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インフラフリーで考えるナポリ市の未来?
今週は、ナポリ大学の客員教授としてイタリア・ナポリにきてます。イタリアのローマは今年の3月に訪れましたが、ナポリは15年振りになります。
まずはイタリアらしいエピソードをお話ししましょう。僕は空港に到着し、荷物を待っていました。が、いっこうに僕の荷物は出てきそうもありません。心配になり聞いてみると「明後日までには絶対届けます。」とのこと。僕は、明日から授業なんですがどうすれば???「明後日までには絶対届けます。」。。。ナポリ出張はそんなショッキングな幕開けとなりました。気を取り直して、僕は空港からほど近い、ホテルまでタクシーを拾いました。タクシーを降りる時、メーターは12ユーロになっているのに、運転手は25ユーロと言っています。理由を聞くと、「空港税だよ。」と。(笑) 交渉の結果、17ユーロで決着。ところが、今度はホテルの前に誰もいません。ホテルのドアの前には、携帯の番号が書いてあるだけ。その番号に電話をしてみると、休憩中なんだと怒られ、あげく30分もドアの前で待たされ、ようやくチェックインできました。日本では、本当に考えられないことでしょうが、こうした感覚はトルコにもよく似ているところがあり、僕は怒り気にもなれずかえっておかしくなってしまいました。旅の醍醐味と言えるかもしれません。 日本の方がイメージするイタリアは、大抵はミラノなどがある北イタリアではないかと思います。ここはファッションや技術など、イタリアの経済の要となっている地域です。一方、ここナポリは、南イタリアに位置し、よく言えばゆったりとしていて、悪く言えば適当な感覚で街が動いています。失業者も多いし、最近は「ゴミ問題」が取りざたされて、美しい港町のイメージも薄れてきています。夕方、市内を散歩したただけでも、いろいろなところにゴミの山が放置されていて、事態の深刻さが垣間見えました。 そんなわけで、今回の授業テーマは、インフラフリーアイデアを活用し、ゴミだけでなく、既存インフラから人々の生活をどこまで独立させることができるか、また南イタリアのコミュニティーでどれだけの応用が可能か、それを考えるという内容です。最初の2日間が授業で、残り3日間がワークショップとなっているので、かなりの充実度といえるでしょう。参加者は、博士課程の学生(約20人)で、このプロジェクトの評価次第では、5クレジットをもらえることになっています。(3年間で60クレジットを集めて卒業できるシステム。)学生は、インフラフリー建築を理解し、それを自分の論文にどうやって役に立てるか、一生懸命取り組んでいました。 2日間のワークショップでは、技術、歴史、計画専門の学生を、インフラフリーの設計を市内と郊外で考える二つのグループに分けて行ってもらいました。両方のプロジェクト共、3日間で出来上がって、建築学部長や他の先生にも大変よい評価を受けることができ、学生も今までと違った視点でアプローチする経験ができたことを喜んでくれていました。最後の夜は、みんなでEURO2008(サッカー)イタリアVトルコ戦を観戦しにいきました。もちろん、僕もかなりのサッカー好きです。みんなで白熱して応援しました。結果は、イタリアが負けてトルコが勝ちました。僕も含めた全員で、イタリアの負けを悲しみ、トルコの勝ちを喜びました。(笑) その翌日、僕は、フランクフルトに帰って、そのまま実家のケルンへ向かいました。なぜかと言うと、昨日、弟の娘が生まれたからです。名前は「アズラちゃん」月の光という意味です。月は女性のシンボルであり、夜を明るく照らすやさしい光です。アズラの誕生を知らせた日本からは、おめでとうというメッセージと共にこんな文章が届きました。日本の女性作家、清少納言の「枕草子」からだそうです。 夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。螢の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。(夏は、夜がよい。満月の時期はなおさらだ。闇夜もなおよい。蛍が多く飛びかっているのがよい。一方、ただひとつふたつなどと、かすかに光ながら蛍が飛んでいくのも面白い。雨など降るのも趣がある。 ) 日本は、ホタルの季節ですね。今、私たちは、混沌とした世界を生きています。明るい電飾の中では消されてしまうホタルの光も、自然の中では、私たちはその光に魅了され、救われます。ここに生まれたあたらしい生命であるアズラも、そんな風にやさしく輝く女性になってくれたら、とセルカンおじちゃんは願っています。笑 |
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ゴミは宝だ
