きょうの社説 2009年11月14日

◎日米首脳会談 同盟のきしみを消す一歩
 初来日したオバマ米大統領と鳩山由紀夫首相との首脳会談で、日米両政府が政権交代で きしみの生じている同盟関係を、首脳同士の信頼に基づいて立て直す一歩を新たに踏み出したと受けとめたい。温暖化対策や「核なき世界」の実現という、日米両国が先頭に立って取り組むべきテーマでの協力を確約し、国際社会にアピールした意義も大きい。

 しかし、眼前の最重要課題である米軍普天間飛行場移設問題には深入りせず、とりあえ ず信頼関係を取り繕った印象もある。処理を誤ると日米安保体制を根底から揺るがしかねない問題であり、賢明な解決を望みたい。

 鳩山外交の柱である「対等な日米関係」について、首相の口から具体性のある説明がな されなかった点でも物足りなさを覚える。米政府内には「対等な関係」という主張を歓迎する向きがあった。日本が相互防衛という同盟本来の姿をめざし、国際社会安定のためにより積極的に役割を果たす意思表示と受け取れるからである。

 しかし、米側の思いと違って、鳩山政権は海上自衛隊の給油活動中止を決め、現行の在 日米軍再編計画にも反対している。米側にとって、対等関係という曖昧で真意を測りかねる言葉が不信の種になっている面もあるのである。鳩山首相は、抽象的な理念だけで本当に信頼のある同盟関係を築くことが難しいことを再認識してほしい。

 米国追従を戒めアジアに傾く鳩山首相に米側が疑念を抱き、中国に比重を置くオバマ大 統領のアジア歴訪に、日本側が「日本軽視」と不安を抱く状況になりがちだが、首脳会談で一致した同盟関係の深化、発展とは、そのような疑心暗鬼に陥らない安定した関係の構築といってもよい。

 国同士の外交の成否は突き詰めれば、生身の人間同士の関係による。どの国の首脳会談 でも、まず個人的信頼関係に力を入れるのはそのためにほかならない。発足間もない日米両政権の人脈はまだ希薄である。普天間飛行場問題解決のため、新たに設けられる閣僚級の協議の場を、日米の政治家同士の信頼醸成とパイプづくりの機会ともしてもらいたい。

◎「朝の読書」 石川で9割実施目指そう
 図書館を利用している小学生は、ほぼ10日に1冊本を読んでいる。文部科学省の全国 調査で示された1人当たり年平均35・9冊の貸し出し数は過去最多であり、意外に多いと言えるのではないか。「活字離れ」が心配されるなかで、心強い数字だ。

 文科省は「図書館が増え、足を運びやすくなった」と分析しているが、それ以上に千葉 県の高校から始まった「朝の読書」運動の影響が大きい。毎朝、授業が始まる前の10分間程度、先生と児童生徒がそれぞれ自分の好きな本を読む活動は、全国的に大きな広がりを見せ、「朝の読書推進協議会」の調べで、石川県は小学校の87%、中学校の85%、高校の52%で実施されている。

 ただ、総実施率は81%と全国平均を11ポイント上回ってはいるものの、福井県の9 1%、富山県の83%に及ばない。子どものころから本に親しむ習慣を身に付けさせるためにもまず9割実施を目指したい。

 朝の読書のよいところは、子どもたちが興味のある本を自発的に選べるところにある。 わずか10分程度だから集中が途切れることもなく、自然と活字に親しむ習慣が付く。「遅刻が減った」「授業にスムーズに入れるようになった」「生活のリズムが変わり、落ち着きが出てきた」など、予想を超える効果もあるという。

 図書館が身近な存在になれば、貸し出し冊数は自然に伸びる。文科省の調査では、前回 の04年度より2・9冊増えた。この間、朝の読書運動実施校が全国1万6千校から2万4千校に増えた影響が大きいのではないか。

 注目点は、図書館を利用する子どもたちと、図書館に利用登録をしていない子どもの差 が大きい点である。今回調査では行われなかったが、文科省は前回、図書館の利用登録をしていない子どもを含めた貸し出し冊数の平均を18・8冊と発表している。「本を読む子」と「読まない子」の二極分化が進んでいるのはゆゆしき問題だ。

 朝の読書は、図書館に足を運ぶ動機付けにもなる。できることなら毎日、すべての小中 高で取り組んでほしい活動である。