さつきのブログ「科学と認識」

一言メッセージ :国会議員の定数削減に反対という「きまぐれな日々」のkojitakenさんに賛同します

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社会のこと

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貧困>選挙>こんな人物には投票しない(その2)

 前回の記事で書いたように、私の最大の関心事は「貧困」の問題である。だから私は、「国保証取上げ」を巡って激論を続けながら、その「取上げ」という事態そのものの問題が、東本氏の視界からすっぽりと抜け落ちていることに、大きな違和感を抱いていた。

 東本氏のスタンスは、「浅野県政のみを非難するのはどう見てもアンフェアです。」という文言にも表れている。では、浅野県政も他の都道府県も大いに批判すべきだと主張しているのかというと、そうではない。東本論文を読めば一目瞭然、他も似たような状況なのだから、国保証取り上げを批判するのはお門違いと主張しているのである。

 このことにかかわってmsq氏は、「結局のところ、志位氏の指摘について「言い訳」ができるとするなら、資格証明の発行は、支払能力があるのに滞納しているさほど多数いない人々に対して効果があるというだけのことではないでしょうか。しかしこれは国民健康保険の本来の趣旨からは本末転倒といえ、基本的人権の尊重に反します。」([AML 12837])と書いているのだが、事の本質はこちらにある。

 支払い能力があるのに滞納している者なら、国保証を取上げるぞと脅しをかければ、ちゃんと払ってくれるだろうとのアイデアはあっても良い。それが取上げられれば、本当に困ることになるから、支払い能力があれば払ってくれるだろう。そこでほんとうに取り上げて見たところ、渋々でも滞納額を支払う者が続出したということにはならなかった。国保証を取り上げられた人たちは、実際に保険料を払えなかったのだ。類似のこととして、高校の授業料滞納の問題が、ことに大阪の橋下府政下で話題になった。授業料を払わないなら退学にするぞと脅しをかけたら、退学者が続出した。本当に授業料が払えないからだ。

 先月見た「NHKスペシャル 子供の貧困」でも、大阪の授業料滞納の問題がとりあげられた。授業料を払うためにアルバイトをしている生徒の給料日に、そのバイト先に給料を差し押さえに行く教師。これが今の日本の現実である。

 東本論文では、もともと小泉政権下の法改正によって、保険料滞納者への国保証変換義務規定が盛り込まれたことが「取り上げ」の原因なのだから、それを浅野氏のせいにすることはできないと主張している。この論点についての東本氏の唯一の言い訳である。その主張は、msq氏の[AML 12763]に紹介された「さるのつぶやき」というブログで全面的に批判されている。

「「浅野批判の誤謬」という誤謬(補充・追加)」
http://saru.txt-nifty.com/blog/2007/03/post_d7d8.html
「『浅野批判の誤謬』という誤謬」がこんなところにもあった、驚き、あきれて、怒りが湧いてきた」
http://saru.txt-nifty.com/blog/2007/03/post_f03a.html

 前者のエントリでは以下のように主張されている。

--------(引用開始)--------
 国保証のとりあげは、実際にそのとりあげによって医者にかかれず死者まで出ているという人の命に関わる重大問題です。
 これが制度化されたのは1986年。そして悪名高い小泉純一郎氏が厚相だった1997年にさらに改悪され、それまでとりあげは市町村の裁量としていたのを、「返還させるものとする」という義務規定にして、2000年から実施することとしました。さらに2001年からこの保険料未納者への制裁を強化したのです。
 国の法律はこのように改悪されましたが、それにどう対応するかは市町村の考え方次第で変えられます。現にそうしているところもあります。また都道府県もこのような市町村を助成することができます。現に子ども医療費などについては東京都は市区町村を助成しています。
 従って、国がこういう法律を定めても都道府県はやれることがあるのです。それをやらず国の政策のままにしてきたのが浅野氏なのです。浅野氏が宮城県知事になったのは1993年ですが、その前任の自民党の知事はとりあげはしないと言明していました。前任の自民党の知事であろうが浅野氏であろうが、国が制度を変えたからといって、国保証のとりあげをやってはならなかったのです。
 どの市町村であろうが都道府県であろうが、国の福祉切り捨ての政策に唯々諾々と従うこと自体が、地方自治体としては絶対にやってはならないことです。また、国が大型開発による浪費政策を進めるからといって、それを黙って受け入れているようでは地方自治体として失格です。これらは国が進めるから仕方がないで済ませてはいけません。済ませてしまったら、それは地方自治体の役割の放棄なのです。
--------(引用おわり)--------