国際学会で論文を発表するために、スペインのマドリッド南部にあるグラナダ市にきています。スペインへは約20年振りの訪問となりますが、不思議なことに、人や町がほとんど変ってない感じがしました。昼過ぎからは、「シエスタ」の時間となり、夕方5時まで店が閉まったり、レストランもまた8時からスタートだったり。変わっていないな、と思うのは、町並みのせいより、この時間の流れ方なのかもしれません。 今回の学会で発表した内容は、「インフラフリーキッチン」。一般家庭に必要とされている水の四分の一がキッチンで利用されており、そこは家庭ゴミが出るところでもある、ということを基点に、考え方の切り替えをし、現在使われている「システム・キッチン」から「インフラーフリーキッチンシステム」への変更を考えると、水やゴミのリサイクル及び再生により、排水は50%、ゴミを85%減らすことが可能となります。また、この循環プロセスや家庭内で出るCO2を利用し、電気、熱及び飲み水まで作り出すことも考えられます。もし、日本全国すべての家庭で応用されたとしたら、大気中に放出している二酸化炭を9%減らすこともありえない話ではないでしょう。家庭から始まる新たな環境対策とも言えます。 発表後、いろいろな分野の専門者の方々が「今までないアプローチで実現されたらすごい!」と興味を持ってくれました。加えて、次の研究ステップとして三つの意見もいただきました。イタリア人の専門者から「イタリアだったらだれもゴミの再生まで考えたくないだろう。とり合えず自分の家からゴミを出してしまいたいだけだ。日本人はど思うだろうと?」。アイランド人の専門者から「それぞれの国の人の文化や料理によって、ゴミの内容も変るだろう。」分散型住宅で排水やゴミの循環や再生を考える場合、現在のEUの法律は安全や健康に関するところで結構厳しいから、社会的な視点も含めて考えると実現しやすいだろう。 以上のようなものでした。彼らから頂いた貴重な意見は、僕も次の視野に入れていたので大変共感できました。インフラフリーキッチンシステムであれば、現在、それぞれの専門分野で開発されている先端技術を統合させることで、実現しようと思えばそれは可能です。けれど、僕から見ると問題が二つります。一つはコストが高いこと。いくら環境と言っても新しいものは最終的にコストで決まっていきます。そこで僕の研究者としての責任は統合構法による、様々ななシナリオと結果を考察し、うまく循環させ、コストを出来るだけ安くする方法を考えることだと思っています。 もう一つは、イタリア人の専門者にも言われた「人はどこまで意識を持つことができるか?」でしょう。ゴミは家からすぐに出してしまいたい人には、ゴミは汚いものにしか見えなけれど、もしかしてゴミから電気や熱を住宅で再利用できる生活があれば、ゴミは宝となる未来も見えてくるかもしれません。新しい研究を人々に理解してもらうとき、この意識改革は大きなポイントとなるでしょう。 そしてグラナダ市での最後の夜です。夕飯は、母とメキシカンレストランに行きました。母は科学者でもあり、学会にもきてくれたので、何かヒントをもらえるかと思いましたが、約2時間、今週生まれる予定の初孫の話で盛り上がっていました。笑 次予定ははドイツを経由して、ナポリ大学での授業のため、イタリアに移動します。 |
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和歌山大学での講義
大変忙しい毎日で、すっかり更新が遅れてしまい、すみません!!
先日、和歌山大学で講演を行いました。新設された観光学部の学生を中心とし、たくさんの方が聴講に訪れてくれました。 近年、景色が美しいということだけでは観光の目的とならないことから、せっかくの自然の環境を破壊し、莫大な資金を投入し、観光事業は展開されてきました。今、その施設には、観光客も訪れることがなくなり、メンテナンスも行き届かず、まるで時を止めてしまったかのように、その場所に取り残されています。 これからの観光が目指すものとは何か。それは集客だけを目的とした環境事業の提案だけでなく、地球の未来というものを見据えた上での、教育、人材育成、観光のあり方であることが重要となってくるでしょう。それには、お互いの共通項を見つけ合うことではなく、お互いの違いを知り、理解し、尊敬し合うことが基本となります。 お互いの国に、今にいたる過去という歴史があり、そして、今から始まる未来があります。これからの未来は、今を生きる人々の手に託されている。そんな緊張感持ちながら、学び、経験する機会を持って欲しいと思っています。 そして、多くの自然という遺産に恵まれた和歌山から、いままでにない観光のありかたが提案されることを楽しみにしています。僕自身も、それに何かしらの貢献ができればとても光栄なことです。 その後、学会のためスペインへ。今回はなぜか!母親と一緒です。「セルカンはやせたから、たくさんチーズとサラミを持ってきたよー。」と笑う母。絶句する僕。。。お母さん、僕は言いましたよね!?朝食付きでヒルトンに泊まるんだと!!僕は、多分太って帰国すると思います。母はどこまでも逞しいですね。笑 |