【社説】日本人の歴史忘却を懸念する天皇の言葉を聞いて

 天皇陛下はこのほど、即位20年に際し行われた記者会見で、「日本の将来に何かご心配をお持ちでしょうか」と問われたのに対し、「わたしがむしろ心配なのは、次第に過去の歴史が忘れられていくのではないかということです」と答えられた。天皇陛下は満州事変、第二次世界大戦など昭和の歴史に触れながら、「昭和の六十有余年は私どもにさまざまな教訓を与えてくれます。過去の歴史的事実を十分に知って未来に備えることが大切と思います」と述べられた。天皇陛下は即位記念式典でも、現在の日本が多くの人の犠牲の上に築かれた点を挙げ、「これを戦後生まれの人々に正しく伝えていくことが、これからの国の歩みにとり、大切なことではないかと考えます」と述べられた。

 しかし、われわれは天皇陛下のお言葉を聞きながら、第二次世界大戦を前後する時期に日本が行ったことを日本人が忘れつつある事実を想起せざるを得ない。日本人が自国の祖先たちの犠牲を忘れているならば、それよりもさらに残酷な被害を受けた韓国人、中国人などほかのアジア人の犠牲については、言うまでもないからだ。

 天皇陛下のお言葉通り、日本の人口の4分の3は戦後生まれだ。日本は過去に自らが犯した侵略行為、犯罪行為に対し、まともな教育を行ったことがない。そんな状況の下、戦後世代が自分たちの歴史を正しく知ることができるはずもない。むしろ歴史的事実を覆す日本の極端分子による歴史教科書が徐々に影響力を増している。日本の政治家はともすると被害国の国民を傷つける妄言を慎まなかった。しかし、その妄言が問題となり落選した政治家はいない。日本の国民が妄言を妄言ととられておらず、それがどれほど深刻な問題なのかという認識すらないことを示している。このままでは、日本国民の歴史認識がアジアの真の和解と協力にとって、大きな障害となる危険性もある。

 現在、日本の民主党政権の実力者が過去とは異なる姿勢を示している。「歴史を直視する勇気を持っている」として、「村山談話を言葉だけでなく、実際に継承する」と訴えた。こうした変化は日本の政権交代に伴う変化でもあるが、根本的には韓国と中国の国力が高まったからであることを忘れてはならない。

 先ごろフランスのパリで開かれた第一次世界大戦休戦記念日の式典に、初めてドイツの首相が出席した。ドイツの立場からすると、この席は歴史的恥辱の現場だ。その場でドイツの首相がフランスの大統領と手を携え、「ドイツ万歳」に先立ち、「フランス万歳」を叫んだ。ドイツも日本のように、人口の大半は戦後世代だ。日本の指導層はドイツの戦後世代がその姿を見て何を感じたのかを考えつつ、日本の現実について改めて考えてみるべきだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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