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社説ウオッチング

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社説ウオッチング:衆院予算委質疑 試された自民の質問力

 ◇毎日、加藤紘氏の提起を評価 読売・日経、「普天間」首相答弁を批判

 政治家同士の丁々発止のやり取りと評価するか、それともかみ合わぬ議論が延々続いたとみるか。鳩山政権発足後、初の衆院予算委員会質疑がこの週は行われた。

 質疑の中身もさることながら、民主党が新人議員を委員会室に傍聴のため大量動員したことが目についた。鳩山由紀夫首相や閣僚らが答弁するたびに議員らが拍手する委員会室はさながら、サッカーでいう「ホーム」状態だ。だが、特に2日目の4日の論戦では「アウェー」自民党に結構、攻め込まれたようだ。

 政権交代後初の予算委は、野党に転落した自民党の「質問力」が試される場面だった。初日の2日の質疑では自民党の大島理森幹事長、町村信孝元官房長官、加藤紘一元幹事長とベテラントリオが質問に立っただけに、主要紙の多くは3日の社説で取り上げた。

 毎日は加藤氏の質問に注目し「異彩を放った加藤質問」との見出しで評価した。答弁した首相ら政府側でなく、質問した側が社説の見出しとなることは珍しいかもしれない。

 加藤氏が突いたのは鳩山首相が理念として掲げる「友愛」の概念だった。「友愛」を「鳩山家のフィロソフィー(哲学)であり、外国(からの)物であいまい」と指摘する加藤氏に問われる形で閣僚たちは「博愛精神」(小沢鋭仁環境相)、「かけ橋」(岡田克也外相)、「思いやり」(亀井静香金融・郵政担当相)などそれぞれの「友愛観」を披露した。一方で、加藤氏は首相が所信表明でふれた「新しい公共」という考え方については賛意を示した。

 この質疑を毎日は「鳩山政権への追及が甘いとの指摘は当然出るだろうが、政治家同士が理念を語り合うという試みは評価したい」と論じた。厳しい追及を期待していた人には拍子抜けだったかもしれないが、やはり加藤氏が質疑で提起した「マニフェストはどこまで守らなければならないか」「既得権益擁護とは何か」などの論点は今後、重みを増していくテーマだ。建設的論戦を試みた点を評価したのである。

 一方、鳩山政権の外交・安保政策が日米同盟に与える影響への不安を強調したのが読売、日経だ。

 政府内で閣僚の意見が分かれる沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題について町村氏らから再三「いつまでに結論を出すのか」と問われても、首相は時期を示さなかった。また、自身の見解表明も差し控えた。

 読売は「この問題の扱いを誤れば、日米同盟を弱体化させる。鳩山内閣には、そんな危機感が欠如しているのではないか」と厳しく批判し、名護市沿岸部に移設する現行計画を支持する決断を首相に求めた。

 日経も「首相は具体策への言及を避ける場面が目立った。政権の基本政策があいまいなままでは不安がぬぐえない」と指摘、首相が米軍再編問題や対テロ活動の支援策を収拾するよう促した。

 ◇産経、首相献金に力点

 これとは別に、重要課題をめぐる自民党の追及が不十分だったとの論調も目立った。産経は首相の政治資金収支報告書の虚偽記載問題に力点を置き、予算委での首相の釈明を「首をかしげざるを得ない」と批判、責任を明らかにするよう求めた。同時に、自民党の質問にも「切り込みは十分だったとはいえない」と注文をつけた。

 毎日も「加藤質問」は評価したが、普天間問題をめぐる質疑の堂々めぐりや首相の献金問題に自民党が時間をあまり割かなかった点は「『与党ぼけしている』と疑われても仕方がない」と指摘した。 東京も政府答弁の具体性の不足にふれ「自民党側に、政府を厳しく追及する『野党力』が不足していたことが大きな要因だ」と奮起を促した。

 そのせいもあってか、4日は自民党側の質問も厳しく、緊張感が増した。特に、石破茂政調会長と首相のテロ対策などをめぐる1対1の応酬は聞き応えがあった。また、安全保障、「政治とカネ」をめぐる首相の過去の言動と現在の政治姿勢に矛盾がないかをただす場面が増え、首相は集団的自衛権に関する過去の発言の「撤回」を表明するなど、防戦に追われた印象を与えた。

 ◇国会改革、今後の論点に

 政権交代という節目を迎え、国会のあるべき姿を議論する動きも政界には起きている。民主党の小沢一郎幹事長が官僚答弁禁止など国会法改正に意欲を示し、党内には政府・与党は一元化されたのだから国会での与党質問は不要との意見もある。小沢氏の要請に応える形で学識経験者らで作る「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の小委員会が議論のたたき台となる提言を公表した。

 朝日は大胆な国会改革に向け議論を進めるよう求めた大型社説を2日に掲載し、通常国会を事実上、通年化することで与野党が日程の駆け引きを重視する「日程国会」と決別することなどを促した。

 毎日は7日社説で「通年国会」の実現や、政府・与党の一体化が進んでも与党が国会審議に加わることは当然と結論づけた臨調提言の方向性を評価した。また、臨調が、国会議員が官僚に行政情報をただすための「国政調査・行政監視会」の設置を提案したことに「官僚答弁の一律禁止には私たちも反対」との立場を示し、「今後検討すべき一案」と論じた。

 国会改革をめぐる議論は今後、大きなテーマとなる。ただ、政治家個人が官僚の情報に頼らず質問、答弁できる力量を備えなければ、魅力ある国会論戦とはなるまい。議場でそろって拍手をするなど集団行動が目立つ民主党の新人議員たちにも、いずれその力は備わるだろうか。【論説委員・人羅格】

毎日新聞 2009年11月8日 東京朝刊

 

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