年4月にNASAから打ち上げられ、国際宇宙ステーションの組立と整備において、今も重要な役割を果たしています。機材や補給品を動かしたり、宇宙飛行士の船外活動を支援したり、ステーションに取り付けられている器具やその他のペイロードを補修する、という任務をすべてこなすこのロボットアームがなければ、今の宇宙における研究開発活動はもっともっと大変な苦労が伴うものとなっていたはずです。

そして、現在この宇宙庁にある研究所では、「カナダアーム2」をさらに進化させるための研究が進められていました。今回は、その様子をとても近くで見せてもらえることとなりました。こんな機会はなかなかないもので、とても貴重な体験となりました。

中でも、僕個人が一番興味を持っているのはロボットが動くアルゴリズムです。「カナダアーム2」は、ステーションの背骨部分を移動し様々な「ドッキング」と呼ばれる作業を行っていますが、驚いたことにその「ドッキング」作業の際に、次の司令やエネルギー、情報の読み取りも同時に行っているのです。これはとても最先端なアプローチであり、僕が取り組んでいる研究にあるスマートシステムへ応用すれば、大きく研究が発展する可能性にもつながる重要なヒントとなるものでした。

「EXPO1967]のアメリカ館

そして、モントリオールでもう一つ思い出すのは、1967年に開催されたモントリオール万国博覧会ではないでしょうか。今ではほとんどのパビリオンはなくなっていましたが、二つだけ現在もそこに残されていました。一つはアメリカ出身の建築家、はたまた思想家、デザイナー、構造家と言われ、様々な視点を持ったバックミンスター・フラー氏が設計したアメリカ館です。建築業界で知らない人はいないほど有名なこの建物は「ジオデシック・ドーム」と言われており、現在は「バイオスフェア」と呼ばれる博物館になっています。もう一つは「アビタ67」集合住宅です。モントリオール万国博覧会時代には、住宅計画が主要なテーマの一つであったため、その一環として建てられたのだそうです。

スタジオメンバーと記念写真

モントリオール大学における、約2週間に及ぶデザインスタジオも無事に最終日を迎えました。三つのグループが考えた串本町・通夜島におけるインフラフリーシステムの発表を聞いていると、それぞれから出たアイデアは、すべて独自性と豊かな創造力にあふれ優劣つけがたいものばかりだったため、僕はみんなに「A+]という評価をあげてしまいました。笑

インフラフリーという研究はまさに国境を超えていくことができる研究になり得ると、学生たちが強く感じてくれたことは、僕にはとてもうれしいことでした。そして、遠く離れた外国の学生たちが見た日本、描いた串本・通夜島へのデザインワークを、いつか地元の方々にも聞いてもらいたいと思っています。
ケベック市への旅&最新インフォメーション

先週末は大学が休みだったので、モントリオール大学の教授ロージェル先生とケベック州の首都であるケベックシティに行ってきました。先生によるとモントリオールが東京だとしたら、ケベックシティは京都にあたるところで、ケベック州の歴史を理解するためには必ず行くべき場所であるそうです。先生の熱い思いに誘われて、ケベックシティまで3時間かけた電車の旅をすることになりました。特急電車で3時間というのも、まさに東京から京都くらいですね。

ところで、カナダと言うと英語のイメージがあるかと思いますが、ケベック州はほとんどの人がフランス語をメインにして暮らしています。僕の目から見ると、カナダから独立した意識を持っていると感じるほど、自分達のルーツを大切にしている印象でした。町はフランスの建築物、料理はフランス料理、子供のころ住んでいたスイスのローザンヌの頃のことが懐かしく思い出されました。今は、フランス語を忘れかけているので、もうちょっとフランス語ができたらよかったな、と思いました。笑

上から見るケベックシティ

<最新インフォメーション>
今日は、お知らせを二つさせていただきます。

1:「宇宙エレベーター」が第6版の重版となりました!!
毎月多くの新刊が出版されていく中、こうして息の長い作品とさせていただけたことは、今まで応援して下さった皆さんのおかげです。ありがとうございます。そして、これからもよろしくお願い致します。
  
2:「Serkan College」を開催することになりました!!
今までは一回ごとの講演会ばかりでしたが、今年は定期的に学ぶ機会と仲間を作りたいと思い企画し、財団法人日本産業デザイン振興会様のご理解、東京ミッドタウン様のご協力を賜り、実施できることとなりました。 2009年5月29日から隔月で計6回、東京ミッドタウンにて行われます。80名限定の密度の高い通年講義がコンセプトであるため、受講に関しては書面による選抜方式となる予定です。詳細は順次、Serkan College HP にてアップされます。

また、それに伴いまして4月10日には「インテリジェント・デザイン」をテーマにした無料講演会およびSerkan College の説明会を以下の通り行う予定です。こちらの無料講演会にご参加下さり、その場でSerkan Collegeへのお申し込みをされた方には、受講を優先的にお受けするという大特典付きとなります!!(人数が多い場合、限定となります。)是非振るってご参加くださいませ。

【開催日時】 2009年4月10日(金) 18:00〜20:00
【会場】 東京ミッドタウン・タワー4F カンファレンスRoom1〜4
【定員】 先着200名様限定  【参加費】 無料  
詳細、応募フォームは下記Serkan College HPにございます。
http://www.serkancollege.jp/

「Serkan College」という新しいチャレンジをみなさんに応援していただければうれしいです。
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