 次に後者から引用する

--------(引用開始)--------
 これらの国保証とりあげに関わる非難・難癖は、元々とんちんかんなものですが、さらに僕に言わせれば、国保証とりあげが一体どういう問題なのか何も分かってないから出てくるものです。無知も甚だしい!ここまで己の無知・不勉強を棚に上げて難癖を付けるのは犯罪的!と言ってもいい。
 そもそも国保証とりあげは絶対にやってはならない!ことなのです。これが分かってない!こんなことも分かってない者に福祉を語る資格は断じてない!無責任です。
 保険料滞納者を減らすためだとして導入された国保証とりあげ制度ですが、滞納者は何ら減っていません。むしろ、国保証とりあげによって受診が遅れて重症化した人、死亡した人が出ているのです。国保証とりあげは、乳幼児医療費助成対象の子どもや小中学生、気管支ぜんそくで公費医療の助成を受けて通院している小学生にも及んでいるのです。
--------(引用おわり)--------

 私は、「そもそも国保証とりあげは絶対にやってはならない!ことなのです。」という主張に共感する。東本論文の中身も、「国保証取り上げ」の実態も、良く調べもせずに流布してきた人たちは、いったい何に共感したのだろう。

 「県議会 国保証取り上げ 共産党」でググってみると約25,000件がヒットするが、そのタイトルを見ただけでも、共産党が、ほとんど全ての地方自治体で、国保証取り上げの問題をかなり以前から追及し続けていたことがわかる。共産党が、浅野県政だけに的を絞って批判していた訳でないこともまた、政治音痴の私でもわかることだ。

 先頃、日本の2007年度の相対的貧困率が15.7%と発表されて話題になった。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4654.html

 それは、あくまで「相対的」な数値なのだから、先進国の日本ではたいしたことはないという意見もあるだろう。しかし、大都市の地下街にいけば、どこでも死んだように横たわるホームレスが目につく。日本での2005年の餓死者は82人と報告されている。私たち小市民は、それらを見て見ぬ振りをしたり、忘れ去ったりすることで、日々の平穏を確保しているのである。誰でも、自分の人生を自分の思うとおりに楽しく過ごす権利はあるのだから、見て見ぬふりをすることで咎められるいわれはない。しかし、そこに開き直り、なにもかも視界から切り捨てて恥じない者を、私は嫌悪する。

 「国保証取り上げ」をめぐって議論するのなら、その実態にこそ目を向けるべきだ。共産党が嫌いなら、独自に対応する方策をこそ議論すべきだ。そうしたことを議論するつもりがないのなら、最初から「国保証取り上げ」の問題を話題に出すべきでない。

 最後に・・・
 ネット界隈の一部ではちょっとした有名人であったとほほ氏が、先頃亡くなった。AMLでも、その「暴れん坊」ぶりは印象深かかった。彼は、誰に対しても理不尽とも思える直球で議論をふっかけまわした。得意の捨て台詞は、ネット上に住所・電話番号を晒して、「文句があるなら電話しろ」だった。困ったり、反発したりした人も多かった。msq氏ともやりあった。彼の理不尽さを責めない者はいなかったろう。その彼にやりこめられた人達が集まって、追悼サイトを立ち上げた。
http://www21.atwiki.jp/tohohopeacewalk/

 次の追悼文は、私の印象と良く一致する。
http://www21.atwiki.jp/tohohopeacewalk/pages/54.html

 彼は、「歴史修正主義」と闘った。「9.11陰謀論」とも闘った。そして何より「貧困」を生み出す思想と闘った。「貧困」と正面から向き合えば、とんがりもするだろう。私は、彼のようには正面から向き合うことができない。だからこうして、のほほんとしていられる。そして、そのことを恥じる。

 このエントリをとほほ氏にささげ、追悼文としたい。

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> 「貧困」と正面から向き合えば、とんがりもするだろう。私は、彼のようには正面から向き合うことができない。だからこうして、のほほんとしていられる。そして、そのことを恥じる。

さつきさん、ありがとう。
ここにも、とほほさんの激しい言論は、どうしてここまでというほどの弱者への愛と、それを虐げる者への怒りに満ちていた事に気が付いてくれていた人がいた事を知り、嬉しくて涙が出ましたよ。

せめてもう一度、一緒に飲みたかったな。 削除

2009/11/12(木) 午後 9:00 [ Looper ]

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メモリアルサイトの追悼文を読むと、とほほさんに罵倒された多くの人が、結局は同じ想いであったことがわかりますね。貴重な存在でした。 削除

2009/11/12(木) 午後 11:02 [ さつき ]

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