新型インフルエンザに感染した妊婦の出産に、医療関係者はどう対処すればいいのか‐。北九州市医師会と同市は12日夜、小倉北区の市総合保健福祉センターで、今年10月に市内の産婦人科病院であった事例の症例検討会を開いた。同市や周辺自治体の産科医、助産師120人が参加。二次感染の防止や妊婦の心のケアなど、さまざまな課題について話し合った。
症例が検討された妊婦は出産当日に発熱。簡易検査でインフルエンザA型陰性だったが、翌日、再検査すると陽性反応が出た。病院では母子を隔離し、母親にタミフルを投与。母親はほかの妊婦からも隔離し、病院スタッフは手の消毒やマスクの着用を徹底。母子ともに無事に退院した。
こうした経験から、院長は「妊婦への簡易検査は、複数回する必要がある」と指摘。担当した助産師は「母親は『迷惑を掛けて申し訳ない』と言っていた。罪悪感を持たせないよう、心のケアも大切になる」と述べた。
続いて専門の医師3人が全国的な傾向や感染防止対策を説明。それによると、国内では感染した妊婦が重症化する例は今のところなく、新生児が二次感染し重症化する例も少ないという。
九州厚生年金病院の高橋保彦小児科部長は「妊婦に高熱、せきなどの症状がある場合、感染が確認されていなくても新型インフルと見なしてタミフルの投与を」と助言。北九州地域感染制御チーム理事の市立八幡病院・伊藤重彦副院長は「感染した妊婦にマスクをさせウイルスを拡散させないことが一番の対策になる」と指摘した。
最後に伊藤副院長が「新型インフルにはしっかり備えるが、不必要に怖がらないことが大事」と総括し、冷静に対応していくことを確認した。
=2009/11/14付 西日本新聞朝刊=