関門海峡で海上自衛隊護衛艦「くらま」と韓国籍コンテナ船「カリナ・スター」が衝突した事故で、くらまがコンテナ船と前の貨物船が急接近したのを視認できる距離に入っても減速せず、衝突の数十秒前まで時速16-17ノット(29-31キロ)で航行を続けていたことが10日、第7管区海上保安本部(北九州市)の関係者への取材で分かった。7管はくらまが危険を回避する努力を怠った可能性もあるとみて、慎重に捜査を進めているもようだ。
7管が船舶自動識別装置(AIS)やレーダーでとらえたデータによると、くらまと貨物船は衝突の約3分前、双眼鏡などで視認できる約2キロの距離を航行。その約1分後には、後ろのコンテナ船もくらまから視認できる位置に入ったとみられる。だが、くらまは減速せず、衝突約1分前に、衝突現場まで約800メートルに接近。進路にコンテナ船が侵入してきて逆進をかけたが間に合わず、コンテナ船と衝突した。
現場は関門航路で最も狭い海域。防衛省によると、くらまは乗組員総員を持ち場に配置し、デッキ上に見張りもいた。関門海峡に詳しい水先人は「2隻の急接近を把握していたのなら、減速してやりすごすべきだった」と指摘する。
7管は、コンテナ船がほとんど減速せず、左に急旋回してくらまと衝突したとの見方を強めているが、くらまの操船にも落ち度がなかったか、業務上過失往来危険容疑で慎重に調べている。
=2009/11/10付 西日本新聞夕刊=