2009年9月15日
「気が強い方は私。練習試合で負けても悔しい」(潮田、右)、「そんな姿を見ると、怒らせちゃったかなと思います」(池田、中)=池田良撮影
新コンビ「イケシオ」です。高校の先輩後輩は、息のあったプレーで全日本社会人選手権で初優勝。プライベートも充実の秋です。
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(握手しながら)
武内:ツメをきれいにされているんですね。
潮田:いえ、ゴツゴツしてます。
武内:いえいえ。コンビ結成から5カ月。お互いの性格は。
潮田:最初は探り探りでやってたけど、今はバドミントンに対して本当に勝ちたい、という思いが伝わってきます。ビデオを見るなど勉強しているな、と感じます。私にとっては、やさしいお兄ちゃんという感じ。気を遣ってくれる。
池田:勝負に対してすごく貪欲(どんよく)で負けず嫌い。練習に対する意識も違って、改めて刺激を受けました。一緒に組むことになってからは、学ぶことが多かった。僕にとっては大きな存在。そばに来てくれて、バドミントンも充実した。明るくて、オンとオフの切り替えがうまい。練習のときは集中するし、練習を離れるとチームのみんなとワイワイやっている。可愛いらしい一面もあります。
武内:2人はどう呼び合っているんですか。
潮田:「信太郎さん」です。
池田:僕は前から「玲子ちゃん」と。
武内:コートの中では敬語?
潮田:いや、「ごめん」とか言っちゃいます。
武内:普段は。
潮田:基本的には敬語ですが、冗談言うときとかは、くだけてます。
武内:コートの中で敬語を忘れちゃうときはあります?
潮田:この間、試合中に信太郎さんのサーブが良かったので、ファーストサーブを代わってほしくて、「信太郎さん、ファーストでお願いします」って言おうと思ったら、「信太郎、ファーストで行って」って呼び捨てにしちゃいました。ハハハ。
●混合に強い思い
武内:コンビの柱は。
潮田:信太郎さんです。練習中も気付いたことは言ってくれて、アドバイスしてくれるし、すごく頼りにしてます。男子の方が圧倒的に球(シャトル)をさわる回数が多いし、すごく動いている。それを見ながら「頑張って!」っていう感じだったので、11日の全日本社会人選手権で優勝できたのも信太郎さんのお陰。すごく引っ張ってもらってます。
池田:そうでありたいという気持ちがあります。球(シャトル)にさわる回数が多いことによってミスも多くなる。そこで我慢しなければならないのが自分。そういうプレーを支えられる自分になりたい。
武内:潮田さんにとって「オグシオ」という存在は。
潮田:自分の足跡で、すごく大事なもの。でも、自分の中では良い意味で過去のものになってます。今は「オグシオ」を越えて、「オグシオ」で残せなかった成績を残したい。
武内:小椋久美子選手の存在は。
潮田:自分がやってこられたのは彼女のお陰。お互いにそれぞれの頑張りが刺激になれば、と思ってます。
武内:池田さんは坂本修一選手とのコンビを解消しました。
池田:長く男子ダブルスでやってきたので難しい部分がありました。お互いや、チーム関係者と話して混合一本でやっていこうということになりました。決めたときは寂しさもありましたが、決めたからには頑張るしかない。成績を出すことが大切。混合にかける思いはすごく強い。
武内:潮田さんは拠点を東京に移しました。
潮田:環境の変化はすごく感じます。自分でやらないといけないことが増えた分、自分で何でも選択することの大事さを感じます。良い意味で自己管理できてます。
武内:自炊は。
潮田:練習が終わって、極力するようにしています。和食が好きなので煮物とか。最近は肉じゃがとか、鳥料理にはまっているので鳥を煮込むなどしています。
武内:キャスターなどとの両立は大変?
潮田:練習に支障がない範囲でやらせてもらってますし、すごく刺激になってます。もっと頑張らないとというモチベーションアップにもつながっている。色んな挑戦ができて幸せです。
武内:池田さんは、ご結婚されました。
池田:混合をスタートするときに悩んだ部分もあって、支えてくれたのが妻。妻のためにも成績を出したい。何か変わったときの最初が大事だと思う。色々なことが変わってきて、結婚してから、その中でも自分見失わないようにしなきゃいけない、という気持ちがより強くなりました。
武内:どういうときに存在を感じますか。
池田:一緒にいるときも食事面とかサポートしてくれる。遠征に行って離れているときに、僕が活躍することで彼女も仕事を頑張れる、という電話とかメールをもらったときに、離れているけど存在を感じます。
武内:優勝したときに2人で抱き合ってましたが、奥さんに何か言われませんでした?
池田:いや、何も。コンビを組むときに、そういうこともあるだろうって彼女も言ってたし、それ以上に妻は大きなものを感じてくれている。だから何回、彼女(潮田)と抱き合っても何とも思わないでしょう。その分、お返しします。ハハハ。
武内:潮田さんは、奥さんに気を遣いません?
潮田:実際、お会いして「できた人だなあ」と思いました。優勝したときも、すごく喜んでくれて、めちゃめちゃうれしかった。信太郎さんと一緒に奥さんを喜ばすために頑張らないと、と思いました。
武内:理想の夫婦像ですね。
潮田:うらやましいですよね。
●練習で迷い克服
武内:混合ダブルスと男女のダブルスとは全然違うものですか。
池田:運動量も求められる役割も変わってくる。本当に新しいことをやっているという感じがします。男が後ろにいて、女子が前にいるという形をつくれないと、いつまでたっても相手から攻撃されてディフェンス一辺倒になる。そうなると守りきれなくなることが多い。専門的な動きは、頭では分かっているけど、体に覚えさせることが難しい。少しずつ自然に試合に出るようにしないと。
潮田:配球も動き方も違う。まだ女子ダブルスのくせが出てしまうので、もっと勉強して混合のプレーを覚えないと。女子は全部をカバーしてもらえないので、色んなところをカバーしなくちゃいけないんですけど、逆にそれが信太郎さんの迷いになるなどしちゃいます。
武内:池田さんは運動量が多く大変ですね。
池田:同じ練習でも多く動くことを意識してます。ただ動いて球を打つんじゃなくて、球の質も問われる。体を動かしても球の質が悪かったら相手からカウンターを取られて自分たちがもっと動かなきゃいけなくなる。運動量と球の質を日頃から意識してます。
武内:全日本社会人選手権は、どういう気持ちで臨んでました?
潮田:タイトルを取りたいという思いで臨んだんですが、どこまでいけるか試したかった。挑戦すると思ってやりました。まずは勝ち負けよりも内容を重視しました。
武内:注目先行で、プレッシャーは。
池田:1試合目からプレッシャーとの戦い。プレッシャーを、どうプレッシャーじゃなくすかが大変でした。
武内:ポイントになった場面は。
潮田:準々決勝があまり良い試合じゃなかった。そのときに変に構えてしまっていた。そのときに自分の中で「負けて元々でやろう」と思えて、吹っ切れました。
池田:準決勝の第2ゲームで彼女のサーブから連続得点できた。そのときに今までモヤモヤしてたのがスッキリした。自分たちが落ち着いてプレーすれば点が入るし、我慢してプレーすれば相手も嫌がると思えた。決勝の出足が悪かったけど、追いついたときに「戦えるな」と思いました。
武内:印象的だった言葉は。
潮田:最終ゲームが始まる前に、信太郎さんに「あと1ゲームだから全部を出し切る」って言ったら「よし、最後頑張ろう!」って言ってくれて。
池田:そのときに、彼女が行ける、っていう顔になったので、改めて良い試合ができるなという気持ちになった。あと、言葉というより、競ってるときに笑顔で話しかけてくれる。僕が「ここは一本、集中だ」と思っているときに「ナイス、ショット」って笑顔で。そんなに余裕があるのかなって思ったくらい。笑顔が出ないときは追い込まれているときなので、すごく良い状態だったようです。
潮田:競ってくると楽しくなってくるんです。観客が息をのんで見ていて、ラリーが終わると「ワーッ」ってなる。そういうのが楽しいんです。
武内:22日からヨネックスオープンです。
潮田:いつも変に力が入って、あまり良い成績を残したことがない。声援を力に、初戦突破したいと思ってます。
池田:世界と戦える力はあると思うけど、なかなかその力が出せない試合が続いている。まだ世界と差はあるな、と思ってます。お互い、まだプレーに迷いがある。体が自然に動けるようになったときは、良いプレーができると思う。とにかく練習して、頭で考えてることを自然にできれば。自分としては、もっと上からの球を強くして、配球を考えないとと考えてます。
潮田:私は前衛での働きを強化しないと。たまに飾りになっているときがあるので。ハハハ。信太郎さんがいっぱい動いて、私はよけているだけ、みたいな。もっと球に触れられれば、信太郎さんも楽になると思う。あとは男性の球をしっかり返せるレシーブ力を鍛えたい。
武内:ロンドン五輪も近づいてます。
潮田:今はやっとスタートラインに立った感じ。一歩一歩、成績を残して、その先にロンドンが見えればな、と思います。
池田:北京五輪は悔しいことだらけで、なかなかロンドンを目指せなかった。でもやっと「行きたい」って誰にでも言えるようになった。その目標があるからこそ頑張れる。もっと国内で成績を残して海外で戦える力をつけないと届かない。一歩一歩自分の足元を見つめながら、近づいていければなと思います。
武内:混合で目標とするところが100として、現状は。
潮田:まだ30ぐらい。社会人選手権で優勝できたけど、技術的には、改めて本当に弱いなと思った。ますます強くなりたいとか、うまくなりたいと思った。
池田:僕も30ぐらいですね。形になるときはなるけど、今は個々の能力でやっているだけ。決勝も相手の方が混合らしい動きをしていて、展開も楽に進めていた。僕たちは個々の能力で離されないように頑張ってついて行っていただけ。まだまだ課題だらけ。でもお互いの能力はあると信じている。30が100になるスピードは頑張れば早くなると思うので、頑張っていきたい。
二人の息はぴったり
〈後記〉建物フェチで、先日も中国人アーチストの展覧会に行ったという池田選手と、今夏はサーフィンにも挑戦したという潮田選手。コート外の趣味は違っても、質問に答える2人の息はぴったりでした。また、コートでの険しさとは対照的に、奥様についてのろける池田選手の笑顔と、人一倍の芯の強さを感じる潮田選手の目も印象的でした。でも、潮田選手の言葉が最も熱を帯びたのは、「阪神タイガース」の話題になったときだったかも知れません(笑)。(テレビ朝日アナウンサー)
■インタビューは、23日の「報道ステーション」でも放送予定です。
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いけだ・しんたろう 28歳。筑波大から日本ユニシス。175センチ、68キロ。
しおた・れいこ 25歳。福岡・九州国際大付高から三洋電機。166センチ、57キロ。